第30話
「大人しく殺されなさい」
恨みのこもった瞳を向けながら、マルガレットはそう言った。
「……」
一方でマブトはどうしていいのか分からずただ立ち尽くしていた。
親のかたき討ち、彼女の怒りはとても正当なものだから。
「殺すの?その男」
「な、何?」
全員がその場から動けない中、彼女の背後から聞き覚えのある声がした。
「貴女……誰?」
金色の髪を靡かせながら入ってくる女性、ヘルガだった。
「お前……」
「で、殺すの?」
「貴女に関係ないでしょう!?それとも何!?貴女もこいつの仲間なの!?」
「肯定するわ」
突然の来訪者に動揺しつつも、彼女の物言いに激昂した。
だが彼女の剣幕などお構い無し、アダンを指差し大声でまくしたてる。
「この男は私の父を殺して私を地獄に突き落とした!!殺すしかないわ!」
「地獄に落とした……その男はどちらかと言うと助けてくれた人間なのだけど」
「……どういうこと?」
「貴女の父、伯爵は組織の人間から賄賂を貰っていた。そして組織の事を密告しようとしたから消された。組織は貴女を殺すようにアダンに言ったけど彼の恩情で生かされた」
「嘘よ!!」
「そう思うなら領地があった場所に行くといい。というか足がつくかもしれないのに貴女を生かしておくと思う?」
「そ、んな……」
彼女はその場にへたりこむ。
「もう帰った方がいいわ」
魂が抜けたように歩くマルガレットを見送るとマブトは彼の手当てをし始めた。
「医者にみせないとな。にしてもそんな事があるとは……」
「嘘に決まってるでしょ?」
「はあ!?」
「賄賂なんて嘘よ。組織は動くのに邪魔だったから殺しただけ」
「……」
「で、貴方はまた生きようとしたわけね」
先ほどから黙りこくっているアダンに視線を送る。
「生きようとした?そんなの人間なら……というか生き物皆そうだろ」
「普通ならね。けどこの男は組織を裏切った時、私にこう言ったの『この先俺を殺しにくる人間がいれば、俺はそれを受け入れる』って」
「……そいつは」
「貴方は私が嘘を言ってるのも分かっていたはず。彼女にとって大事な父親の思い出まで穢すのも貴方は許した」
「……」
「なにが受け入れるよ。聞いて呆れるわ」
心底軽蔑した視線を向け、彼女は去り際に一言……
「本当に……中途半端」
吐き捨てるように言った後、彼女はその場を後にした。
「……行こうぜ。アダンちゃん」
「ああ……」
翌朝、予定よりも早く街を出ることを決めた二人。
支度をして宿を後にしようとしていた。
アダンの腹の怪我はアダンが服の下に着こんでいた革鎧のお陰か幸いにも浅く出血も止まっていた。
「……」
「……」
お互い無言のまま歩いていくと大通りに生えた一本の木に人だかりが出来ていた。
「なんだ?」
二人で人だかりの中心を見て、目を見開いた。
人だかりの中心にあったもの……
木の枝に縄をかけ首を吊ったマルガレットの姿だった。
読んでいただきありがとうございます。
下の☆を押して評価をお願い致します。




