表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強魔導師は不毛の大地でスローライフを送る ~凶悪な魔物が跋扈し瘴気漂う腐界でも、魔法があれば快適です~  作者: えぞぎんぎつね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/71

70 お風呂の準備

 リラから教わっている間に、俺は湯船にお湯を入れ終わった。

 あふれんばかりにお湯をたたえた湯船から湯気が出ている。


「魔導具を設置しますね」

「ありがとう。手伝おうか?」

「大丈夫です。簡単な作業なので。それにフィロに手伝わせます」


 カトリーヌはそう言って湯船の横に用意された専用スペースに魔導具を設置していく。


「フィロ、そっちを持って」

「わかった! 任せろ」

「……コボルトさんたち、大きさはばっちりです」

『やったわん!』『まどうぐのおおきさをきいて、ちょうせいしたわんね!』


 俺が建物を作っている間に、カトリーヌはコボルトたちと打ち合わせを済ませていたらしい。


「……入りたくなるな」

「ねー、はいりたくなる。きもちよさそうな?」

「そうだね、ノエル。そっちの調子はどうかな? 手伝うよ」


 ノエルは露天風呂の湯船に三割ぐらいお湯を注いでいる。

 五歳児であるうえ、習ったばかりの人族の魔法を使っているのだ。


 湯船の三割もお湯を注げているのは凄いとしか言いようがない。


「ありがと! てぃるははやいなぁ」

「大人だからね。それにノエルだって、聖獣の魔法を使えばもっと早いだろ?」

「ん。それでも、てぃるのほうがはやいとおもう」

「そっか。だけど、ノエルは、そのうち俺より凄いことができるようになるさ」

「そっかな~」


 話しながら俺とノエルは露天風呂の湯船にお湯を注いでいく。


「それにしてもノエルは魔力が多いなぁ。五歳児とは思えないほどだ」

「そっかな? よんさいのみーしゃも魔力おおいけどな?」

「ミーシャの魔力量も実は規格外の多さなんだよ」


 それでもミーシャよりノエルの方が魔力の量は段違いに多いのだ。

 ノエルの魔力量は規格外のさらに上をいっている。


「エルフたちはみんな魔力が多いからね。外の世界の魔導師はそうでもないよ」


 ノエルは非常に強い神獣や聖獣に囲まれて育った。

 だから、普通というものがわからないのだろう。


「そっかー。えるふは魔力がおおいのなー」


 だが、腐界のエルフにかけられた呪いのせいで魔法を使えない。

 身体強化の魔法だけは使えるとは言え、とても惜しいと思う。


「エルフのみんなが魔法を使えたら、優れた魔導師になるだろうなぁ」

「だから、のろったのなー?」

「そうだろうな。敵はエルフ一族と大賢者が怖かったんだろうね」


 そんなことを話しながら、のんびりとお湯を溜めていく。

 お湯を溜め終わると、カトリーヌとフィロがやってきて露天風呂にも魔導具を設置しはじめた。


 その様子をノエルは目をキラキラさせて見つめている。


「せっちもおもしろいのなー?」

「面白いかしら?」

「おもしろい」

「ノエルは魔導具師に向いているかもしれないわね」

「そっかー。むいてるかー」


 カトリーヌにそう言われて、ノエルはまんざらでもなさそうだ。


「ノエル。剣士になるのもいいよ。ノエルには剣の才能もあると思うんだ」


 剣聖と呼ばれるフィロが真面目な顔で言う。


「そっかな? さいのうあるかな?」

「ああ、枝を振り回しているところを見たが、筋が良い。もちろん練習は必要だが」

「まどうしにして、けんし……まほうけんし? ありかも?」


 そういって、ノエルはニコニコと笑っている。


「まあ、ノエルは好きなことをすれば良いさ」


 フィロがそう言ってノエルの頭を撫でた。


