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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
お休みの彼等 編
28/78

第27話

 「着いたな」


 「ああ」


 目の前に広がるのはそこかしこから湯気が立ち上る温泉街。

 色々なところから硫黄の臭いが漂ってくる。


 「士爵殿から多少金は貰ってる。2日3日はここで休むぞ」


 「本当か?よし!」


 旅の疲れはどこへやら、一目散に温泉街に走っていくマブト。


 「おいおい。少し待てよ」


 その背を呆れながら追いかけるアダンだった。






 「にしても結構な額貰ったんだな。士爵殿からは」


 「まあな」


 夜になるまでひとしきり楽しんだ後、二人は宿屋でくつろいでいた。

 温泉につかり垢という垢を落としすっきりした二人。

 手元にはここに来るまでに買った葡萄酒の瓶が握られている。

 

 「地図と一緒に結構な額入れてくれていた。具体的な額は言えんがな」


 「いくらかくれよ」


 「ああ勿論」


 いくらかの銀貨と銅貨を渡し、酒を呷る。

 さして酒精は強くは無いが、酔うには十分だ。


 「お客さん。裏山の温泉は入ったかい?」


 「裏山?」


 毛布を持ってきた宿の主人が尋ねてきた。

 

 「裏山に傷に効く温泉があるんだよ。良けりゃあ行ってくるといい」


 「温泉か……今日はしこたま入ったしな。どうするか」


 「行こうぜ。どうせ全部は回れないんだ。時間があるうちに入ったほうがいい」


 「……それもそうか」


 「裏に回って道なりに行くといい。一本道だから迷うことも無い」


 「行くぞー。アダンちゃん」


 




 「結構歩くな。周り殆ど森だぜ?」


 「まあ手入れはきっちりされてるな。下草も綺麗に刈られてる」


 松明片手に歩いていく二人。

 道も石畳で整備されていてとても歩きやすい。


 「お、見えてきたな。あれか」


 「おおー。なかなかいい雰囲気じゃないのよ」


 湯気といくつかの松明が掲げられた場所が見えてきた。


 「んじゃ早速入ろうぜ」


 「ああ」



 


 その頃、宿屋では……

 

 「あ。そういや女の人入ってるんだった。……まいっか」






 「星空も見えて、静かで、丁度いい湯。いいなここ」


 「そうだな」


 「そうね」


 服を脱いで湯につかっている二人。

 不意に聞こえた女性の声に驚愕しつつも思わず声の主を探してしまう。


 「え?」


 「誰だ?」


 アダン達が居る温泉は中心に大きな岩があり、その裏が死角になっている。

 そしてその死角にいたのが……


 「へ、ヘルガ」


 「嘘ぉ」


 流れるような白金の髪と松明に照らされ爛々と輝く蒼い瞳……

 温泉の淵に腰掛け裸体を晒しながら酒を飲んでいるヘルガの姿だった。


 「こんばんわ。アダン」


 「……こんばんわ」


 頭が痛い。

 そして互いに見つめ合ったまま、たっぷり数呼吸分の時間が流れた。


 「あのー……せめて何か羽織るとか、それが駄目なら湯船に入るとか……しない?」


 気まずさと目のやり場に困ったマブトは彼女に向かって申し訳なさそうに提案した。


 「……」


 (あ、入るんだ)


 言う事を素直に聞いて湯船に浸かった。


 「何してるんだ?こんなところで?」

 

 「あ、分かったぞ!いつぞやアダンにやられた傷が痛むんだろ!!」


 「……」


 「ごめんなさい」


 「まあ、何はともあれここに居る間は休戦しよう。こんなところで殺人なんて起きれば他の店の売り上げにも響くだろうしな」


 「……ええ」


 彼女は再び酒を呷った。

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