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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
お休みの彼等 編
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第29話

 「アダンちゃーん。居るかーい?シードル買ってきたぞ。これでも飲めよ」


 温泉から少し寄り道して酒を買ってきたマブト。

 部屋の扉を叩いても返事は無かった。


 (まだへそ曲げてるのか?)


 鍵はかかっていない、というかそもそも無い為そのまま入る。

 窓際で横になっているアダンの姿。


 「アダンちゃん。そんなところで寝てたら風邪ひくぞ。って野宿で慣れてるか」


 近づいてみて、違和感に気が付いた。

 点々と血が落ちている。


 「ア……ダン?」


 恐る恐るアダンに触れてみる。

 腹から流れる血に目を奪われつつも彼の顔を見る。


 「後ろだ……」


 幸いにも彼は生きていて、目を開けてそんなことを言ってきた。


 「後ろ?」


 振り返った先に居たのは血まみれの短剣を持った白いドレスの女性。


 「ッ!!」


 「うぉッ!?」


 言葉を交わす間もなく彼女は両手で構えた短剣をこちらに向け飛び掛かり、マブトを刺し殺そうと押し倒した。


 「死になさい」


 短剣が振り下ろされる直前、何とか腕を押さえ短剣が振り下ろされるのを防ぐ。


 「待て!話をしようぜ!?可愛い子ちゃんを傷つけたくないんだ!!」


 自分がなぜ殺されそうになっているのか分からないまま目の前の女性に対して話をしようと持ち掛けたが……


 「お断りします」


 「話を聞け!!」


 彼女は全く聞く耳を持っていない。


 「お断り」


 「俺はあんたの恨み買うようなことした覚えはねぇんだよ!!」


 押し倒されたまま彼女の腹を全力で蹴り上げ、ひるんだところをすかさず顔面に拳を叩き込み抜け出した。


 「ああクソ……何なんだこのアマ」


 彼女が落とした短剣を拾い上げると、窓の外に捨て憎々し気にそう言った。

 

 「ごほッごほッ」


 激しくむせこみながら顔を押さえる彼女。


 「ろくでもない女なら何発だろうが殴れるぜ」


 「やめろ……マブト」


 拳を固めて飛び掛かろうとする彼を、アダンが止めた。


 「一体何なんだこのアマは?」


 「ろくでもない……?それはその男にかけてやる言葉でしょう?」


 血の塊を唾と一緒に床に吐きながらゆらりと立ち上がる。


 「その男はね。私の父を殺したの。組織と国の癒着を告発されそうになって邪魔だったからってね」


 「なんだと?」


 思わずアダンに視線を向けた。


 「マルガレット・ミラボー。俺が殺した伯爵の一人娘だ」


 「父を殺されてからの私は地獄を見たわ。親類に領地も爵位も取られて、財産も取られて、邪魔になった私も殺されかけて逃げて逃げて逃げてずっと逃げて……そうやってやっとここで身分も何も隠して働いてたら……貴方が来た」


 「……」


 涙を浮かべ、憎しみのこもった視線を向けてくる。

 

 「殺してやる……父の仇だもの」


 今度は拳を握りしめ、飛び掛かろうと彼女は構えた。

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