第40話
「入り口付近のやつらはやられたな」
「どうする?」
「どうするも糞もない。ここで待って来た敵を殺す。ただそれだけさ」
頭の部屋の前に立っている二人は抜き放った剣を握りしめ姿を見せない敵を今や遅しと待っていた。
ここが最後の砦、自分たちの出番がないことを祈りつつも先に行ったきり帰ってこない仲間がどうなったのかを想像し震えている。
「なあ、これが済んだら二人で飯に行こう。うんと高い飯を食おう。そんでいい女も好きなだけ抱こう。金玉が痛くなるまでな」
「それはいいな。付き合うぞ」
「へへっ」
「ははっ」
お互いに向かい合い顔を合わせ声を出して笑った。
目の前にいるこいつとならどんな苦難も乗り越えられる。
そんな気がしていた。
「はい」
「はえ?」
「は?」
笑っていた二人は同時に素っ頓狂な声をあげた。
そして後頭部に感じる体温。
急速に壁へと近づいていく二人の顔……
「「ほげぁッ!?」」
二人は何者かに後頭部を掴まれた後、力任せに顔面を壁へと叩きつけられたのだった。
「う……ああ……」
顔から血を流しながらその場に倒れる二人。
それを冷たく見下ろすのはくしゃくしゃの黒髪の青年。
アダンの姿がそこにはあった。
「………………」
二人が動かなくなったのを確認してから部屋の扉を開ける。
「よう。呼ばれたから来たぞ。俺の連れが世話になったな」
目的の人物は簡単に見つかった。
こちらに背を向け立っている頭がそれだ。
「いやいや、こちらこそ。楽しい食事だったよ」
話をしながら、アダンは音をたてることなくがら空きの背中に向かって突進していく。
手には鈍く輝く大振りの短剣が握られていた。
「本当に……久しぶりだ。アダンよォ」
短剣が背中を突き刺す寸前……
その言葉にアダンは手を止めた。
「……誰なんだ?お前」
「おいおい、もう忘れたのか?俺だよ俺ェ」
陽気にいいながら、彼はその顔をアダンに向けた。
「……ば、バレリオ!?」
「ようアダン。もう一度言うぞ。久しぶりだ」
向けられた顔を見て驚愕した。
バレリオという彼はアダンとは旧知の仲。
「なんでお前がここに……俺の連れは?殺したのか?」
我を取り戻したアダン。
マブトの事を思い出した。
「殺す?なんでだ?」
「俺を誘き寄せるために拉致しただろうが!」
「……アダンよ、お前も目が曇ったなァ」
彼は部屋の隅の席を顎で指した。
「………………マブト、お前」
「もがもが……」
そこには口一杯、栗鼠が如く頬袋をパンパンにしたマブトが食事しながら座っていた。
「さァて、飯が足りないな。おうお前らとっとと持ってこい!!」
呆れるアダン、きょとんとしたマブト、陽気に笑うバレリオと怒り狂った彼の仲間達……
混沌とした場所が出来上がった瞬間であった。
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