第26話
「もうちょいかい?アダンちゃん」
馬を連れて交易道を歩く二人。
芥子畑の街を出てからもう3日になる。
次の目的地である街まではまだ少し距離がある、また野宿する羽目になるだろう。
「あと1日は歩き詰めだな。そろそろ休もう。ちょうどそこに川がある」
アダンが視線を向けた先には黄色く濁った川があった。
そのまま水を飲もうものならどんな病気をもらうか分からないような物だが。
「釣りでもして飯の調達しようや」
「ああ」
「……釣れねぇ」
アダンが川に釣り糸を垂らして一匹たりとも釣れず夕方になった。
場所を変えいろいろと試行錯誤してみるが全く釣れていないのだ。
「何だまだ釣れてないのか?」
「うるさい黙ってろ」
近くにあった林と草原から野草や木の実を取ってきたマブトが呆れたような口調で呟く。
「釣りはやめて俺が取ってきたの食おうぜ」
「いや、絶対釣る」
「ったく。ちょっと借りるぞ」
そういうとマブトは荷袋の中から短剣を借りどこかに行ってしまった。
「結局何にも釣れなかった……」
「だから大人しく俺の取ってきたの食えば良かったんだ」
完全に日没を迎え虫の鳴き声が響く中で二人は焚火を囲い鍋に水と塩、それにマブトが取ってきた野草などを入れた汁物を食べていた。
大して腹は膨れず、アダンの腹からは小気味よく腹の虫が鳴いていた。
「とっとと寝ようぜ。なに明日には腹いっぱい美味い魚を食えるさ」
そう言いながらその場に寝っ転がる。
見上げた夜空は美しい満点の星空が広がっていた。
「綺麗なもんだな」
「こういう時に女でもいれば最高なんだろうが」
「マブト、お前女いるのか?国に残してきた家族は?」
「家族は居ても女はいねぇさ」
「戻りたくは無いのか?」
うーん、と上を見ながら考え込むマブト。
「どうだろうな。俺が戻っても顔も覚えてないだろうし。アダンちゃんはどうなんだ?」
「俺はどっちも居ない。だから憂いなく旅が出来る」
「そうなのか?あのヘルガとかいう女はお前の女じゃないのか?」
ヘルガの名前を出した途端、顔をしかめるアダン。
「顔が良くても御免だ。殺される」
「でも仲間だったんだろ?どんな女だったんだ?」
「総統の右腕、組織内で最も人を切り捨てた女……そんなもんか。あと感情があんまり表に出ないから何考えてるのか分からんとも言われてた」
「ほう……」
「もう寝るぞ。腹減ったまま起きてたくない」
「そうだな」
焚火はそのままに、二人は毛布をかぶって眠りについた。
うち一人はふて寝である。
朝日がのぼり、漂ってくる香ばしい匂いでアダンは目を覚ました。
「おう、起きたかアダンちゃん」
「マブト?どっから持ってきたその魚」
焚火の方を見れば枝に魚を突き刺して焼いているマブトの姿が目に入った。
口元に髭が生えている……どうやら鯰のようだ。
「あれ見ろよ」
「うん?」
得意げにマブトが指さした場所、そこには川のすぐ横に土を掘って出来た四角い穴があった。
「何だこれ?」
寝ぼけ眼をこすりながら穴のそばまで行くと水面に向かって木の皮を剝いだものが筒状に丸められて5本ほど伸びている。
そして穴の中には数匹の鯰と蟹の姿……
「罠か?」
「ああそうだ。鯰の習性を利用して作るもんだ」
「お前にそんな知識があったとはな」
「アダンちゃんも罠は張るだろ?相手がどんな場所を通るか、何処に仕掛ければうまくかかるか考えてな」
「まあな」
「これも一緒さ。昨日みたいに闇雲に釣り糸垂らせばいいってもんじゃない」
得意そうに語るマブトに対し、何も言い返せないアダンだった。
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