第2話 見たこと無い友達の表情
「お! 待っててくれた!」
もしかしたらそのまま逃げてしまうのではないかと思っていたが、そこにいてくれた。
「私だって食い逃げしたい訳ではないのさ」
妙に落ち着いていた。
先ほどはよく顔が見えなかったがよく見たら整っており可愛い。
目は透き通った水色で、髪は胸ほどの長さまである黒髪でお人形さんのような顔立ちだった。
「あなたのお名前は?」
「私の名前はアイサだ」
「アイサちゃんね! 何歳なの?」
「そんなものは数えては無い。今まで遭遇してきた人間達には16歳位くらいに見えるとは言われてたな」
妙な言い回しだった。
私達と同じくらいの少女が自分の年齢を分からないことがあるのだろうか。
そして、人間達という表現にも違和感があった。
「それで——」
「もう良くない?」
私はそのまま少女に質問しようとしたが、それを妨げるように香恋がそう言った。
「え?」
「この子なんか変だしもうほっとこうよ」
突然どうしたのだろう。
普段香恋はそんなこと言う子では無いのに。
香恋からは少し、怒りや嫉妬のような感情を感じられた。
「私はもうお暇した方が良いかしら? 君にこれを渡しておくよ。価値が分かってそうだ」
少女はそう言うと私の手に神功皇后札を渡し、その場を立ち去った。
「待ってよ!」
私は呼び止めようとしたが、聞こえてないかのように真っ直ぐと去っていった。
「何その紙切れ? 気味悪くない?」
香恋がそう言ってきた。
「これは神功皇后札っていう明治時代のお金だよ」
「私達と同じ年齢くらいの子がそんなの持ってる訳なくない?」
確かに香恋の言うことも一理あった。
しかし、なぜそんな否定的なのかは分からなかった。
「急にどうしたの? いつもの香恋じゃないよ?」
「え?」
「なんか怖いよ」
香恋は私の言葉に目を見開き驚いているようで、その後涙を流していた。
「どうしたの!」
「ごめん莉亜羅。私おかしいよね」
「様子が変だとは思ってたけど、攻めてる訳じゃないよ!」
「ごめん莉亜羅」
「それじゃ分からないよ? 何か理由あれば教えて?」
「ごめん……」
香恋は謝ることしかしてくれず、涙の理由を教えてくれなかった。
「今日はもう解散しよっか」
「うん」
私と香恋は駅まで歩いて行き、そこで別れた。
学校からは同じ電車であったが、帰りは別々の路線であった。
今の状況ではお互いにとってそれが救いになっただろう。
「香恋どうしたんだろう。心配だな」
電車の中で1人そう呟いた。
香恋に出会ってから半年も経っていないが、今まであんな表情や言動を見たことがなかったため心配になった。
私が変なことしてないかとか、気づいてあげられてなかったことがあるのかなとか、色々と頭を悩ませた。
電車から窓の外を見ると空模様が怪しくなってきた。
スマホを開くと雷と大雨の予報が出ていた。
「はあまじか、ついてないな」
朝も昼も晴れていたため傘など持ってきていない。
普段は折り畳み傘を持ち歩いているが夏休みの時、別のカバンに入れたままにしていたため入っていなかった。
最寄駅に到着した。
天気予報通り空は荒れていた。
「うわ〜これは大変だ」
仕方なく駅に入っていたコンビニでビニール傘を買った。
「あ、そうだ」
香恋もこの大雨で家までしっかり帰れてるか心配なため、メッセージを送っておいた。
「この雨だと靴かなり濡れそうだな」
私はそう思い、不快感を覚悟しながら家へ向かった。
歩きながら朝のことを思い出した。
確かここら辺に——
「特に何もないか」
朝感じた建物の隙間の違和感の正体を探ろうと思ったが、ただの狭い道だった。
もうすぐ家に着くというところで、右側にある公園に目がいった。
こんな大雨の中、傘も刺さず、地面に座り込んでいる人がいた。
「あれ!」
私は気づいた。
雨で視界が妨げられていたが、あれはアイサだと分かった。
「アイサ〜! そんなところでどうしたの! 風邪ひくよ!」
「あれ、君は先程の。こんなところで何をしているのだ?」
「それはこっちのセリフだよ! 風邪ひいちゃうよ!」
「風邪か。ひいた事ないから、ひいてみたいものだ」
この子は何を言っているのだろうか。
「とにかく! こっちきて!」
傘だけだと濡れてしまうため、近くの屋根があるところまで連れて行った。
「アイサは家この近くなの?」
「ここらに住まわせてもらっていたんだが、気味悪がられ、追い出されてしまったのだ」
「家族にってこと?」
なんとなく違和感があったがとりあえずで聞いた。
「家族というものではないだろうな。赤の他人さ」
赤の他人ならだろうじゃなく、完全に家族ではないじゃん。
どういう事なのだろうか。
不思議な少女だとは思っていたが、家族がいないのだろうか、それとも家出少女なのだろうか。
「行く場所ないってこと?」
「私は別にこの公園に住んでも良いのだが?」
「ここいたら風邪引くよ! というかここも誰かの敷地でしょ!」
「そうか、日本の至る所が誰かのものなのか」
「え? そりゃあそうじゃない?」
少女が何を言っているのか意味不明であった。
だからと言ってそのままにはできない。
「とりあえず、私の家に来て! ここから近いから!」
「良いのか?」
「とりあえずだからね!」
そう言い2人でビニール傘に入りながら私の家へ向かった。
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