第48話
「その後俺はバレリオが追いかけてくるまで死体になった総統の横で立ってたみたいだ」
「……」
目の前の蝋燭が揺れ消えた。
その場にいた3人の表情は暗く、まるで葬式のような空気が流れている。
「結果として組織は壊滅。生き残って他国に逃げ延びた奴、監獄に入れられた奴、絶望して反抗する奴、いろんな奴がいたよ」
「そしてその時に組織の阿片を防衛していた人間達。その代表5名を『薬の番人』と呼んだ……話は終わりだ。これで満足か?マブト」
「ああ」
「……思い出したくもない思い出だなァ?アダンよ」
「全くだ」
話し終わるとバレリオは部屋の奥に行きなにやら物を漁り始めた。
「あー……なんというか大変だったんだな。アダンちゃん」
「まぁな」
すっかり冷め切った料理に手を付ける。
不味くはないがさして美味くもなかった。
「アダン、これを見ろ」
「うん?」
奥に行ったバレリオが何やら木箱を持ってきた。
「お前それ……」
目を見開きながら木箱を開けると中に入っていたのは黒い樹脂のような物……阿片が入っていた。
「薬か。お前まだ」
「勘違いするな。俺たちはもうこれで商売しちゃいない」
アダンはまた彼が薬を売りさばいていると思っていたが、どうやら違うようだ。
「アダン、俺がお前を仲間に引き入れようとしたのは何も俺の個人的な夢を実現させたいだけじゃない」
「ほう?」
「これを売っている組織が出来始めてる。革命党の残党が集まってるんだよ。これを殲滅するためにお前の力がいる」
「ヘルガやロレッタに声をかけたのか?」
「ロレッタは行方知れず。ヘルガは……」
言いかけて彼は小刻みに
震え始めた。
恐らく接触した時に手ひどくやられたのだろう。
「俺たちは今のところ戦力は拮抗してる。だがお前が加われば百人力だ。きっと戦争になってもこちらが勝てる。それどころか最強の組織になれるぞ!」
興奮し子供の様に無邪気に詰め寄るバレリオ。
「俺は……」
「手を組んでくれ!小汚い毒をばらまく奴らをぶっ殺して市民を守るんだ」
彼は手をだすが、アダンはそれを振り払い立ち上がった。
「お前の言いたいことはよくわかった。だが俺はお前とは組めない」
悲しそうな顔で見つめてくる彼に心を痛めながらも別れを告げた。
「ありがとうよ。また一緒に飲めて良かった」
「またいつでも来い。いくらでも飲ませてやる」
帰るぞ、そういいながらマブトを立たせつつ部屋を出ようとした時。
聞きそびれていたことを思い出した。
「ああそうだ。お前の夢って何だったんだ?」
「この国の……いやこの大陸全土の悪の親玉になることだ」
「なに?」
「俺は全ての悪党を束ね、最低限の流血で済むように悪を管理する。そうしていずれは悪党どもがまっとうに生きていけるようにしてやるんだ。悪党になるしか無かった奴らに俺が道を作ってやるんだ」
「そうか……」
(俺が一人でだらだらしてる間に、コイツは周りの人間を助けようと足掻いてたのか)
「やっぱり駄目か?」
「宣言しちまったからな。まっとうに生きるってよ」
マブトに視線を送るが、当の本人は恥ずかしそうに顔を背けてしまった。
「??」
「じゃあな」
精一杯の笑顔を浮かべると、アダンとマブトはその場を後にした。




