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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
最後の戦い 編
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第73話

 歩き続けて3日、アダン達はだだっ広い草原だった場所に到着した。

 そんな場所で彼らが目にしたのはとんでもない人だかりだった。


 「なんだこりゃあ……これ全部ムエルトの構成員か?」


 見渡す限りの人、人、人……それが海岸の手前まで

 おそらくすべての人間がバレリオの集めた構成員、10万人はいるだろうか?

 集まった人間の中には武勲のある騎士も何人か混じっている。

 

 「バレリオの所に行こう。どうせあいつは先頭だ」


 「おいおい、大将はおとなしく後ろに居るもんだろ?」


 「引きこもってるときならまだしもこんな戦場ならあいつは必ず先頭に出てくる。そういうやつさ」


 「そんなもんなのか」


 周りをきょろきょろと見まわしながら歩いていると……


 「アダン様!お久しぶりでございます!」


 一人の男に呼び止められた。

 使い古した革鎧をつけた白髪交じりの頭をした男。


 「誰だ?アダンちゃん」


 「残念だが覚えてない。親衛隊の人間か?」


 「ええそうです!まさか貴方にご助力いただけさるとは……」


 「バレリオは?」


 「こちらです!ご案内致します」


 その男にアダン達は導かれ、バレリオのところへと向かった。






 「よぅアダン、来てくれたのか」


 予想通りバレリオは先頭で指揮をしていた。

 そして傍らには完全武装の親衛隊達、面構えからして他の構成員とは違う歴戦の猛者だ。


 「バレリオ、どうなってるんだ?」


 「お前の事だ、ある程度の情報は持ってるんだろ?あっちに見えるあいつらは革命党の残党だ。性懲りもなく薬をばら蒔いてた」


 「お前の仲間だったんじゃないのか?」


 気だるそうに髪をいじるバレリオ。

 

 「仲間ァ?馬鹿言っちゃいかん。全員が全員仲間じゃないさ。金に目が眩んで薬に手を染めた奴もいる。そんな奴らは俺の言葉なんか聞きゃしなかったのさ」


 「そうか……なら躊躇はいらんな」


 「あァ、言葉が通じないなら後は武力だけだ。他のやり方なんざ俺には分からねぇからな」


 「だが苦戦してるんだろ?」


 「……まぁな」


 アダンが敵のいる方向へと目を向ける。

 そこにあるのは横に長い城壁と、城壁に設置された鉄の筒……


 「あれが敵の仕入れた兵器か?」


 「そうだ『大砲』って言う。火薬で鉄の玉を撃ち出す兵器で威力はかなりのもんだ」


 「それに手前の堀も厄介だな」


 城壁の手前、そこには堀と柵が用意され後ろには大量の弓兵、槍兵がいる。

 当然のようにバリスタも投石機も設置されていた。


 「真っ直ぐに突撃したら敵の弓の的だ、で海から攻めようとしたら今度は大砲が飛んでくる。数が必要だったのさ」


 「数に任せて突撃は無謀だぞ」


 バレリオの集めた構成員は数なら圧倒的だ。

 だが練度は圧倒的にあちらが勝る、勝てるにしても犠牲者が多くなるのは間違いない。


 「知ってるさ、だがそれしかなかった。……お前が来るまではな」


 「…………」


 「お前が協力してくれるんなら、こっちの犠牲は少なくてすむ。どうだ?やってみねぇか?」


 「そのために来たんだ。嫌だって言ってもやるぞ俺は」


 「よし、なら頼むぞ。『薬の番人』さん」

 

 「『薬の番人』なら、ここにも居るわ」


 先程までとぼけたような口調だった二人が、お互いに顔を見合せ額に手を当てた。


 「ヘルガ……」


 「よ、よォヘルガ……久しぶりだ」


 ひきつった笑みを浮かべながら二人が振り返る。

 二人が見たのはにこにことしたアダンを案内した親衛隊員と布の鎧に身を包み無表情で佇む美しい女性……ヘルガの姿ぢった。

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