第21話
「……頼めるか?」
眉間に皺を寄せながら士爵はそう言った。
阿片を売りさばく売人を始末してほしいという依頼。
地図の代価には釣り合わないが……
「予想される売人の数は?」
「確認されているのはおよそ20名、末端まで数えれば恐らく百名を超えるだろうが……」
思わず眉をひそめる。
「それだけの規模ならば私ではなく、貴方自身の私兵を動かした方が確実に片付くと思いますが……なぜ私を?」
アダンを殺そうとしているのか?
「説明をしたいが……アダン君。すまないが来てもらえるか?大丈夫、悪いようにはしない」
「いいでしょう」
「え?行くの?アダンちゃん?」
「ああ」
アダン達は士爵に案内されるまま、町の中にある一つの建物へと入った。
汗臭い部屋の中に居るのは筋骨隆々の屈強な男達、剣や鎧の手入れをしている者やどこかの婦人の悩みを聞いている者もいる。
「ようこそ、シードル騎士団へ」
「アルチュール様、彼らが例の?」
「ああそうだ」
男たちの中の一人、副官と思われる眼帯の男が士爵に話しかけてきた。
「……誰も入れさせるな」
「承知しました」
「こっちに」
彼は奥の部屋にアダンとマブトを招き入れ、扉を閉めた。
机が一つ、それと丸太を切っただけの椅子がいくつか置いてあるだけの質素な部屋だ。
「あまり大っぴらに話せないこともあるのでな」
「で、理由と言うのは?」
「うむ。率直に言って我々は動けないのだ。圧力をかけられている」
「誰に?」
「伯爵、この地を納める領主だ。どうやら賄賂を大量にもらっているようでな。我々が動こうとした矢先に圧力をかけられた」
「…………」
腐っている、アダンはそう思った。
私腹を肥やし、権力で無理矢理捩じ伏せる。
阿片が領民にもたらす害など一切考えていないのだろう。
「このまま放置すればこの地は荒れ果ててしまう!アダン君頼む。情報も武器も提供する!地図以外で報酬金も出す!」
目に涙を浮かべながら、彼は深々と頭を下げた。
「わかりました。お受けします」
「ありがとう!」
(薬絡みなら元々受けるつもりだったが……)
まだ見ぬ薬の売人と伯爵を想像し、アダンは歯噛みした。
「ところでアダン君。彼は?お仲間が居るとは聞いていなかったが」
彼はマブトの方を見ながら言った。
先ほどからちらちら見ているのをアダンは知っていたが……
「私を賞金欲しさに売ろうとして失敗し付いてきた男です」
「あらやだひどい言い方」
「事実だろ」
士爵は一気に怪訝そうな顔になった。
「……マブト君、と言ったか。一応言っておくが彼にかけられた賞金は彼を敵視する組織がかけたものだ。彼を殺すのに成功しても下手すれば賞金を受け取りに行った瞬間殺されるぞ」
「え?そうなの?」
「アダン君はもう裁きを受けた後、今はただの一般人だよ。さて、昼食にしよう。君達もどうぞ」
「ではありがたく」
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