第52話
翌日の朝、昨日と同じ桟橋。
「釣れん」
「釣れませんね」
「お前ら揃いも揃って釣り下手糞か」
釣り竿がピクリとも動かないアダンとロレッタを見てマブトが呆れたように頭を押さえた。
「そういうお前は大漁だな」
「ごちそうさまです」
「はなから俺にたかろうとするな。それに俺はさっきから逃がしてる」
「ハァッ!?なんでだ!?」
「昨日あれだけ取っただろうが!!今日は一人一匹までだ!湖の均衡が崩れる」
「均衡?」
聞きなれない言葉に二人は顔を見合わせた。
「観光客も来る、それに加えて漁師も魚を取る。誰も彼も自分たちが食いきれない魚まで取ったらここに魚が居なくなっちまう。つまりそういうこった」
「ほう、お前にしてはいいことを言うな。お前にしては」
「二度もいいやがったな!!」
やいのやいのやっているとついにアダンとロレッタの竿先がぴくぴくと動き始めた。
「あたりか?」
「引け引け」
彼らが使う竿はよくしなる枝に糸をつけただけの粗末なものだが性能は十分。
あとは二人の技術次第……なのだが。
「「あっ」」
「お前等……」
ものの見事に逃げられてしまった。
「美味しいよマブトおじさん」
「美味しいですマブトさん」
「お前等……」
村の大通りにある軽食屋で焼いてもらった魚を村の住人の喧騒を聞きながらもりもり食べる3人。
串刺しにして塩をふっただけだがとても美味しい。
結局彼等は釣れずマブトが釣り上げた魚を食べることとなった。
「で、アダンちゃん。このあとどうするんだ?」
「あれ」
「ん?」
大通りに出来ているひとだかりをアダンが串で指した。
殴り合いをしている所を見るにどうやら喧嘩のようだが……
「あれがどうしたんだよ?賭けでもする気か?」
「あいつらの顔をよく見ろ」
「……ああ、なるほど」
目を細めてよく見ると、殴り合いをしているのは昨日アダン達の魚を横取りしようとした連中の一人だった。
相手の男は理由は分からないがほとんど無抵抗で殴られている。
「助けるか」
「今は待て。泳がせる」
「けどよ……」
無抵抗な人間をただただ殴る男に苛立つマブト。
「俺達は顔がわれてるからな。丁度いい。ロレッタ」
「追跡ですね?」
「ああ、頼んだぞ」
「お任せあれ。久しぶりです」
そう言い残すと、彼女は雑踏の中へと消えていった。
「おいおい、大丈夫なのか?」
「俺の弟子だ。あれぐらいならやってのける」
追跡を彼女に任せ、二人は宿へと戻った。




