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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
迷子の女 編
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第68話

 「随分と動きが悪いですね。どうしたんです?体調でも悪いんですか?」


 「いや、ご機嫌さ。安心しろ」


 軽口をたたきつつアダンとロレッタはお互いに距離をとる。

 林の中での戦闘、足場の悪さもさることながらアダンは負傷中、状況が悪すぎた。

 

 (ああくそ、痛いな……)


 片腕で剣に力が乗らない。

 木や下草が邪魔でそもそも長剣が振りにくい。

 痛みも増してきている。 

 

 (奇襲は失敗、逃げるにもこの体じゃきつい。さてこうなるとどうするか)


 「いっそおとなしく僕に首を差し出しますか?楽になれますよ」


 余裕綽々といった風なロレッタに苛立ちを覚えるアダン。


 「……面倒だ」


 「ん?」


 現状を打開する為にアダンが取った行動。

 それは……


 「お前は拳でやってやる」


 「……舐められたものですね」


 アダンは長剣を投げ捨て拳を固め、まっすぐにロレッタを見据えた。

 

 (どうせ逃げられないならもうやけっぱちだ。このくそアマをぶん殴って頭冷やさせてやる)


 もう自棄だ。

 目の前にいるろくでなしを殴りつけてやる。

 短剣で武装してるが知ったことか。


 「行くぞ!!歯を食いしばれ!!」


 アダンは切れた。

 もはや作戦も糞もない。


 「ただ切れて殴りかかるだけですか。罠と作戦で時間をかけて戦う貴方らしくもない」


 片腕だけで殴り掛かってくるアダン。

 だがそんな攻撃はロレッタからすれば楽に防げる。

 ロレッタはそう思っていた。


 「がはッ!?」


 ところが実際は違った。

 アダンの拳は振るわれた短剣をすり抜けてロレッタの顔面へと叩き込まれた。


 「この……!!」


 「お前が!なんで!!裏切ったのかはしらんが!!今はそんなのどうでもいい!!ぶん殴ってやる!元の顔がわからなくなって血反吐いてぶっ倒れるまで!!殴り続けてやる!!」


 ロレッタの振るわれる短剣は何度か当たっている。 

 腕を切り、手首に刃が食いこんでいる。

 矢で射られた傷だってある。

 全身傷だらけで、動くのにも制限があるはず。


 「どうした!?俺を!!殺るんだろ!!早く殺してみろ!早く!!早く!!!」


 「なんッ……で!?」


 いつの間にか、押されていたのはロレッタのほうだった。

 拳を受けた腕が折れ、口から血が流れ始めた。

 そして眼前に迫るアダンの顔。


 (首を切って……!!)


 短剣をアダンの首筋めがけて振るおうとした。

 だが……


 「ラァッ!!」


 「がはッ……」


 そのままアダンはロレッタの顔面に頭突きをし始めた。

 一発、二発、三発……


 「起きろ!ロレッタァッ!!」


 幾度となく繰り出される頭突き、ロレッタの意識が飛び始めた。

 だが意識を飛ばすことを許さぬようにアダンの拳が追撃する。

 

 (この人……殴り合いもこんなに強かったの?)


 「ウァアッ!!ガァッ!!」


 ついにロレッタはその場に倒れこんだ。


 「まだ終わらんぞ!!ロレッタ!!起きやがれくそったれ!!おい!!」


 「か、かふっ……」


 馬乗りになって凄まじい形相で拳を振るうアダン。

 思えばロレッタはアダンから本気で殴られたことなどなかった。

 弟子としてロレッタはアダンに加減されていたのだと今分かった。


 (どうにかして……逃げないと……)


 「……南」


 「ああ!?」


 「南に……革命党の残党が集まって、る」


 「何を言って……」


 一瞬攻撃が止まった時。

 

 「ぐぁっ!?」


 まだ何とか動く腕を動かし、アダンの目に目つぶしを見舞う。


 「待ちやがれ糞が!!」


 馬乗りから何とか脱出しロレッタ。

 もつれる足を必死に動かしその場から逃げる。

 皮肉なことに先ほどとは全く逆の立場になってしまった。

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