第49話
バレリオに別れを告げ街を出てから3日。
アダン達はとある場所を目指していた。
「湖ねぇ……そんなところに行って何するんだ?」
馬を引きながらマブトが呟く。
「たまには寄り道もいいだろ?どうせ当てのない旅だ」
目指すのは観光地にもなっている湖、釣りも盛んなようで近くに村が出来るほどだそうだ。
彼らはそこを目指して歩いている。
「どっちがでかい魚を釣れるか勝負だな」
「負けんぞ」
二人は笑い合いながら湖へと向かった。
「竿と仕掛けは売ってやれるが……悪いことは言わないから釣りはやめといたほうがええ」
湖に着いた二人は早速釣りをするために釣り具を売っている店に行き道具をそろえた。
だが商品を渡してくる老人の表情はとても暗く……
「一体何があるんだ?」
「儂の口からは言えん」
「?」
「?」
老人の言葉に頭に疑問符を浮べながらお互いに顔を見合わせ外に出る。
湖は店からでてすぐの場所にある。
「ほう……」
「へー」
二人の口から声がもれた。
彼らの前に広がる湖はそれだけの魅力があったのだ。
澄み切った湖面、まるで空の合わせ鏡の様に空の色を映していた。
「綺麗なもんだな。心が洗われる」
「アダンちゃんの心が洗われたらなくなっちまうぞ」
アダンは無言でマブトの首を絞めた。
「おお、釣れた釣れた!!」
湖に作られた桟橋の上でアダンがはしゃいでいる。
「やっとかよ……アダンちゃん。また小さなカワカマスだなあオイ」
水に沈めた籠の中にとても嬉しそうに魚を入れているアダンを見てマブトがぼやいた。
周囲はもう日暮れになりつつあるがアダンはようやく一匹を釣り上げたところ。
ちなみにマブトは……
「食わない分は燻製にして他のは食うか。お前のそれは逃がせ」
「アアアアアアアアッ!!」
アダンが釣り上げた魚はそのまま湖に帰してしまった。
「小さい魚は逃がしてやれ。成長したら他の人間の腹を満たしてくれる」
「俺の今日一日の成果が……」
「俺の分けてやるから心配すんなよアダンちゃん」
「お前に施し受けるとは……」
帰ろう、そう思って竿を片付けていた時だった……
「おう兄ちゃん達、誰に断って釣りしてるんだ?」
「うん?」
桟橋の上に10人程の男達が現れた。
それぞれ下卑た笑みを浮かべ、手に手に木の棒やら短剣やらを持っている。
「ここは釣りするのに許可要らないって聞いたが?」
「俺たちの許可が要るんだよ。金貨15枚出しな」
「15!?どんだけふんだくるつもりだ!!」
高額な金銭の要求をしてきた彼らに対し、アダンは思い出したことがある。
悪いことは言わないから釣りはやめといたほうがええ。
(あの時のじいさんの言葉はこういうことか)
「兎に角払わねぇよ。というかそんな金もないしよ」
「ならその魚は置いていけ。今回はそれで許してやる」
「なるほど分かった」
「おいおい、正気か?」
相手の条件を飲むのかと思っていたマブトは自分が甘かったと後で知ることになった。
「沈め!!さっきの俺が釣り上げた魚の餌になってこい!!」
「あああああああ!?」




