第64話
「くそったれ!!くそったれが!!」
暗い森の中を走り回る男達、彼らは今、姿を見せない男……アダンに狩られていた。
「皆固まれ、周りを警戒しろ」
「何処に……おいちょっと待て、ルイはどうした!?」
ポールを捕まえに来たはずの彼ら。
だが対峙した男を倒そうと仲間の一人が突撃したところ状況が変わった。
襲い掛かってきたところを取り押さえた男はそのまま森の中へ仲間の一人を連れて逃げ、追いかけてきた他の仲間を次々音も無く狩り始めたのだ。
今残っているのは2人だけ。
「何処に、あいつ等無事なのか?」
「知らねぇよ」
松明を掲げながら周りに視線を向ける。
だが男の姿は何処にも見当たらない。
「くそ……何も見えねぇ」
「…………」
「おい、移動しよう」
「…………」
「おい?」
背中合わせになって警戒していた仲間が応答しない。
恐る恐る後ろを振り返ると……
「レオ!?」
「……か……ひゅ……」
首に縄をかけられ吊るされていた。
「いつの間に!?……ギャアッ!?」
近くに生えていた立木、そこから縄は垂れていた。
仲間がつるし上げられているのを見た彼は思わず上を見上げ、降ってきた何かに潰されるように倒れこんだ。
「大人しくしろ。戦わないというならこいつを含めて皆助けてやる」
「信じられるか!!」
降ってきたのはアダンと名乗る男、組み敷かれながら首筋に短剣を突き付けられた。
「あいつがどうなってもいいのか?」
男は嬉しそうな声色でそう言った。
横目で見るつるし上げられた仲間は苦しそうにもがいているもののまだ息がある。
だが放置すれば死ぬのは確実。
「選べ、このまま全員死ぬか。それとも少しでも生き残る可能性に賭けるか」
「遅いなあアダンちゃん」
「信じて待ってましょう。まあ負けることはありえませんが」
馬を連れ見通しの良い交易路まで出てきたマブト達。
弓を離そうとしないマブトには目もくれず、ロレッタは弩を構えている。
「……俺たちゃどうすりゃいいんだ」
「何がです?」
不安そうな表情を浮べるポール、だがそれは命を狙われているからというだけではなさそうだった。
「金も置いてきちまった。コレットの治療費が……」
「命が助かっただけでもいいじゃないですか。それともあのまま殺されている方が良かったとでも言うつもりですか?」
「そうじゃない、そうじゃないが……ああくそ」
今までかき集めた金が消えた、そのことがポールにとってはよほど堪えているようだ。
「おい、アダンちゃんが帰ってきたぞ」
「師匠!」
「よう」
森の中から枝をかき分け現れたアダンに駆け寄っていくロレッタとマブト。
「怪我はなさそうだな。流石だぜ」
「ちゃんと殺しました?」
物騒な質問を投げかけるロレッタ。
「いや、全員生かして帰した。そっちのお二人さんに手は出さないようにしろって言ってな」
「……そう、ですか」
ほんの少し、ロレッタの表情が曇ったように感じた。
「どうすりゃいいんだよ……もう帰れないじゃないか」
「家にあった金ならあきらめるんだな。今度は確実に殺される」
「あそこに全財産があるんだ!あれが無いとこの子の目は……!!」
「それについてなんだがな……」
数週間後、シードル騎士団にて……
アダン達が以前協力した騎士団、そこにポールとコレットは徒歩でなんとかたどり着いていた。
「で、そのアダンという男にこの手紙を渡されてここに来た……と?」
「あ、ああ」
面倒そうに問いを投げるのがアルチュール、元々皺まみれの顔をしかめさせ更に皺を作りながら彼は手紙に目を向けた。
『アンタが犯罪者崩れと組んでたなんていうことを方々で吹聴されたくなければその親子を助けてくれ』
「仕方ないか……コレットちゃん、だったかな?」
「は、はい」
「その目が治るよう、良い医者を紹介しよう。かかるお金は私の個人資産から出す」
「本当ですか!?」
「本当さ。ただ頼みがある」
「頼み?」
「もしそのアダンにまた会う事があったら伝えてくれ『お前の友人は南に向かっている』とな」




