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第十一話 観光・1

11/8に護衛の兵士の一人の名前を改名。ヘロルド→トーマスへ。

主人公の父親の名前と被っていた為の処置です。


 王都に着いた翌日、朝食を終えた僕は父さんに王都の観光の許可をもらいに行くため、父さんの部屋を訪れた。ドアをノックし、中から入っていい、と父さんの声がした。


 ドアを開けると中にはジギスとアンネローゼがいた。ジギスは僕のほうをちらっとだけ見て、すぐにまた父さんの方に向き直る。アンネローゼはいつも通り、汚物でも見るような目で僕を見ている。



「アルも王都の観光をしたいのかな?」

「はい、そうです。も、ということはジギスもですか?」

「ああ、警備の人数の関係もある。二人で一緒に見て回ってもらおうと思っているけど、いいかな?」


 アンネローゼは露骨に嫌な顔をし、ジギスは複雑そうな顔をしている。僕はにこやかな顔を作り、父さんに答えた。


「ええ、それでは僕は支度をしてきます。三十分程後に家の門の前に行けばいいでしょうか?」

「ああ、それまでには警護の人間と馬車を用意させておく。ジギスもいいな」

「……はい」


 その場で王都観光の話は終わり、僕らは部屋を出た。





 三十分後、身支度を終えた僕はアニと共に門に向かった。

 玄関を開けてすぐに、門の前に人が三人いるのが見える。一人は普段着の上に皮の鎧を着ていて、腰には細身の剣をぶら下げている。

残る二人の装備はどちらも腕や足、胴体に同じ鉄の鎧をつけていて一目で彼らが同じ所属の兵士だとわかる。そのうちの一人は大人の女性より少し低いといった程の身長で、男性としてはかなり小柄だ。

それとは対照的にもう一人の兵士は高い身長に広い肩幅、太い腕、先ほどの兵士が鎧に着られているというのならばこちらは鎧を着こなしていた。


 

 僕らが門に近づくと体格の良いほうの兵士が僕らに気づき近づいてきた。

 

「アルノルト様。すでに馬車の準備はできております。よろしければ馬車の中へご案内します」

「いえ、大丈夫です。それより皆さんの名前を教えてもらってもいいですか?」

「これは、失礼しました。私はトーマスというものです」


 深くお辞儀をして僕に礼をするトーマスさん。それは貴族に対する適切な対応であるが、年功序列社会で育った記憶のほうが多い僕としては、やはりこういった年上の人に上にみられるような態度を取られると気恥ずかしくなる。アニや他のメイドなんかの屋敷に住み込みで働いている使用人の人たちからなら慣れてるんだけどなぁ……。



「僕はアルノルト・リーベルトです。本日はよろしくお願いします。そちらの二人のお名前をうかがっても?」


 気を取り直し、僕は残りの護衛の人たちに名前を聞く。すぐに返事をしたのは小柄な兵士のほうだった。


「私はミランダといいます」


 小柄な兵士の声は高く透き通るような声で、男性の声ではなかった。どうやら僕が小柄な男性だと思っていた兵士は女性だったようだ。


「次は俺だな。俺はユーリ、Aランクの冒険者だ。活動拠点はここ王都。王都の名物の食い物、観光場所なんかは詳しいから、何でも聞きな」

「ユーリ殿、我々兵士は貴族身分ではないので、構いませんがアルノルト様への言葉遣いは正してください。ギルドのマニュアルにも貴族の方々への対応は載っているでしょう」

「そんなの読んでる奴なんかいねぇよ」


 ユーリさんの言葉遣いにミランダさんが目くじらを立てる。まぁユーリさんの態度は貴族に対する対応としては赤点クラスだからしょうがないけどね。僕としてはタメ口の方が気楽だし。


「いえ構いませんよユーリさん。その言葉遣いでも僕は問題ありません。ただ、もう一人のジギスは平民の態度にはうるさいので気を付けてくれると会話がスムーズになります」

「ああ、わかったよアルちゃん」

「ユーリ殿!」

「まぁまぁ、落ち着いてくださいミランダ、ユーリ殿。ユーリ殿はジギスムント様がいる場では言葉遣いを正してください。ミランダは今この場ではユーリ殿の言動を見逃してほしい」

