第63話
暗い森の中、アダン達は追手から逃げ回っていたのだが……
「見つけたぞあそこだ!!」
見つかってしまった。
「おおっと、意外と早かったな」
「その子に合わせて通りやすい道ばかり選択したからですよ」
「いじけるなよロレッタ。たまにはいいだろう?」
ポールの隣では怯えるコレットが居て、その周りには二人を守るようにアダン達が居た。
それぞれ弓に弩に様々な武器を構えているが……
「あんたら何者だ?ずいぶん手慣れてるな」
ポールには不思議に思ったのだろう。
怯える様子も焦る様子もないアダン達に向かってポールはそう聞いてきた。
「あー……俺たちはあれだ。騎士だ」
「騎士?」
とって付けたような言い方に疑問符を浮べるポール。
「可愛いお嬢さんを守るために来た白馬の騎士様さ」
「とてもそうは見えないけどな」
アダンは精一杯凛々しい顔つきで答えたつもりだったが呆れたような口調でそう言われた。
「ならどうします?僕たちだけで逃げましょうか?」
「分かった降参だ。頼むよ」
「ロレッタちゃん、案外意地悪だな」
がやがやと言いながら追手を振り切るために全力で走る。
かなり人の手が入った森ということもあり歩きやすいがその分身を隠す場所が限られてくる。
アダンはどのみち追手に見つかることは想定済みだった。
「ロレッタ、そいつらと一緒に先に行っててくれ」
「構いませんが……師匠はどうするんです?」
「格好つける」
「あっちだ!いけいけ!」
「おい、誰か立ってるぞ?」
森の中を走り回る追手達、そんな彼等の前に何者かの影が見えてきた。
月明かりが僅かに照らす森の中、男が静かに佇んでいる。
「何者だ?お前」
「お前らこそ誰だ?何であいつらを追い回す?」
その男は腰に長剣、肩に弩を担いでいる。
彼らが追っている人間の仲間ではあるだろうが、彼らには見たことがない人間だった。
「傷つけるつもりは無い。理由に納得がいかなければ容赦はしないけどな」
「あのクソッタレな森番をぶっ殺すためにこうしてるんだ!!あいつのせいで薪集めすらままならん!」
彼らの中の一人が口から唾を吐く勢いでそうまくしたてる。
「どきやがれ!あいつがどんどん逃げて行っちまう!それともテメェからぶっ殺してやろうか!?」
「あの糞野郎だけは許せねぇ!!」
揺れる松明が映し出す彼らの表情は怒りに満ちていて、とてもではないが説得できるような雰囲気ではない。
ともなれば男が取るべき道は一つ。
「じゃあ仕方ない。ちょっと付き合ってやる」
「そうかい、名前聞いといてやる。墓石に刻んどいてやるよ」
「アダン・ルーだ。よろしくな」
そう名乗った男は鞘に納めたままの長剣を構えた。




