第24話
虫と獣の鳴き声が響く夜……
芥子畑の上には雲の切れ間に三日月が浮かんでいた。
「……」
「……ッチ」
畑の小屋、そこに集められた子供達は監視役の男5人に見られながら怯えて食事をしていた。
今日の献立はというと大鍋に入った具の無い汁物が一つ、それを10人程の子供が分け合っている。
とても悲惨な食事風景……
「おい。そういや小便に行ったあいつ。いつまで外にいるんだ?」
「さあな」
男たちは賭け事をしている。
硬貨を投げて裏か表を賭けるというものだ。
そして次の賭けをしようとしていた矢先に、それは起きた。
「ギャアアアアアアアアアア!!」
「ああ!?」
「おい、外に出てった奴だ!」
小屋の外から仲間の悲鳴が聞こえ、男たちが一斉に外に視線を向ける。
「ッチ。ちょっと外見てくる。お前らそいつ見張っとけ」
「ああ」
「エド!!おいエド!!何処にいる!?」
松明を使って畑を照らしながら仲間を探す男。
だが仲間の姿は何処にも見えない。
見えるのは揺れる芥子のみだ。
「何処に行きやがったんだ……」
警戒しながら畑の中を歩き回っていると足元に違和感を感じた。
「あ?がッ!?」
足元から黒い影が現れ、短い悲鳴と共に男を暗い畑の中に引きずり込んだ。
「おそいな。あの野郎」
「まさか子爵の野郎の仕業か?あいつは俺達を嗅ぎまわってたはずだ」
「そりゃないだろ。こういう時のためにあのくそったれ伯爵に賄賂渡してるんだ。あいつは手を出せないはずだ」
「じゃあ誰が……」
「おい、武器寄越せ。全員出るぞ」
「何でだよ」
「狩られてるんだよ!何処のどいつか知らないがな。こうなりゃやられる前にやる。灯りは消せ」
小屋の灯りを消し、幅の広い鉈を構えながら恐る恐る外へと出る男達。
いつも通りの静かな場所のはずだったが、今の男たちにとってはとても居心地が悪い。
(……何処にいやがる)
辺りを注意深く探す。
畑、周りの茂み、崖の上……
だが出て行った仲間の姿も、それを探しに行った者の姿も見えない。
「おい、罠があるぞ」
「ああ?」
隣に居た仲間が耳打ちしてきた。
畑の手前、そこに何かを掘ったような跡が見えている。
「落とし穴か……そっちにもあるな」
「ついでに縄もあるぞ。触れたら音が鳴る奴だ」
「罠まみれだな。下に注意して動け」
罠を避けつつ歩みを進めて行く。
すると……
「た、助けてくれ……」
畑の中からか細い声が聞こえてきた。
「中に居るぞ。どうする?」
「わざわざ罠張ってくるような奴だ。行かないに決まってるだろ」
「俺は行くぞ」
「おい!!」
他の仲間が止めるのも聞かず進んでいく彼、足元に注意して進んでいく。
通りやすそうな地面にはほぼ確実と言ってもいいほど罠が置いてあった。
「いたぞ……おい!生きてるか!?」
声のする場所まで来た彼。
うつぶせで転がされている人間が2体、間違いなく居なくなった仲間だ。
彼は駆け寄り、仲間の上半身を抱え上げると……
「ギャアアッ!?」
抱え上げようとした男の腕が突然動き、突き出された木の杭が彼の左目を深々と抉った。
「ああああッ、目、目がッ」
「大丈夫か!!ええいクソッ!!」
畑から立ち上がり、仲間がいる方向とは明後日の方向に走っていく人影。
仲間に化けていた人間がいたのだ。
「追え!早くしろ!!」
「待ちやがれ!!」
見通しの悪い夜な上に明かりも持っていないにも関わらず、その人間はまるで昼間のよく手入れされた道を歩くように颯爽と駆け抜けていった。
「野郎……よくも仲間を」
「おい、何か焦げ臭くないか?」
「ああ?」
心なしか自分たちの後ろが明るい。
その場にいる全員が振り返った。
「火事!?」
「くそったれ!!そもそも誘い出すのが狙いか!!」
先ほどまで自分達が居たはずの小屋。
そこから火の手が上がっていた。
「ん?おい誰かいるぞ!!」
燃え盛る小屋のすぐ脇、小屋に居た子供達を引きつれどこかに行こうとしている人間。
「あら、バレた」
暗闇に紛れる黒褐色の肌の男……
マブトの姿がそこにあった。
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