第11話
「いつの間に回り込んでたんだ?驚くじゃないか」
背後を取られていたことに気が付いたマブトが額に汗を滲ませながら言った。
「いつの間に密告してたんだ?驚くじゃないか」
「へっへっへ。誰でも楽して稼ぎたいだろ?俺は目の前にそうやって稼ぐ手段があったからそうした。ただそれだけだ」
「そうか……一応答えを聞こうか。俺の荷物を返すか、死ぬか。どちらがいい?」
「どっちもお断りだ。相手になってやる!!かかってきやがれ!!」
アダンから奪った剣を両手で構えながら、彼はそう叫んだ。
ここで降参しても殺される、そう思っての行動だった。
数分後……
「こ、こんははふひゃ……」
「何て?」
マブトが持っていた荷物を調べていると顔面を痛々しく腫らした彼が地面に倒れながら何やら呻いている。
結果から言って、彼はアダンに手も足も出なかった。
奪った剣はあっさり躱され、倒され、馬乗りになって10発ほど殴られてあっさり撃沈、子供の喧嘩よりも早く終わった。
「じゃあな」
「ふ、ふぁんで……?」
「うん?」
「ふぁんでひかふ?」
「……何て?」
全然聞き取れない。
彼は倒れたまま、ずれていた顎をなんとか直すともう一度言った。
「なんで、俺を生かす?」
「荷物が全部あったからな、一つでも失くしたら命は無かったが」
ようやく彼の言いたいことを理解できた。
彼は荷物を背負い暗い道を歩きはじめ、やがて完全にマブトの前から姿を消した。
「やれやれ、とんだ災難だったな」
何も無い道を歩き続けるアダン。
村を出て暫く、夜明けを迎えていた。
鳥の鳴き声が聞こえ始め少しだけではあるものの気分が安らいだ。
「次は……鉱山都市か。そこで日雇いの仕事でも探すか」
昨日まで居た村で財布の金も底をついた。
何かしら仕事をして稼がなければやっていけない。
「ん?」
空になった財布を眺めながら歩いていると何やら物音が聞こえてくる。
(馬……?)
馬が走る音だった。
ゆっくり後ろを振り返ると人を乗せた馬が一機、全速力でこちらに近づいて来ている。
そして馬の背に乗っている人間には見覚えがあった。
「マブト!?」
黒褐色の肌とぼこぼこになった顔の青年、マブトの姿がそこにはあった。
彼はアダンの前で馬を止めると焦った様子でこう言った。
「乗れ!!早く!」
「なんのつもりだ!?また俺をはめるつもりか?」
「違うっての!!後ろ見やがれ後ろ!!」
「ああ?後ろ?」
マブトが自分の後ろを指さし、つられてアダンもそちらを見る。
すると……
「アダン!!いい子だからこっちにおいで!!」
「賞金首だ逃がすな!!」
「嘘つきもいるぞ!狩れ狩れ!」
「ヒャッハー!!」
馬に乗った男達数十名がアダンのいる場所目指して走ってきているではないか。
「いいいいいい!?」
「俺も追われてる!乗れ!逃げるぞ早く!!」
「お前どれだけ誘いかけたんだ!こん畜生め!!」
顔面蒼白になりながら慌てて馬に乗るアダン。
マブトはそれを確認すると全速力で馬を走らせた。
「いいいいいいいやああああああああああああああ!!」
「楽して稼ぎたかっただけなのにいいいいいいいいいいいいいい!!」
二人仲良く、追手が居なくなるまで走り続けましたとさ。
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