第53話
「ほうほう、意外とやるなマブト」
「それほどでも……あるな!はっはっは!!」
ロレッタに偵察を任せた後、二人は村の酒場でがやがやと客に見守られながら的当てに興じていた。
なんのことはない、小振りの短剣を的に当てて点数を競うものだ。
「よし、次は俺だな。ど真ん中に当ててやる」
「おう見せてくれよアダンちゃん」
勢い良く投げられた短剣、だがそれは的に当たることはなかった。
「師匠?」
「「あ……」」
顔の筋肉だけで笑うロレッタが投げられた短剣を握りしめていた。
「で、この先にいるんだな?」
一通り説教された後、3人は湖の反対側に向かって歩いていた。
村の住民の話ではそこには蒸し風呂があるらしく付近に家もありちょっとした村のようになっていたと言う。
「冬場に使われるものだそうですが、今は使われてないから彼等が使ったんでしょうね」
「つくづく迷惑な奴らだな。きついお仕置きをくれてやろう」
「大将だけ生捕りにすればいいですよね?」
そう言いながら短剣を抜くロレッタ。
彼女の短剣は少し特殊だ。
本人が作ったもので三日月のように湾曲した刃と柄をしていて、柄の先には指を入れるための穴が開いている。
「今日は誰も殺さない、それは仕舞え」
「……そうですか」
「…………」
どこか呆れたような口調だった。
「もうすぐです。覚悟して下さい」
「な、なんだぁ!?」
アダン達が彼等の棲みかに踏みいると彼等は困惑した声をあげた。
そんな反応をするのは当然といえばそうだろう。
たかだか3人程度で突入してくるなどもはや特攻に等しい。
……それがただの3人なら。
「誰だおまごふぅっ!?」
呑気に喋ろうとした奴には腹に拳を叩き込んで黙らせる。
「全員でかかれ!たかが3にげふぅッ!!」
「喋ってる暇があるなら君もかかって来なよ」
後ろから股間を全力で蹴り上げ、悶絶する男。
その姿を見たマブトは思わず顔をしかめた。
「うわぁ、やべぇなあの娘」
「ぼさっとするなよマブト」
ロレッタとアダンの戦い方を見て思ったことがある。
双方ともに全く違うやりかただ。
アダンが力任せに殴りつけたりするのが主であるのに対しロレッタは相手の攻撃を流しながら組技や打撃技を使い攻撃するのを主にしている。
アダンと違って技があるのだ。
「ひ、ヒィッ!!」
かなり遅れて小太りの男が建物の中から飛び出してきた。
「あれが大将か?」
「ですね。偵察した時仲間に指示してましたから」
(他の仲間は殆ど倒された後にようやく出てくるとは)
アダンは内心かなり呆れていた。
「さて、そこで倒れてるやつらは良く見とけよ」
「な、なにを……」
邪悪に微笑むアダンを見て震えだす小太りの男。
「あ、ああ……」
「自己紹介がまだだったな。俺はアダン。アダン・ルー」
「え?ほ、本物……」
周りの仲間がそう漏らした。
「全然似てないなお前!!」
そこからはアダンによる一方的な暴行が始まった。
鼻を折り、片腕を折り、短剣を爪の間に突き入れたりもした。
悲鳴が木霊し周りにいる仲間は震えあがる。
「……」
「さてと、お前等もう二度と糞みたいな真似はしないよな?」
「し、しない」
「よろしい。次下手な真似してみろ、その時は魚の餌になってもらう」




