第55話
とある村にて。
そこでは一人の美しい女性が竪琴を弾いて音色を奏で日々の生活で疲れた村人の心を癒していた。
白金のような髪と青い瞳が特徴の女性……ヘルガだ。
「いい腕してるね。心が安らぐ」
「もう終わりかい?もっと聴かせとくれ」
「ありがとう。けどもう行かないと」
曲を弾き終わると荷袋の中に竪琴を仕舞い、白金のような流れる髪をなびかせその場を後にした。
「いい人だったなぁ……あの人」
「うちの息子や近所の子供にも読み書き教えてくれててね。竪琴だけじゃなくて学もある。おまけにあの綺麗な顔。女の私でもため息がでるよ」
去っていく女性を見ながら口々に村人が賛辞を与える。
彼女はここに数日滞在しながら子供に読み書きを教えたり農作業の手伝いをしていた。
始めこそ訝しむ者も居たがいまやそんな者はいない、なんなら一緒になって彼女の竪琴に賛辞を送っている。
「ヘルガお姉ちゃん!!」
去っていく彼女に駆け寄っていく一人の幼い少女。
嬉しそうな表情を浮べながら手のひらに収まる大きさの熊のぬいぐるみを渡してきた。
「……もう行っちゃうって聞いたから。私の宝物あげる」
「いいの?大事な物なんでしょう?」
「うん、いいの。また来てねヘルガお姉ちゃん」
「……ええ、約束するわ」
一瞬表情が曇る。
だがすぐに表情を戻すとそう約束し彼女は少女の頭を撫でた。
「おお、やっと着いた」
「なんだかんだ食料が危なかったな」
「皆さん調子に乗って食べすぎなんですよ」
暫くしてアダン達一行がヘルガが滞在していた村に到着した。
湖で釣り上げた魚はこの時殆ど食べつくしていて、あと数日到着が遅れれば地獄を見れたであろう。
「おや?お前さんら旅の人かね?」
「そうだよおじいちゃん」
村の入り口で適当に喋っていたところ村人と思われる老人に話しかけられた。
「ふーむ最近よく旅人が来るのう」
「ん?他にだれかここに来たのかい?爺さん」
「ああ、さっき出て行ったがのう。とても綺麗なお嬢さんじゃった」
老人は人懐っこい笑みを浮かべながらそう言った。
「綺麗な……」
「お嬢さん……」
「あー……」
綺麗なお嬢さん、自分たちと同じ旅人……3人の頭の中に一人の人物が浮かんだ。
「ま、まああいつとも限らん。別人の可能性もある」
「そ、そうだよな!!」
「ああ、背中に切っ先の無い剣を背負っとった」
「「「…………」」」
頭が痛い。
だがこれで確定した。
「お前等切り替えろ。ああそれでおじいちゃん。俺達は泊るところとか仕事探してるんだけどなんかないかな?」
「あるぞい。それなら……」
老人に案内され彼らは村の中へと入っていった。




