第32話
「なんだここ……」
門をくぐって見たのは想像を絶する光景。
階段に寝っ転がって文字通り酒を浴びるように飲む女。
理由が皆目見当つかないが豚小屋に頭から突っ込んでいる汚い男。
そこら中に散乱する生ごみや死体の数々。
そしてなにより異常なのがその状態に住民たちは誰も何も言わない事だろう。
「いくら何でもひどすぎるだろ!?何だここ!?」
「あまりでかい声出すな。注目を浴びるのはいいことじゃない」
「わ、分かってるけどよ……」
「行くぞ。あの店だ」
アダンが指さすのはボロボロの看板が出ている店、消えかけの文字を見るに雑貨屋のようだが……
正直営業しているのか怪しいが。
「早く来い」
「あ、ああ」
「「うわぁ……」」
二人そろってため息が出た。
腐った果物のような目が痛くなるほど強烈な臭いが充満している。
来ている客も顔に大きな傷がある傭兵崩れに見える人間や痩せぎすで歯が全て抜け落ちた不気味な風貌の男……などおおよそまともな人間には見えない。
「よそ者が何の用だ?ああ?」
これが店の主の第一声である。
おおよそ人をもてなすような態度と声ではない。
「旅をしててな。食料と水を補給しに来た」
「っへ。てめぇに売る物なんざねぇよ。消え失せろ」
そう言って店主は手払いをしてきた。
周りの人間も嫌悪も露わな表情でとてもじゃないが歓迎をしている雰囲気ではない。
「帰るか」
「ああ……」
二軒目
「売り物なんざないよ」
三軒目
「帰れ」
四軒目
「売らねぇよ阿保」
「どーなってんだよ畜生め……」
夕暮れ時に二人は項垂れながら壊れかけた樽に腰掛けていた。
色々な店を回ってみたが、どこもかしこも物を売ってくれる店はない。
そのついでに村を見て回っていたが見れば見るほど酷い有様だ。
異臭を放つ肉を平然と売買する人間もいれば真っ昼間から売春婦がうろついている。
「掃き溜めだな。まるでここは」
「まあそうだな。昔と何も変わってない」
「さっきから気になってたんだけどよ。アダンちゃん」
「なんだ?」
「アダンちゃんはここに来たことあるのか?」
「まあな。組織の人間として。子供を連れて行くのに一度だけ来た」
「子供を?何でだ?」
「組織が経営している孤児院があってな。売春婦が産んだ身寄りのない子供を表向きは保護ってことで連れて行っていた」
「ほう?」
「けど裏じゃ子供を洗脳して兵隊にしたり、そのまま奴隷にして売ったりしてやがったんだ」
「……くそったれだな」
「ああ、そしてそれの加担してたのが……この俺だ」
「……そうかよ。で、どうする?このままじゃ野宿だぜ?宿もねぇし。こんな場所の近くで寝ようもんなら殺されるか身ぐるみ剝がされるのが落ちだぜ」
「仕方ない。あの場所に行くか」
「あの場所?」
アダンを先頭に歩いていくと、村から少し出たところにたどり着いた。
そこには枯れた川があり朽ちかけた人口の洞窟のようなものがある。
「なんだこれ?」
「大昔に作られた地下水道だ。今は水道としては使われてねぇけどな」
「へー」
「入るぞ」
アダンは躊躇なく入っていった。
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