「すきなことなー」

「魔導具師でもいいし錬金術師でもいいし、剣士でも魔導師でもいい」

「ふむふむ~」

「まだ五歳なんだ。ゆっくり考えたらいい」

「わかった!」


 カトリーヌが魔導具を設置し終わると、もう一度全体を確認してまわる。


「ん、問題ないな。いつでも入れる」

「よるごはんたべたらはいろうな?」

「そうだね、でも先に女性陣に入ってもらうか」

「のえるはどっちでもいいな? ……あ、よごれたおゆってどうするん?」

「畑に利用する予定だよ。コボルトたちが排水機構も作ってくれていて――」


 石を加工して管を作り排水を池に溜めるようにしてくれている。


「ほら、露天風呂の向こうの地面に穴があいているでしょ?」

「おおー。すなあびばかと思った」

「たしかに、そう見えなくはないな」


 コカトリスたちの要望で砂浴び場も作ることになっているのだ。


「もしかしたら……泥浴び場にするのかも?」


 にわとりは砂浴びだけでなく、泥あびも好きなのだ。

 きっとコカトリスも好きだろう。


 そう考えてコボルトたちが工夫してくれた可能性もある。


「うしもどろあび好きな?」

「そうなんだよね。モラクスとモニファスも泥浴びしたいだろうし」


 ため池にしてもいいし、泥浴び場にしてもいい。

 実際の運用はコボルトやコカトリス、モニファスたちと相談して決めれば良いだろう。


「なな、てぃる。ゆぶねのお湯でからだをあらうのな? おゆがへるな?」

「もちろん。みんなが入り終わったら、その都度、お湯を補充する予定だよ」

「そっかー。てぃるは魔力がいっぱいだから、よゆうだろうけど、めんどうな?」

「多少はめんどうだけど、まあ一日一、二回ぐらいだろうし、そのぐらいならね」

「そっかー。のえるもてつだうな?」

「ありがとう」

「れんしゅうにもなるしな?」


 それから、フィロとカトリーヌは夕食作りの手伝いに向かう。

 コボルトたちは、夕食まで砂浴び場を作りたいと駆けていった。


『すなあびばもつくるわんねー』『あ、どろあびばつくったら、みずたのむわん』

「ああ、任せて」


 本当に働き者である。


「俺も夕食の準備を手伝うか。ノエルは子供たちと遊んでいていいよ」


 子供たちの姿が見えないので、家の中でジルカやモニファスたちと遊んでいるのだろう。


「そだなー。そうしよ…………、あ! せっけんわすれてたな?」

「おお、そういえば石鹸草があるんだったね」


 ミアとジルカが石鹸草をたくさん採ってきてくれるという話だった。

 石鹸草から石鹸を作ることができたら、風呂もより快適には入れるというものだ。


「リラたちが夜ご飯の準備をしてくれている間に、石鹸を作れるか試してみようか」

「うん。のえる、つくるとこみたいな?」

「いいよ。……ミア。採ってきてくれた石鹸草で石鹸作れるか試していいかな?」


 俺はリアと一緒に夕食の準備を進めるミアに声をかけた。


「もちろんだ。そのために採ってきたのだし。石鹸草なら私たちの家においてある」

「ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」


 俺とノエルはリアたちの家に向かう。


「おー、ティルにノエル、どうしたのであるかー? 遊びにきたのであるか?」

「ちょっと作業があってね」


 家の中ではジルカとモニファス、ペリオスとペリーナが子供たちと一緒に遊んでくれていた。

 コカトリス夫妻も子供と遊んでいる。


「ジルカ、モニファス、ペリオス、ペリーナ、子供たちと遊んでくれてありがとう」

「なんもなんも! 我も楽しいであるからな!」「も」「ぁぅ」「ゎぅ」

「コカトリスもありがとう。拠点には馴れた?」

『みんないいこだから』『なれた。みんな、ひよこともあそんでくれる』

