第20話
さて、『汚名の笛』という懲罰用の器具がある。
それは首輪と笛が一体となったような物で、輪になっている部分に首をはめたあと指を笛に付いている穴に固定して大衆に晒すというものだ。
なぜこんな説明をしているのか?
「いやああああああああ!!」
「このへたくそ!!」
「やめちまえクソッタレが!!」
「生卵持ってこい!」
よく晴れた正午、街中でマブトが今それをされているからだ。
町に到着した彼は金儲けのために大通りで笛を吹いていたのだがそれはそれは酷い音を出し、激昂した住民が『汚名の笛』をマブトに課した。
「アダンちゃん!!助けてくれ!!あ、痛ってぇ!!」
「もう暫くそうしてろ下手糞。『笛で稼いでやるぜ』なんていうからどんなものかと思えば」
腐った野菜や卵をぶつけられながらマブトは叫ぶ。
だがアダンは素知らぬ顔。
住民による罰は暫く続いた。
「ううっ、酷いよぉアダンちゃん」
「お前はなんであんな自信満々に吹いたんだ……」
解放されたマブトはアダンと共に町の集会場までやってきていた。
木の机に涙を浮かべながらうなだれる彼は見ていてとても気の毒に思える。
「終わったら酒でも奢ってやるから。少しは元気出せ」
「うん、ありがとう」
今二人はとある人物を待っている。
地図を更新する為、地理に詳しい人物を呼んでいるのだ。
アダンが所持している地図はどうやら古く、道などもかなり違っていた為更新する必要があった。
なので地理に詳しい人間をたずねてきたのだが……
「あの人じゃない?」
「うん……?」
集会場でこちらに向かって歩いてくる初老の男性が一人。
彼は他の住民よりもいい服を着ていて、通りがかった人が一様にお辞儀をしている。
「地図が欲しいというのは君達だね?」
「ええそうです」
「ああ自己紹介していなかった。私はアルチュール士爵だ」
「どうも、アダンです」
「マブトです」
(士爵……騎士か何かか?)
深い皺がいくつも顔に刻まれた彼は少しの間躊躇したあと、口を開いた。
「君が……『薬の番人』か」
「……知っておられたのですね」
「君がこの国に入った時に情報も出回っていたからね。まあそれは良い。地図の件だが渡しても構わない、だが条件がある」
「条件?」
「そうだ。実はこの街でこれが出回っている」
そう言うと彼は懐から茶色い塊を出した。
木の樹液が固まった物のようにもみえるが……
「これは『阿片』ですか……」
彼は大きく頷いた。
阿片、芥子の実から採取した汁を乾燥させた薬の一種だ。
「医療用で処方されることもあるが、これは明らかに違法だ。何処かから運んできてここで売りさばいている。君にはこれの犯人を始末してもらいたい」
忌々しそうに阿片を見ながら、彼はそう言った。
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