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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
芥子の散る地 編
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第44話

 「総統は外へ出ました。後は時間稼ぎのみです」


 「そうか。良かった」


 連絡役として総統につけていた仲間がバレリオの所に報告に来た。

 外は既に空は日が落ち虫の音が聞こえる夜になっていた。

 この時の彼らはとても冷静で誰もがこの場を防衛するために、次の戦闘に備えて準備をしている。


 「アダンさんとヘルガさんは?」


 「アダンは見張りだ。ロレッタとシーロを連れてる。ヘルガは味方の手当だ」


 「そうですか……」


 




 「よく冷えるな……小便ちびりそうだ」


 木の枝の上に椅子を縛り付けて座りつつ、アダンは暗い森の中から外にいる敵の様子をうかがっていた。 

 幕舎が立ち並びそこかしこで湯気が上がり食事をとっている様子が見て取れた。


 「腹減ったな」


 「師匠、食事です」


 ふと、木の下から女性の声が聞こえた。

 下を見れば短い黒髪に人懐っこそうな顔つきの女性がいた。


 「ロレッタか。そこに置いといてくれ」


 「様子はどうですか?」


 「敵の飯が美味そうにみえる」


 アダンの頭の中には山盛りの肉や舌がやけるほど熱いスープなど体が温まるような料理が浮かんでいた。


 「……真面目にやってください」


 「こういう時にはな、冗談でも飛ばしてやりたくなるもんだ」


 呆れられるような口調だったがアダンは特に悪びれる様子もない。

 そうして暫くたっても木から降りずに見張りをしているとロレッタは食事を持って登ってきた。


 「食べないともちませんよ」


 「食べるって言ってもなあ……」


 出された食事は完全に冷め切っていた。

 木の器に入れられたそれはおそらく粥なのだろうが、冷め切った粥など彼は大嫌いだった。


 「で、どうですか?」


 「敵は今のところ来てない、だが勝ち目はうすいな」


 今日は勝てた。

 そしていくばくかの損害も与えた。

 だが敵の数はいまだにこちらに比べて圧倒的で何度も攻勢を仕掛けられようものならばこちらの敗北は間違いない。

 

 (3日もあれば総統は別の拠点に移れるだろうが……援軍は望めんな)


 「夜襲してこないとも限らん。お前はいつでも戦闘できるように準備は整えておけ」


 「はい」


 木から降りようとしたとき、からからと小さく乾いた音が森の中に響いた。

 右方向、仕掛けていた敵の襲来を伝えるための罠の一種だ。

 

 「……来たな」


 「動物かも……」


 「だったらお前はここに残って見張ってろ」


 「……分りました。伝令に行ってきます」


 ロレッタは勢いよく木から飛び降り仲間の元へと駆けて行く。


 「さて、休憩は終わりだな」


 アダンは顔をしかめながら粥をかきこむと音のする方へと向かった。

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