「ならよかった」


 ひよこはミーシャたち幼子たちと一緒に眠っていた。

 ミーシャが、もふもふなひよこを抱っこしている。


 ミーシャの瘴気病も完全に治った。再発の様子もない。

 本当に良かった。


「も」「ぁぅぁぅ」


 モラクスとペロが俺のところに駆けてくる。

 ガルガルも駆けてきて、ノエルの顔をベロベロとなめた


「モラクス、ペロ、良い子にしてた?」

『してた』「ぁぅぁぅ」


 俺はモラクスとペロを撫でまくり、ノエルもガルガルを撫でまくった。


「がるがる、おつかれさまだな? アオ、クロ、シロはおひるねかー」

「ゎぅゎぅ」


 子猫たちは気持ちよさそうに眠っている。

 ガルガルは、兄として子猫たちを近くで見守ってくれていたようだ。


 子猫の周りではミーシャたち年少の子供たちが眠っていた。

 年長の子供たちは起きているが、寝ている子たちを起こさないように静かに遊んでいる。


 だから、ジルカも俺も、モラクスたちも小声で話す。


「ん? のえるはな? せっけんづくりをけんがくするのな?」

「ぁぁぅ」

「がるがるもみたいかー、てぃる、いい?」

「いいよ。ジルカ、石鹸草はこれであってる?」

「あってるのである」


 籠に入った石鹸草が土間においてあった。


「ジルカもありがとう。石鹸草を採ってきてくれて」

「なんもなんも。石鹸草、ミアに教わって使ってみたのだがー」

「どうだった?」

「いい匂いになったのである。あと、肌がすべすべになったのである。あと、さっぱりしたのだ」

「そっか、それは良かった。確かに石鹸草の性質は石鹸ぽいな」


 俺はジルカと話しながら、石鹸草を魔法で分析していく。

 中に含まれる物質や性質を、細かく調べていった。


「石鹸作るの?」「石鹸ってなに?」


 年長の子供たちが集まってくる。


「えっとね、体をきれいにする物なんだけど、石鹸草を便利に使いやすくした物かな」

「なるほど?」


 子供たちはよくわかっていなさそうだ。


「まあ、使ってみたらわかるよ」

「てぃる、つくれそ?」


 俺が分析のために使っている魔法をじっと見ていたノエルが言う。


「うん。作れそうだ」

「そっか。それにしても……そのまほうべんりそだな?」

「便利だよ。物体の分析以外にも人や聖獣の診察にも使えるし。ノエルは使えそう?」

「すこし、むずかしそだな? あとでおしえて?」

「いいよ。……よし、分析おわり」


 俺は錬金術を使って、石鹸草を石鹸へと加工していく。

 俺の錬金術は魔法を駆使するものだ。


「てぃるは、まほうつかいまくるのな?」

「そうだよ、便利だからね」

「れんきんじゅつ? なのか?」

「俺の錬金術のやり方は珍しいんだよ。魔法錬金術と言っても良いかもしれない」


 一般的な錬金術師が燃料を燃やして加熱したり氷を使って冷却するところを魔法で行う。

 攪拌や蒸留なども魔法を使えば、道具を使わずにあっさりとできるのだ。

 難しい成分の抽出も、魔法を使えばあっさりだ。


 とはいえ、その魔法を習得するのも、自在に操るのも、非常に難しい。


「魔法れんきんじゅつ。べんりだな? てぃるはすごいな?」

「編み出したのは俺じゃないよ。師匠と師匠の弟子、つまり俺やカトリーヌの兄姉弟子が考えたんだ」


 錬金術師の中では非主流の系統だ。


「俺の魔導具の作り方や魔法陣の描き方も実は非主流で――」


 師匠と兄姉弟子以外では見たことのない手法を使う。


「じゃあ、かあさまのまどうぐづくりもめずらしい?」

「うーん。カトリーヌは両方使えるかな」


 元々学んでいた手法と、師匠から学んだ手法。その両方を駆使している。


「一応、俺も一般的な手法も学んではいるんだけど、カトリーヌと比べて熟練度が違うからね」

「そっかー」

