第9話
「なんとか1人分で泊めてもらえるように交渉したが…マブト、貸し一つだ。何かで返してくれ」
「ありがとうよ」
アダンはマブトと共に宿へと戻ってきた。
案内された部屋は本来一人で使うそうだが、彼ら二人でも特に問題なさそうな広さがあった。
手入れはあまりされていないであろう亜麻布の布団などはアダンにとっては少々不快ではあるが……
「俺がベッドで寝る。いいな?」
「ああ、こっちも無理矢理ついてきた身だからな。構わんよ」
そう言うとマブトは床にそのまま寝転がり、亭主から借りた布団を被る。
「明かり、消すぞ」
「ああ」
アダンは蝋燭の明りを消し、首まで布団をかける。
そしてしばらくたつと、思い出したようにマブトが話しかけてきた。
「なあアダン。ちょっと聞きたいんだが……」
「なんだよ。明日早いんだからもう寝ろ」
「まあ聞けよ。お前ってもしかして『薬の番人』か?」
「…………」
(……逃げるか?)
「やっぱりそうなんだな」
「何処で知った?」
マブトとは正反対の方向に寝返りをうつ。
出来る限り顔を合わせないようにした。
「ここに来るまでの道に掲示板があっただろう?あれにお前の名前と似顔絵が張り出されてた。それでピンときた。くしゃくしゃの黒髪といい、その黒い目といい風貌もほとんど一緒だったからな」
「……そうか」
酒を飲んだ後とはいえ少しうかつだった。
「それでどうする?俺を突き出すか?」
「いや別に。ただ聞きたいことがある。お前何やってお尋ね者にされたんだ?」
顔を背けていても分かる。
彼は恐らく目を輝かせて聞いてきている。
アダンは自分の過去のことなど聞いて何が面白いのか全く理解できなかったが……
「……俺の信じる正義を貫いた」
「うん?」
「それで国の人間が救われるならと、それで悪が消えるならとそう思ってな」
「全く具体的じゃないが……そんなことでお尋ね者か?」
「もうお尋ね者じゃない。俺は裁きは受けた後の身だ。その結果国を追われ、旅を続けてるがな」
「じゃあなんであんな張り紙がしてあったんだ?裁きを受けた後なら必要ないだろう?」
「張ったのは俺が属していた組織に関係のある奴らだろう。組織を裏切った挙句に潰した俺を恨んでるのさ、多分な」
「……そうかい」
彼はそれで納得したのだろう。
暫く黙り込むとアダンの後ろからは寝息が聞こえてきた。
「お休み」
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