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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
最後の戦い 編
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第75話

 夜風が心地よく吹く城壁の上。

 見張りの兵士が目の前に広がる大軍勢に焦りの表情を浮かべながら歯噛みしている。

 きっと彼らはあの軍勢が突撃してくるまでは自分たちは生きていられる、そう考えているんだろう。

 だがそんなことはない。


 「ッ!?ッ!!」


 城壁の上で見張りの首に手をまわし尋常ではない力で締め上げる男がいた。

 みしみしと軋む骨の音と開いた口から漏れるそよ風にも劣るようなか細い声。

 それからほどなくして見張りは死んだ、よく見ればほかにも死体が転がっている。


 「おい、交代のじかーー」


 そんなとき現れたのは見張りの交代要員。

 運が悪いのは倒れた仲間だけではなかったようだ。


 




 「どうにかして逃走経路を確保するんだ!じゃないと全滅だぞ!?」


 「ですがすでに陸路はふさがれてます。仲間も来れない。海路は軍船とムエルトの仲間がわんさかいる」


 「ええい糞!!」


 狭い部屋で机に置かれた地図を見ながら喚き散らしているのは革命党の残党をまとめる頭目、マルコスだ。

 もともとはアダンたち薬の番人と同じ革命党の人間。

 組織が解散してからは総統が残した財産の一部と薬を利用して汚い商売に手を染めていた。


 (どいつもこいつも正義面しやがって!!そこいらの餓鬼や一般人が死ぬ程度でガタガタぬかしやがって!!)


 怒りを隠すことなく机を力いっぱいたたく。

 だがそんなことをしても状況など変わらないのは誰もがわかっていた。


 「地面を掘って地下通路を作るのは?」


 「間に合うと思ってるのかこの馬鹿が!!」


 「籠城しましょう。奴らの食糧は長くはもちますまい」


 「こっちの食糧だって長くはもたんぞ……」


 あーだこーだと話し合っている最中だった。


 「マルコス様!!」


 慌てた仲間が部屋に駆け込んできた。


 「どうした!?また飯が足らんと言ってきたか!?それとも暴動か?」


 「違います!殺しです!城壁の上で見張りをしていたやつらが全員殺されました!」


 「何!?」


 部屋の中にいた人間がどよめきだす。

 警戒中のこの状態で人知れず侵入し見張りを殺す技術……

 それをもった人間をマルコスは一人だけ知っている。


 「まさか……アダン、『薬の番人』か?ええいそれは後だ!!火薬庫に見張りは?」


 城壁の内部だが、ほとんどは石造りになっていて死角が多い。

 入ってきた敵を不意打ちするためのものだがそれが完全に裏目に出た。


 「2人です!」


 「6人増やせ!それと内部で行動するときは3人一組になるように通達しろ!これ以上仲間を殺させるな!」


 マルコスはすぐさま指令を出した。

 城門を守る大砲に必要なものでもあるがそれ以上に怖いのは侵入者に使われることだ。

 なんとしてでも守らなくてはならなかった。


 (冗談じゃない!あんな人殺し専門の人間までここにきてるってのか!?)






 死体が見つかってから少しだけ時間がたった。

 一部を除いて城壁の内側は混乱している。

 とりわけ火薬庫の前はまだましな部類だ。

 

 「見張りが殺されたってよ!」


 「ムエルトの奴らの仕業か!?」


 「知らねぇよ!」


 戦場の中心にいるという不安、人殺しがすぐ近くにいるという不安。

 二つが合わさってより大きな不安になっていった。


 「こうなったらもう逃げたほうが……」


 「どうやって逃げるんだよ。包囲されてるってのに」


 「糞がッ!!」


 集まった8人、それぞれ剣で武装してはいるがそれがとても頼りなく見えた。

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