第10話
夜も更けてきたころ、アダンは唐突に目が覚めた。
「……マブト?」
床に寝っ転がっていたはずのマブトが影も形もなく消えている。
残っているのは彼が使っていた布団一枚のみ。
「ッ!?俺の荷物は!?」
ベッドのそばに置いていたはずのアダンの荷物がすべて消えている。
鞄、財布、剣に至るまで全てだ。
(やられた!!)
状況から見てマブトが全て盗んだのだろう。
マブトが入っていた布団の中に手を入れると……
「まだ暖かい。そう近くには行ってないな」
急いで外に行こうとした時だった。
「オラァッ!!」
「うおッ!?」
突然部屋の中に3人の男が突入。
そのうちの一人がアダンの頭目掛け全力で金槌を振り下ろしてきた。
「誰だ?何しに来た」
振り下ろされた金槌をすんでの所でかわし、距離をとった。
「アダン……薬の番人様。嬉しいぞお前の首には金貨800枚の賞金が賭けられてる。そんな奴が近くに居て尚且ついびきかいて寝てるなんて聞いたら誰でもこうするだろう?」
「……あの野郎」
マブトはこともあろうに盗みだけでなく密告までしていたようだ。
「悪く思うなよ?これも日ごろの行いのせいだ」
「ああそうだな」
「ちょっと聞きたいんだが、マブトは何処にいるか知ってるか?」
「んなもん知るかよ。俺たちにお前の居場所吐いた時に金渡してそっからさよならだ」
「そうか……俺の荷物が……」
頭を抱えた、当分の金も護身用の武器も、服に至るまで全部持って行かれたことに……
今すぐにでもマブトを殴り倒したいが、目の前には暴漢3名。
彼は場の雰囲気にそぐわないほどにっこりと笑い……
「お前ら、ちょっと八つ当たりさせてくれ」
「へっへ。これだけあれば暫くは食いつなげるな」
町の出口にいる馬とマブト。
アダンから奪った荷物を馬に乗せ、彼に送った暴漢達から受け取ったいくばくかの硬貨を見てにやけていた。
「人間を簡単に信用する奴で驚いた痛ッあ!?」
馬に乗ろうとしたマブトの肩に何かが当たり声をあげた。
「な、なんだ?」
周りを見ると足元に石を紙で包んだ物が落ちている。
これが当たったようだが……
「投げ文……?」
肩の痛みを堪えながらなんとか拾い上げ中身を見ると……
『降伏するか死ぬか選べ』
「嘘だろおい?」
完全な丸腰で、しかも寝込みを襲ってそれでも生きて自分を追いかけてきたことに恐怖した。
「というかこれを投げて当てられる距離にいるのか、さっさと逃げねぇと」
馬に乗って一目散に走って逃げようとしたのだが……
「おい!早く行けよこの駄馬!!」
馬が全く進もうとしない。
耳を動かし視線をいろいろな場所に向けている。
(怯えてるのか?)
そうこうしているうちに今度は反対の肩に石が当たった。
「なんでこの暗闇で当てられる!?」
仕方なく馬を置いて荷物を背負い全速力で逃げた。
「ああ糞!!糞ッ!!」
暗闇の中を一人で逃げ回るマブト。
あれからも石を一定間隔で投げつけてくるが投げてきた方を見ても何も誰も居ない。
ただ静かな茂みが続くだけだ。
(どこにいるんだよ畜生め!!)
不思議なことに足だけには石を当てられない。
「何処に居やがるアダン!出てこい!男らしく拳骨で戦え!!」
覚悟を決めてたち止まりそう叫んだ。
すると……
「男らしくね。お前が言うには不足だ」
読んで頂きありがとうございます。
下の☆を押して評価をお願い致します。




