第47話
「全員ここから逃げろ!!軍がすぐそこまで迫っている!じきにここにも来るぞ!!」
突然現れたアダンが声の限り叫んだ。
軍によって攻め落とされた廃城からは遠く離れた林の中……彼らはそこに居た。
粗末な幕舎が立ち並ぶ中、彼らはアダンの声に驚いていた。
(1千はいるか……これはもう軍でもてこずるな)
逃げ延びた革命党残党や各地に散らばっていた戦闘員などが集結しつつありその数は軍に匹敵するものになっていた。
「早く逃げろ!急げ!!もたもたするな!!」
叫び、不安を煽り、味方を混乱させていく。
次第に少人数が慌てだし、やがてその混乱は全体へと伝播していく。
「おいアダン!生きてたか!!」
騒ぎ転げまわりながら右往左往する味方をかき分け、一人の男がアダンの方へと駆け寄ってくる。
バレリオだ。
「バレリオ!」
(厄介な奴だ)
「大丈夫か?捕まったと報告を受けた時は肝を冷やしたぞ」
「自力で脱出出来た。それより総統は今どこにいる?」
「この騒ぎを聞きつけて物資とは別に自分の荷物をまとめにいった」
「荷物?中身は何だ?」
「大事なものらしい。ただの木箱にしか見えんがな」
ちょうど俺の腰までの大きさの木箱だ、バレリオは歩きながらそう説明した。
「案内してくれ」
「ああ」
「総統!!」
そう呼びかけながら幕舎の中に入ると急いで木箱を閉める総統が居た。
その姿はまるで子供が見られるとまずい物を隠すときの動作。
「お、おおアダン!無事だったか!良かった」
「お話はあとで。ここもじき軍がきます。私がお連れしますから逃げましょう」
「ここで待ち構えるのは……」
「数が違いすぎます。敗北は必至だ」
「……」
受け答えはしているがどうも上の空、アダンとバレリオを交互に見てどうしたらいいと頭を押さえるばかり。
「総統!!」
「……ッ!」
「参りましょう。早く!」
「わ。分かった!」
急いで出て行こうとしたアダンに対し、総統は何やら必死に木箱を運びだそうとしていた。
「それはおいていかれては?」
「これは組織の今後を左右する重要な物だ。手放すわけにはいかん」
「分かりました」
この時のアダンには、中身が何であるのか大体想像できていた。
「アダン、一体これからどこに行くんだ?」
「安全な場所です」
バレリオから借りた馬に二人で跨り、とある場所へと走らせた。
アダンはこの時のことは二度と忘れないだろう。
「昔孤児だったお前が、まさかここまで強くなるとはな……」
「貴方のお陰です。ですから私は……」
「??」
「失礼……もうすぐ着きます」
「何だと?まだあそこからさほど離れて……」
その時彼は周りの景色を見て顔を青くしていた。
「あ、アダン?」
「……」
それからしばらくして、馬は止まった。
目の前に広がるのは広大な花畑。
「……地図には記されていないが、ここは以前から我々革命党が使っていた土地。我々には伝えられていませんでしたがね」
「あ……ああ」
彼を馬から降ろしたアダンは手近にあった花を摘み取って見せた。
「芥子……これがここまで増えることはありえない」
「ま、待てアダン!!お前は誤解している!そもそもここは我々の土地じゃない!お前は騙されているんだ!」
「騙されてる……か」
腰に帯びていた剣を抜き放ち、彼が後生大事に持っていた木箱を切りつけた。
それはあっけなく壊れ、中身を地面に撒き散らす。
中にあったのは大量の黒い樹脂のような物。
阿片だった。
「これをなぜあなたが持っている?」
「あ、ああ……」
「答えろよッ!!総統ッ!!」
怒りの赴くまま、アダンは彼に斬りかかった。
ある晴天の日。
紅い花が咲き乱れる花畑で喚き散らしている男がいた。
じゃらじゃらと黄金の装飾品を大量に身に着けたその男は両腕を切り落とされ、剥き身の長剣を携えたアダンの足元に跪かされている。
「あんたは俺を…いや、理想を実現させるために集まった同志たち全員を裏切った」
「許してくれアダン!!金が必要だった!!この国を動かすために!!」
「おのれの私腹を肥やしたかっただけだろう?それにこんな醜い花で罪の無い人間まで穢した。多くの人間が死んだ」
自然と剣を握る手に力がこもる。
「じゃあな、総統。地獄で俺を待っててくれ」
「やめろ!!」
振り上げられた剣が跪く男の首を一閃。
噴き出した鮮血が辺りの花に飛び散った。
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