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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
番人の涙 編
57/78

第56話

 「『また来てね』か……あの子私の正体知ってて言ってるのかな……」


 日が暮れ空には煌めく星が浮かぶ夜、焚火の前で貰った熊のぬいぐるみを寝そべりながら見ているヘルガ。

 村から出て暫く歩いた場所で彼女は野営をしていた。


 「早く寝よう……」


 ぬいぐるみを仕舞い、瞳を閉じようとした時だ。

 星や月とは違うなにかが光を放っていた。

 

 「なに?」


 光のする方を見てみる。

 すると……


 「あれは……村の方?」


 彼女が居た村の方向が橙色の光を放っていたのだ。


 (嫌な予感がする)


 剣を握りしめた彼女は全速力で村へと向かって駆けた。






 「くそったれ!どっから沸いて出やがった!?」


 悪態をつきながら燃え盛る村を走り回るアダン達。

 そこかしこで火の手が上がり賊のような男たちが暴れまわっている。

 

 「師匠!きりがありませんよ!!」


 「退いてろロレッタ!」


 「!?」


 落ちている斧を拾い上げ、今まさに女性に襲い掛かろうとしている賊に向かって投げつける。


 「大丈夫か!?こんなところで座り込むな!!」


 肩に当たった賊は慌てて逃げ去った。


 「…………」


 追いかけていくロレッタには目もくれず襲われそうになっていた女性に駆け寄る。

 彼女は呆然としていた。


 「あ、えと……」


 「早く逃げるんだ!」


 「子供がいるんです!はぐれてしまって!」


 「……ッ!」


 周囲を探すがそれらしい子供は……


 「あの子か!?」


 マブトが道端で倒れている少女を指さす。

 砂埃をかぶり、賊に斬られ、ぼろ布のように打ち捨てられているその子供に彼女は半狂乱になりながら近づいていく。


 「ニナ!ニナァッ!!」


 「……あの子だったのか」


 「糞が……ッ!!」


 思わず近くにあった桶を蹴りつけるが、当然そんなことをしても子供は戻って来ない。


 「残ってるやつらを掃討するぞ。手を貸せ」


 「ああ、やってやろうぜ。血達磨にしてやる」


 村に残っている賊はある程度消えた。

 あとは残っている者の始末のみ。

 そう思っていると……


 「ん?お、おい後ろだッ!!」


 「何?うおぁッ!?」


 振り返った直後だった。

 すさまじい早さでアダンの首目掛けて剣が振るわれた。


 「だれだ!!」


 避けてから2度目の斬撃、倒れながらもなんとか受け止めるとそこでようやく襲撃してきた人間の顔が見えた。


 「ヘルガ!?」


 火事の炎が襲撃者の姿を照らし出す。

 炯々と光り輝く蒼の瞳と尋常ではない怒りの形相に歪んだ顔……

 今まで見てきたヘルガの顔とは全くと言っていいほど違う。


 「……貴様らがやったのか」


 「何!?」


 低く怒りを含んだ声。


 「おいヘルガ!俺たちがやったんじゃない!その剣を納めろ!!」


 そうマブトが叫んでヘルガはようやく剣をひいた。


 「……誰がやった?」


 「よく分から」


 「誰がやったんだ!!」


 すさまじい剣幕で爪が手のひらに食い込むほど握りこんでいる。

 だが突然襲撃された彼らからすれば賊の正体などわかるわけもない。


 「……ッ!」


 ふとヘルガが泣きじゃくる母親に気が付いた。

 抱えられている少女も……


 「あの子……」


 「なんだ?知り合いか?」


 「……別に」


 とても関係が無いようには見えないが、ヘルガはそれだけ言うと去って行った。

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