第25話
「てめぇの仕業か!!」
額に冷や汗をにじませながら、燃え盛る小屋の中から子供たちを連れ出したマブト。
それに気付いた男達は烈火の如く怒り狂いマブトの方へと駆け寄ろうとした。
「出番だ!」
「何!?」
マブトの声に、待っていましたとばかりに風を切る音と共に飛び込んでくる複数の矢。
「クソッ!!どっから撃ってきてんだ!?」
左手に矢を受けた男が悲鳴を上げた。
「糞が……!!」
歯噛みする彼ら。
だが視線を周囲に向けると、彼らの表情が一変した。
「は、ははっ!!お前らがもたもたしてるから援軍が来たぞ!!」
「あん?」
森の茂みから姿を現す複数の影。
剣や鉈で武装した人間達10数名がマブト達を睨んでいた……
「おいおい……」
背中に背負っていた弓を構えるマブト。
「お前はもう終わりだ」
「それはどうかな?」
「なんだ……がッ!?」
負傷しすでに殆ど戦えない状態になっている男に鉄槌のような拳が飛んできた。
「アダン!?作戦と違うぞ!!」
「ああすまん」
彼らの背後から音もなく現れたのはアダン。
燃える小屋の炎に照らされた彼の顔はどうしようもなく邪悪な笑顔を浮かべている。
彼の顔を見慣れたマブトですら身震いしそうなほどだ。
「アダン……それにその面……『薬の番人』かッ!!」
「おいお前等!!やっちまえ!!」
罠など気にせず武器を構えて一斉にアダン達目掛けて襲い掛かってくる怒り狂った男達……
「今日ばかりは俺の負けだな。してやられた」
「言ってる場合か!?」
向かい来る男たちに弓で狙いを付けるマブト。
だがつがえた矢が放たれることは無かった。
「突撃ィィィィィィィッ!!」
天まで届けと言わんばかりのとてつもない声量の号令。
呆気にとられるマブトをよそに森の中から革鎧に身を包んだ集団が現れた。
彼らは槍を構え突進し、男たちの腹を深々と抉り、突き刺し、まるで羊を追う猟犬のように追い回して蹂躙していく。
「はてこれはどうしたことだ?近隣住民から森で火事が起きていると聞きつけ来てみればなんだこれは、芥子畑ではないか。いやいや驚いた」
わざとらしい口調で喋りながらアダン達の所へやってくる一騎の騎馬。
上に乗っているのは……
「遅かったですな。アルチュール士爵殿」
シードル騎士団の団長……アルチュールの姿がそこにはあった。
「え?は?どういうこと?」
「俺達を信用しちゃいなかったのさ。士爵殿は」
困惑するマブトの為に、アルチュールは説明を始めた。
「別に信用してなかったわけではない」
「士爵殿は俺達を騎士団が出張る口実にしたかったのさ。だから先に俺達を行かせた」
「えぇ……」
「で、売人が働かせていた子供達というのは君たちか」
士爵が馬を降り近づこうとするのを、マブトが止めた。
「安心してくれ。危害は加えない。元々、その子供たちを助けたくてこうしているのだから」
「本当だろうな?」
恐る恐る道を譲った。
そして彼はおびえる子供のそばまで歩み寄ると膝を付いて子供を優しく抱く。
「すまない……もっと早く来れていれば」
暫く抱き合っていると、やがて男たちの悲鳴も聞こえなくなり、元の静かな夜に戻っていった。
「フンフンフーン」
全てが終わった翌日の正午、士爵は伯爵に呼び出され彼の待つ館へと来ていた。
辺境の田舎貴族にしてはかなり豪華な館、使用人を何人も抱えている。
そんな場所を上機嫌に鼻歌混じりで歩いていた。
「入ります」
扉を開けて伯爵の居る部屋へと入った彼。
中も金細工の施された家具などが並ぶとても豪華な造り。
「アルチュール……貴様何のつもりだ!?」
アルチュールが部屋に入るなり、中に居た伯爵は怒り狂った。
「お呼びですかな?『何のつもり』はて?なんのことでしょうな?」
とぼけた表情と口調の彼。
「あの組織には手を出すなと言っておいたはずだ!なのに貴様は!!」
「いえいえ、手など出しておりません」
「貴様が先日兵を引き連れて森に入ったことは知っているんだぞ!!」
「ああ、確かに森に入りましたな。火事の火消しの為に」
いつまでもとぼけている彼についに痺れを切らし、伯爵は酒瓶を投げつけてきた。
と言っても狙いが悪すぎてかすりもしていないが。
「あれが伯爵の仰られていた例の畑だったのですか。いやはや分かりませんでした」
「ふざけるな!!」
「そうは言われましても……ああそうだ。燃え跡から複数人の遺体が見つかっています。我々が到着した時には既に全員『焼死』していました」
「ええいもうよいわ!!おい貴様等!!こいつを逮捕しろ!反逆罪だ!!」
後ろに控えていた兵士にそう吠えるが……
「な、何だ貴様等!?どういう事だ?」
兵士は示し会わせたかのように伯爵に縄をかけた。
「言い忘れておりましたなぁ。いや見せ忘れたか」
縛られ床に転がされた伯爵に近づき、アルチュールは一枚の紙を見せた。
「国王陛下の命令書です。貴方を逮捕せよと。ここに直筆のサインもある」
「ば、馬鹿な……貴様ごときが陛下に謁見するなど……」
「小汚い薬を民にばら蒔き、子供を使ったその罪。さてどう償うのですかな?では」
「待て!!アルチュール!!アルチュール!!」
鬱陶しい声を無視して部屋の外へ出ると、士爵は晴れやかな笑顔で拍手をして待っている騎士団の所へ歩いていった。
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