「あいよ、リーダー」


 ふむ、短い時間だけど三人の関係性がわかってきたかな? 三人のまとめ役のトーマスさんに規則や礼儀に厳しいミランダさん、そして多少雑な性格のユーリ。


 正直少し……というか、かなり護衛の人の関係性が不安だけど、父さんが手配したんだ、きっと問題ない人材なのだろう。


「ところでアルノルト様は王都の観光で見てみたい場所はあるのですか?」

「特にないですね。王都の事については授業で習った程度でしか知らないので、僕としてはユーリさんや皆さんのおすすめを見て回りたいと考えています」

「お、いいねぇ。まかせとけ、完璧な観光にしてやるぜ。あと、さんはいらねぇ。ユーリでいいぜ」

「わかりましたユーリさ……ユーリ」




それからすぐにジギスがやってきた。普段であればもう少し遅れてやってくるのだが、ジギスも王都の観光が楽しみだったのだろう、いつもよりお早い到着だ。



「ふむ、全員そろっているな、よし出発だ。まずはヨアヒムの記念館に迎え」

「ジギスムント様、お言葉ですが、観光先はアルノルト様とお話の上で決められてはどうでしょうか」


 ジギスの決定にたいしてミランダさんが口をはさむ。僕としてはジギスが行きたいところがあるのなら別にそこで構わないんだけどね。さっきも言ったけれど、僕自身に特別見て回りたい場所はないんだし。なんとなく、見た事のない街を見てみたいと思っただけだから。



「ふん、どうせアルノルトに行きたい場所などないんだ。なら、俺が行きたいところに向かう方がいいだろ。アルノルトはお前たちに任せるとでも言ったんだろ」

「……失礼しました」


 先ほどの事を見ていたかのように言うジギスにミランダさんは言葉を詰まらせ、意見を下げた。


「ところで、貴様名前は?」

「……ミランダと言います」

「そうか、顔と名前は覚えたからな」



 そういうとジギスは自分のメイドを連れて馬車の中に乗り込む。僕もその後に続き馬車の中に乗り込む。


 馬車の扉が閉められ、馬車の周りにユーリとヘロルドさん、ミランダさんが立つ。そして、御者の行きますよと、言う声を合図に馬車はゆっくりと動き始めた。




 僕らの向かっているヨアヒムの記念館というのは百年前の人物、ヨアヒム・ベルターリという者の活躍を称える為に建てられたものだ。ヨアヒムの使っていた装備や、手記なんかが展示されている……らしい。


 らしい、というのもこれらの話は全てジギスから聞いたからだ。僕はヨアヒムという男の活躍は授業で習っていて、知っているけれど、その記念館までは知らない。ジギスに言わせれば、この国に生まれた男子すべての憧れらしいが。


 僕の知っているヨアヒムの活躍は、百五十年程前に起きた大進行という魔物の大量発生により、王国の東部の一部の地域が飲み込まれた事件――災害の解決だ。


 大進行により東部の一部地域が飲み込まれてから五十年、東部の片田舎の町に一人の男が生まれた、ヨアヒムだ。彼は魔物の巣窟となった東部の前線の町の平民の子として産まれた。彼は成長し、冒険者となった。そして、成長していく彼が向かったのは魔物の巣窟となっていた地域だ。


 ヨアヒムは仲間たちと共に魔物達を倒して倒して倒しまくった。その結果、魔物達に奪われていた土地を取り戻した。そんな彼を当時の王様が大々的に英雄として王国全土に発表した。彼は魔物に奪われた広大な土地を取り返したものとしてその土地を任される事となった。つまり、貴族へと出世したのだ。


 平民から貴族へとのし上がり、多くの人に希望をもたらした英雄として、王都と東部の町には彼の銅像や、記念館が立てられている。


 


 ジギスは昔から英雄神話や、騎士の戦いの物語が大好きだった。きっとヨアヒムの事も大ファンだったんだろう。向かいの席のジギスは興奮冷めやらぬといった様子で今か今かと到着を待っている。


 そんなジギスを見て、僕はなんだかほほえましい気持ちになった。


 やっぱり、アンネローゼが絡まなければ、ジギスはただの可愛い弟なんだ。



 そんなことを考えながら僕は初めて見る町の景色へと目を移した。


ご指摘ご感想などいただけたら幸いです。

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