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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
美しき番人 編
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第14話

 「大丈夫か?」


 大通りで起きた殺人事件。

 死体の方は自警団が駆けつけ回収していった。

 残されたのは血まみれの女性だけ……


 (この女、さっき男と喧嘩してた奴だな。男は男で喧嘩相手か)


 「…………」


 「殺した奴の顔は見たか?特徴とかは?」


 震えながら佇む彼女に恐る恐る聞いてみた。

 殺しを実行したのは通り魔の可能性もあったが、アダンの頭にあったのは一つの可能性だけ。


 「……女の人でした。剣で、き、切っ先の無い……処刑人が使うような剣で彼を……」


 震える唇で彼女はそう答えた。


 「……そうか、ありがとう」


 「おいアダン。それ以上聞くのはやめてやれ」


 「ああ、分かってる。送ろう、家は何処に?」


 「ここから北に少し行った所に……」


 「マブト、行くぞ」

 

 「あいよ」


 女性を連れて行こうとしたとき、すれ違いざまに聞こえた言葉……

 集まっていた野次馬達は口々にこう言っていた。


 「あいつなら仕方ねぇな。殺されても」


 「女泣かせに泣かせてきたからね。恨まれても仕方ない」


 「借金も大概だったぞ?なんなら俺も借してた。金は戻って来ねぇな」


 「ざまあ見やがれ糞野郎が」


 




 「……ありがとうございました」


 彼女を家まで送る最中、よほど怖かったのだろう青い顔をしながらずっと震えていた。


 「なあ、殺された男と一体どういう関係だったんだ?」


 「やめろって言っただろうアダン!お前人の気持ち分からねぇのか!?」


 質問しようとしたところでマブトが激昂した。


 「あの人とは……恋仲でした、けど彼が浮気してそれで……喧嘩して、あの人の子供もいるのに帰っても来ないから……う、ううっ」


 「もういいよ。休んだ方がいい」


 話を進めていくと彼女は泣き出してしまった。


 「じゃ、俺達行くから。戸締りはしっかりしなよ」


 マブトの言葉に彼女は顔を伏せたまま頷いた。






 「この馬鹿野郎!!」


 彼女の家から泊っている馬小屋まで帰る道中、アダンはマブトに加減無しで殴られた。

 そこは大通りから離れている上に人通りは皆無、彼女の家からも離れている。

 怒鳴り声が聞こえてしまうことは無い。


 「人の気持ち考えろ!!あんなことがあった後に糞みてぇな質問なんざするな!!」


 「……すまん」


 「その言葉はあの子に言え。ったく」


 「確信が持てた」


 「何のだ?」


 再び拳を握りしめながらアダンを見る彼。

 下手なこと言えばもう一度殴る、そう顔に書いてあった。


 「やった奴に心当たりがあるのさ」


 「誰だ?」

 

 「女で切っ先の無い剣、加えて肩から一直線に切り捨てる実力者。そんな奴そうはいない。だろう?ヘルガ?」


 苦い顔をしながら振り返る。

 そしてそこには……


 「よく気付いたわね。アダン」


 音も無く建物の影から現れる人影。

 片手に血の付いた剣を携えた美しい女性、ヘルガの姿がそこにはあった。


 

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