「魔導具作りは、俺よりカトリーヌの方が上かな」

「ほうほう? かあさま、すごいなー」

「ああ、カトリーヌは凄いよ」


 元々、才能があったのだろう。一般的な手法の技術も非常に高い。

 だが、真に凄いのは、師匠のやり方に習熟していることだ。

 師匠に弟子入りして二、三年だというのに、ほぼ完璧に習得している。


 きっと、ノエルを見つけるための魔導具を作るために必死で習得したのだろう。


 錬金術の説明をしながら、どんどん石鹸を作っていく。


「おお~」「はやい」

「なんか白いのができた」


 俺の作業を見守りながら、子供たちが小さな声で驚いている。


「これが石鹸。濡らしてこすると泡が出るんだけど、それで体をあらうと綺麗になるんだ」

「ほほ~」

「洗った後、泡は水で流すんだよ」

「わかった」


 詳しい使い方はお風呂に入ったときに教えれば良いだろう。

 腐界の外には石鹸があるので、女の子にはカトリーヌが教えてくれるはずだ。


「コカトリスはお風呂入る? それとも砂浴びとか泥浴びの方がいい?」


 俺が小声で尋ねると、コカトリスは静かに答える。


『砂浴びがいい』『お風呂はあまりすきじゃない。水浴び泥あびの方が好き』

「そっか。コボルトたちが作ってくれているよ」

『たのしみ』『おれいいわなきゃ』


 そんなことを話しながら、石鹸を作っていると、

「みんな! ご飯だよ」

 ミアが呼びに来てくれた。


「ごはん! ミーシャおなかすいた!」

「ぴよぴよ!」


 ミーシャたち年少組と、ひよこがすぐに目を覚ます。


「みんな、ご飯を並べるのを手伝ってくれ」

「わかった! てつだう!」


 そう言って元気に走って行く子供たちをミアが見送る。


「ミア、石鹸草の採取ありがとう。おかげで石鹸を作れたよ」

「おお、もう作ったのか。さすがに速いな。ご飯を作るのと同じぐらいか」

「材料さえあればね。これが石鹸だよ」


 俺はミアに石鹸を手渡した。


「うん、良い匂いだな、石鹸草の匂いに似ているが、もっとすっきりしている」

「石鹸草より汚れを落とす効果も高いはずだ。それに肌にもいい」

「ほほう。使い方は?」

「濡らした布にこすりつけたりして、泡立てて……いや、カトリーヌが詳しいかな」

「わかった。風呂に入るときに聞いてみよう」


 そして、俺たちが家をでると子供たちがせっせと料理が乗ったお皿をテーブルへと運んでいた。


「手伝おう……これはオムレツかな?」


 綺麗な黄色いオムレツにケチャップがかけられている。


「ん? 中に具が入っているのかな」


 オムレツではなく、具を卵で包んでいるようだ。


「オ、オムライス……だ」

「オムライス? ノエルは知っているの?」


 ノエルはシルヴァに育てられたので料理はほとんど知らないはずなのだ。

 俺の問いにノエルが答える前に、リラが言う。


「そう! よく覚えていたわね、オムライスよ!」


 どうやら、リラが事前にノエルに教えていたらしい。


「オムライスってなんだ。オムレツとどう違うんだ?」


 俺は、子供たちと一緒にリラから渡されたお皿をテーブルに運びながら尋ねた。


「ご飯を、オムレツみたいに卵で包んだ料理ね」

「ほほう? このご飯はケチャップで味付けしているの?」


 卵の中には赤いご飯が見えていた。


「そうね。メインの味付けはケチャップ。ご飯と玉葱とキノコ、魔鳥肉を混ぜて炒めた物」

「ほう……聞くだけでうまそうだな」

「しかも……はんばーぐまで……ごくり」


 オムライスの横にはハンバーグが添えられていた。


「オムライスとハンバーグは子供が大好きな料理の定番なのよ」


 きっとリラの所属する神殿が運営する養護院でも大人気なのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