第37話
「たすけてくれてありがとう」
馬を止めて矢を撃ってきた二人の所へと歩いていく。
「助けてやったわけじゃない。俺たちの飯を返してもらいたいだけだ」
「め、飯?」
「ほれ」
アダンは馬に踏み散らされて無残な姿になった兎を出した。
「……ごめんなさい。補填はするわ」
「ああ、頼む」
「おお!近くでみると結構可愛いお嬢ちゃんだな!で?お嬢ちゃんなんで追いかけまわされてたんだ?」
「……さあ?私自身もよくわからないわ」
「……まあいいか、で?あんたの家は?」
「馬を走らせればすぐにつくから。付いてきて」
「あいよ」
「アダンだ。こっちはマブト」
「よろしくね。私はサンドラ」
「まさかこんなでかい家とはな……」
アダン達は連れられ彼女の住むという大きな屋敷へとたどり着いた。
「我々は硝子の生産で財を成した一族でしてね。この街も硝子に関する産業でかなり潤っています」
「なるほどな。で?あの娘はなんで襲われてたんだ?」
中に入りだされた豪華な食事にたじろぎながら家の主であるサンドラの父に話しかけてみる。
とても落ち着かない、周りにいる執事や使用人は常に笑顔でこちらを見ていて『なにか用ですか?』とでもいいたげだ。
「お話をする前に一つ。アダン・ルー。貴方は『薬の番人』ですな?」
「……よくご存じで」
「私も証人として各地を渡り歩いております。情報は普通の人間より仕入れるのですよ。特に危険人物の情報は」
「ちょっと失礼じゃないか?アダンは確かに元は悪党だったかもしれんが」
言い方が気に障ったのだろう、不機嫌そうにマブトはそう言った。
「マブト、いい」
「けどよ」
「申し訳ない。ですがあれは私の一人娘。危険なことに巻き込みたくはないのです」
「ならなんで一人で外出させたんだ?」
「恥ずかしながら娘はとてもお転婆でして。今日も勝手に出て行ったのです。普段からああでして男ならどれだけ良かったかと思うほどです」
「なるほどな」
「今日はごゆるりとここで休まれると良い。おい、用意を」
「いやいい。俺たちは飯をもらいに来ただけだ」
「ふむ……とはいえこのままお帰しするのは我が家の名折れ。こちらをお持ちください」
そう言うと彼は小袋を置いた。
中身は恐らく金銭だろうが……
「少ないですが」
「頂こう」
(金を握らせたんだから縁を切れという意味だろうな。多分)
「では失礼」
「本日はどうも娘を助けていただきありがとうございました」
「にしてもにぎやかな街だな。歩いてる人間も結構身なりがいい奴ばかりだ」
「だな」
硝子の街はもう深夜だというのに灯りが落ちることなくとても賑わいを見せていた。
「硝子もそうだけど炭鉱もあるからね」
「ほう?」
宿屋の店主が毛布を持ってきた。
「アーロンさんのとこに行ってたんだろ?あの人達が作り出す硝子は国で生産される全体で4割以上にもなる」
「あいつアーロンっていうのか。そりゃ儲かるわけだ」
「なぁおっちゃん。どっかに娼館はない?」
「マブト?」
「ああ、店出て適当に歩いてみろ。それっぽい場所なら山ほどある」
「可愛い子いる?」
「いるさ。皆金持ってるんだ。不細工なんざ抱きたがらないからな」
「マブト?」
「ちょっと行ってくる」
「ま、マブト!!」
「さて、何処にするか。おお!めちゃくちゃ良い子いるじゃないか!」
宿を出て暫く娼館を物色しているマブト。
これだと決めて真っすぐ入ろうとしたところ……
「え?」
彼は突然数人の男たちに囲まれた。
そして男たちの一人が口を開いた。
「来てもらうぞ」
読んで頂きありがとうございます。
下の☆を押して評価をお願い致します。




