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恋して動く君の時間  作者: 茉莉レイ


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第11話 感情の共鳴

 家に着いた。


「今日も暑かったね」


「昔に比べて夏の気温が上がっているからな」


「確かに! 地球温暖化ってやつだよね!」


「いつ頃からだったかな、石炭や石油を使い始めた頃」


「18世紀半ばだね! 産業革命以降に化石燃料をたくさん使ったことによって、二酸化炭素排出量が増えたんだよね!」


 私は自信満々に答えた。


「そうそう産業革命ってやつだな。莉亜羅随分と詳しいんだな」


「私歴史とか好きでさ、授業とか書籍とかで色々知識集めてるんだ!」


「ほう、その歳の少女にも関わらず偉いな」


「まるで自分は歳上みたいに!」


「すまない気にするな」


 実はアイサの方が歳上でしたみたいなパターンもあるのだろうか。

 本人は年齢を知らないみたいだし聞いても仕方ないのだろう。


「莉亜羅、長い地球の歴史の中で、人間以外が国家を作ったことがあると思うか?」


 クイズのようなものが始まった。

 人間以外が国家を作った話など聞いたことがない。


「ないない! ありえないよ!」


「もし国家を作った生物がいたが、絶滅してしまったとしたら?」


 確かに地球の歴史は約46億年と長い。

 その間に大量の生物が絶滅してきただろう。

 けど、文明を気付いたなら何かしら手がかりは残るだろう。


「今の科学の力で地球の年齢とか、その当時の生物の情報とかを調べられたりしてるんだから、国家を形成する生物がいたら分かるくない?」


「その通りだ。人間のみが国家を作ったことがある」


 それなら一体何が言いたかったのか。


「人間こそが退屈を無くしてくれる生物だと私は思うんだ」


 アイサは一体何を言いたいんだ。

 

「なあ、莉亜羅。私が普通の人間では無かったら嫌いになるか?」


 普通の人間って何を指して、どのようなことを言っているの。


「普通って?」


「私は地球と共に生まれた存在、いわば神のようなものだ」


「え?」


 恐怖とか、驚愕とかといったものは莉亜羅の頭には無かった。

 ただ、アイサが冗談を言った程度にしか思っていなかった。


「あはは、アイサ面白いね! 冗談言えるようになるとは!」


「冗談ではないんだがな……」

 

 アイサは莉亜羅に聞こえないほどの声でそう言った。



 あの後は普通の会話のみで、30分ほど経過した。


「香恋も泊まることお父さんとかに教えておかないと」


 私はスマホを開き、メッセージを送った。

 その後すぐにインターホンが鳴った。


「お! 香恋来たかな! ちょっとそこで待ってて!」


「ああ」


 私は玄関へ向かった。

 

「はいはい、お待たせ〜!」


 私はドアを開きながらそう言った。


「え?」


 そこには刃物を持った人間が3人立っていた。


「誰か——」


 私は叫ぼうと思ったが口を塞がれてしまった。

 

 何これ、やだ、怖い……

 誰か、助けて、アイサ……


 私は心の中でそう思った。


「大丈夫か?」


 アイサの声が聞こえた。

 私の口を押さえていた手も外れ、そこにいた刃物を持った人間も消えていた。


「え? 幻覚?」


「違う。あいつらは確かにここにいて、私を狙っていた」


「私じゃなくて、アイサを? どういうこと?」


「さっき話しただろ? 私は普通の人間ではないと」


「そんなこと言われてもよく分からないよ」


 私は何が何だか分からず、先ほどの恐怖から泣いてしまった。


「私も、私も怖かった……」


「え?」


「莉亜羅がいなくなっちゃうんじゃ無いかと、思って……」


 そう言いアイサは泣き出した。

 今まで感情を表に出さなかったアイサが。

 突然のことで私の方は涙が止まってしまった。

 刃物を突きつけられたことがどうでも良くなる程の驚きだった。


「アイサ? 泣いてるの?」


「分からないんだ。突然胸の内側が締め付けられるようになって、目から液体が……」


 どうしてだろう。

 私の感情が伝わったのだろうか。

 

 そんなことを考えていると、再びインターホンが鳴った。

 今度は先程のようなミスをしないようにドアスコープで外を見た。


「今度こそ香恋だ!」


「アイサ涙拭いて上で待ってて!」


「分かった」


 私はそう言い、自分の目も拭いてドアを開けた。


「お待たせ〜!」


「こっちこそ! お邪魔しま〜す!」


 香恋を家の中に入れドアを閉めた。


「これ詰まらない物ですがどうぞ」


 香恋はそう言い、手土産をくれた。

 有名な苺大福だった。


「あ、これお父さん好きなやつ!」


「本当! それは良かった!」

 

 香恋はこのように本当に礼儀正しく、素直な子なんだ。

 きっとアイサとは仲良くなれる。


「それより何かあった?」


「え?」


 泣いたのがバレたのだろうか。


「なんか嬉しそうに見えたからさ」


「本当? 香恋が来てくれたから嬉しくなったのかも!」


「何それ! 嬉しい!」


 そうは言ったものの、本当は自分では分からなかった。

 


 香恋と共に私の部屋へ向かった。


「香恋だったよ〜」


「そうか、それなら良かったな」


 いつも通りのアイサに戻っていた。


「アイサちゃん甘い物好き?」


「甘い物は好きだ。よく食べる」


「じゃあ私が買ってきたお土産食べていいよ」


 香恋はアイサと仲良くなろうとしてくれてるんだと思い嬉しかった。

 

 私は袋から箱を出し開けてあげた。


「苺が入っている大福か、初めて食べる物だな」


 そう言いながら口に運んでいた。


「ん〜! 美味しい〜! 口の中でとろける〜!」


「え?!」


 私は驚いてしまった。


「ん? どうかしたか?」


「アイサ! それが嬉しいって感情だよ!!」


「そうなのか? 甘い物を食べたらこうなるかと思っていたが、これが嬉しいなのか……」


 どうしてかは分からないが条件反射のようにそうなっているんだろう。

 きっとこれが嬉しいだと分かれば自然に感情を表現できるはずだ。


「どういうこと?」


 香恋は私の耳元でそう言った。

 そうか、香恋はアイサについてよく知らないのだ。


「アイサはね、感情がない子なの、可哀想な子なの。けどあんな顔するんだなって」


「そっか……」


 きっと香恋も私と同じ気持ちになっただろう。

 これで、嫉妬心のようなものが消えてくれればいいが……


「アイサは普通になれるよ! 大丈夫!」


「莉亜羅は特別だよ。ありがとう」


 こら、またそうすぐ無自覚に嫉妬心を煽らない……


「何か2人って凄いね。泣けてきた」


 香恋の表情が気になったが、嫉妬心のような物は無かった。

 それどころか感動している様子だった。


 このまま3人で仲良くなれそうだと私は安心した。

読んでいただきありがとうございます!


ぜひ、面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等していただけると励みになります!

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