第31話
「…………」
「…………」
街をでて1週間、アダンとマブトは必要最低限の言葉以外離さなくなっていた。
夜になり焚火を囲んでいる今もそれは同じ。
取れた今日の夕食である蛇の焼き加減を見ながらアダンを見る。
「……焼けたぞ」
「ああ」
黒焦げになった蛇をもらう。
だがそれは皮だけで中の身はそうでもないため食すには十分だ。
「ところでアダンちゃん。次の目的地までどんぐらいかかるんだ?」
「明日の昼には着く」
「そうか。ようやく野宿から抜け出せるぜ」
「……そうだな」
「……」
会話が続かない。
(無理も無いか……けどこいつをそのままほっといたらそれこそ駄目になっちまいそうだな)
沈み込んだ表情がずっと変わらないアダン。
マルガレットの自殺を見てからというものずっとこの調子だ。
「なあアダンちゃん。お前はこれからどうしたいんだ?」
「どう?」
「お前の言う昔の『薬の番人』って呼ばれていたころに、悪党に戻るのか?それともまっとうな人間になるのか?」
「俺は……」
「お前が自分の過去を悔いているならまっとうな人間に戻るべきだと俺は思うがな」
彼は暫く黙って考え、意を決したように口を開いた。
「まっとうな人間になる。そもそも悪党になる度胸も無いからな」
「んじゃそれにふさわしい生き方しないとな。まあまずは飯だ。ほれさっさと食え」
「ああ……ありがとうよ」
焼いた蛇を受け取りながら、彼は少しだけ笑った。
「そろそろ見えてくるぞ。マブト、金目の物は出来る限りきっちり仕舞っとけ。絶対に出すな」
「なんでだ?」
「行けばわかる。兎に角隠せ」
馬に乗りつつ、腰に付けていた財布を服の中に仕舞う。
アダンがいつも持っている革袋は固く紐を締めた。
「何があるってんだ?この先に」
道を歩いていくと、漂ってきた強烈な臭いに思わず鼻をつまんだ。
様々な物を腐敗させそれを混ぜっ返したようなとてつもなく不快な臭い……。
「なんだこれ……おえッ」
「ここで吐いてちゃ中はもっと辛いぞ」
「アダンちゃん。お前この先に何があるのか知ってるってのか?」
「ああ、知ってるさ」
一番最初に見えてきたのは村の入り口にある門とそこに吊るしあげられた蛆が沸き腐敗した死体の姿だった。
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