第1話 無銭飲食疑惑の少女
やばい、遅刻する。
「お母さん! 行ってきま〜す!」
朝食のおにぎりを1つ手に持ち家を飛び出した。
私は東京に住む高校2年生の見上莉亜羅。
夏休み明け最初の学校を遅刻しかけているところだ。
電車に遅れないよう走って向かった。
この電車に乗れなければ遅刻確定だ。
普段は余裕を持って家を出ているが、夏休みの影響で気が抜けていた。
「ん?」
建物の隙間から一瞬何か見えたような気がした。
なんだったのだろう。まあいいか。
「良かった、間に合った〜」
何とか電車に乗り込むことができた。
学校に着いた。
遅刻は回避したようだ。
それよりさっきのは何だったんだろうか。
一瞬過ぎてよく分からなかった。野良猫やカラスだろうか。
「莉亜羅おはよ!」
考え事をしていると、2年生になってから友達になったクラスメイトの日比野香恋が来た。
「おはよ! 香恋!」
「何か悩み事? 険しい顔してたけど」
「嘘! 私そんな変な顔してた?!」
「変じゃないよ! 今日も可愛いよ」
「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ!」
香恋はいつも私に可愛いと言ってくれる。
私からしたら香恋の方が可愛いと思うが、自分から可愛いと言うのは恥ずかしい。
さっきのが何だったのか気になるが、まあいい、忘れよう。
授業が一通り終わり、昼休みの時間になり、学食に来た。
「やっぱ長い休みの後の授業は疲れが溜まるね……」
「分かる。1年中休みになってほしい!」
香恋は私に比べて疲れていないように感じた。
きっと夏休みの間も規則正しい生活を送っていたのだろう。
「今日さ、放課後甘いものでも食べに行こうよ!」
香恋がそう言ってくれた。
疲れたように見える私を元気づけようと誘ってくれたのだろう。
「甘いもの! 行きたい!」
「どんなの好き?」
「ふわっふわのパンケーキ! フルーツがたくさん乗ってるやつ!」
「いいね! じゃあ放課後渋谷行こ!」
「決定だね!」
放課後パンケーキを食べにいく約束を結んだ。
急に元気が出てきた。
「そろそろ昼休み終わるし教室戻ろ」
私の言葉に香恋も同意し、放課後についての話をしながら教室へ向かった。
帰りのホームルームが終わった。
午後の授業はあっという間のように感じた。
楽しみができたおかげで頑張れたのだ。
「やっぱ初日は疲れるよね! じゃあ行こっか!」
香恋はそう言い、私の手を引っ張った。
「うん!」
パンケーキも渋谷も久しぶりのことで楽しみだった。
渋谷のパンケーキ屋さんにやっと入店できた。
平日だと言うのに行列ができていて、入店まで30分ほどかかった。
香恋と話していたため退屈さは無かった。
「やっと入れたね!」
「やっぱり人気店は行列できるんだね!」
「ね! 莉亜羅はどれ頼む?」
「私はフレッシュフルーツのパンケーキにしようかな。たくさんフルーツ入ってるみたいだし!」
私はとにかく色んなフルーツが入ったパンケーキが食べたかった。
「美味しそうだね! 私はマンゴーのパンケーキにしようかな!」
「それも美味しそうだね! せっかくだしシェアして食べたいね!」
「そうしよう!」
私の案に香恋も賛成してくれた。
2人はパンケーキと紅茶を注文した。
「お待たせいたしました! フレッシュフルーツのパンケーキとマンゴーのパンケーキです! ごゆっくりお過ごしください!」
「ありがとうございます!」
2人はお礼を言った。
「わあ、美味しそうだね! せっかくだし写真撮ろ!」
香恋がそう言ってきた。
「うん! 写真撮って後でSNSに投稿しよ!」
「いいね!」
久しぶりにJKらしい放課後を過ごせているように感じた。
「じゃあ食べよっか!」
「うん!」
香恋の言葉に私は頷いた。
「いただきます!」
2人はそう言い食べ始めた。
「ん〜っ! 莉亜羅これ凄く美味しい! 人生で一番かも!」
「こっちもめっちゃ美味しい! 生クリームとフルーツの相性最強すぎる!」
シェア用の皿をもらい、お互いに分け合った。
「莉亜羅の方もフルーツ沢山入ってて美味しいね! キウイ美味しい!」
「ね! キウイいいよね! すっきりとした甘さ!」
私のパンケーキにはキウイ、いちご、ブルーベリー、バナナ、オレンジが入っていた。
「じゃあ、香恋のも食べるね!」
「どうぞ!」
フォークとナイフで切り分け、マンゴー、生クリーム、バニラアイスを同時に口に運んだ。
「これやばいね! こんな美味しいマンゴー初めて食べたかも! アイスとの相性も良すぎ!」
「ね! ここフルーツにこだわってるのかもね!」
2人はお互い分け合いながら、紅茶と共に楽しんだ。
「美味しかったね!」
「うん! 莉亜羅と来れて良かった!」
「そう言ってもらえて嬉しいよ!」
レジに向かうと何かトラブルが発生しているようだった。
「お客様困ります。本物のお金を支払ってもらわないと……」
そこでは、私と同じか、それより下に見える女の子がいた。
格好は令和の東京の女子では珍しいような、平成初期、もしくは昭和くらいのレトロな服装であった。
白と黒のセットアップスーツのようなものと、リボンが付いた黒いハット帽のようなものを被っていた。
どうやら本物ではないお金を払っているらしい。
「この前喫茶店行った時は使えたんだけどな、困った……」
少女が小さくそう言ったのが聞こえた。
「どうしたんですか!」
私は気になり入り込んだ。
「みたことないようなお金出されて……」
店員がそう言うので少女が手に持っていた紙幣を見た。
それは神功皇后札であった。前に学校の授業でお金の歴史について調べたことがあったためすぐに分かった。
これは日本で最初の肖像入り紙幣だ。
1円券だが、現在は数万以上で取引されると書いてあった記憶がある。
「一旦私が払っておきます!」
この場で少女に色々と質問したり、店員さんに説明をすると長くなると思いそう言った。
「いいんですか? 申し訳ありません」
店員さんは唇をキツく閉じ頭を下げた。
「大丈夫ですよ!」
「莉亜羅って優しいね」
香恋がそう言ってきた。
「まあね!」
私達の会計も済ませ店を出た。
そこには少女が、私達を待つように立っていた。
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