第13話
「……マブト、帰るぞ」
「え?おおい待てって」
ヘルガが来た途端、あからさまに顔をしからめ不機嫌になったアダン。
彼は財布から金を出すと机の上に置いて彼女とは視線を合わせることすらなく帰ってしまった。
「あ、えーと……また会おうね。美人のお姉さん」
「…………」
「おいどうしたんだよ?知り合いなんだろ?話でもすりゃいいじゃないか。もしくはあの美人さん俺に紹介しろ」
店を出ていくアダンを急いで追いかけるマブト。
彼の正面まで来て顔をみるととても険しい顔をしていた。
「お前、見えなかったのか?」
「おいおい何がだ?頼むから説明してくれ色々。そんでさっき確か『薬の番人』とか言ってたがあれはお前の異名なんだろ?」
「いいや違う。正確に言うと俺達の異名だ」
「俺達?」
「ああもういいから行くぞ。兎に角あいつには関わっちゃだめだ」
そう言って歩く速度を上げるアダン。
そんな彼はどうにも焦っているようだった。
「ったく……説明はしてもらうぞ」
「いずれはな」
「どっかで飲みなおそうぜ。この通り金も手に入ったし」
ぱんぱんと笑顔で財布を叩くマブト。
「阿保か、旅に必要になる路銀使い切る気か」
いいじゃないか、そう言うマブトを無視して進む彼。
「明日も仕事だ。とりあえず泊まれる場所を探す……ん?」
「今度はどうした?」
人ごみの中、アダンが視線を向けるのは一本の狭い路地。
二人の男女が掴み合いの喧嘩をしていた。
「何だよ、ただの痴話喧嘩だろ?行こうぜ」
「あ、ああ……」
その日の夜、事件が起きた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
耳をつんざくような女性の悲鳴でアダンとマブトは飛び起きた。
「な、何だ?」
「大通りの方からだ!」
全く迷いなく、アダンは泊まっていた馬小屋を抜け悲鳴の聞こえた場所へと走った。
「おい待て!!アダン!!ああ糞!!」
恐らく悲鳴の発生源と思われる場所にはすでに人だかりが出来ていた。
そしてその人だかりの中心には……
(返り血か……?こっちは無事だ。けど……)
返り血と思われるものを頭から被り、その場に座り込んで震えている女性と……
「な、何だこの死に方……」
女性と対面になるようにもう一つ。
肩から脇腹まで一直線に斬られた斬殺死体がそこにはあった。
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