第十話 悪魔化の実現
リオとカリュー、フローリエとニールはその後、レストラン街へ行って食事を楽しんでいた。
「主人!このケーキ今まで食べた中で一番美味しいぞ!」
「カリュー!こっちもうまいぞ!」
カリューとニールが楽しそうに食べている。
カリューに向かってリオは微笑する。
「フローリエ先生、いいんですか?ここ、相当高いですよ?」
リオは心配して先生を見る。
なぜなら......カリューが遠慮のえの字もなしに、高級なデザートを美味しそうに食べているからだ。
如何にも高そうな金箔ののったショートケーキ、綺麗に渦を巻かれたモンブラン。
どれを見ても美味しそうだ。
「全然構わんぞ!金ならいくらでもある」
フローリエ先生は強そうに言う。
「そうだ!私の主人は色々と国に貢献しているからな!金なんて飽きるほどあるぜ!」
ニールが教えてくれる。
教えてくれるのはいいんだけど、そういうことは小声で言おうな、もし他に剣霊使いいたらどうするんだ....
「主人もこれ食べてみろ!」
カリューがケーキを渡してき────
リオは昔から感じ慣れた背中をなぞられるような嫌な気配を感じた。
悪魔化を引き起こした時に生じる独特の気配だ。
「ファミエ!今の!!!」
フローリエ先生も気がついていたようだ、どうやらカリューとニールも気づいたらしい。
「主人....行くぞ!!南西の方向だ!相当近い!」
「ああ!フローリエ先生!先行ってきます!」
食事を残したままリオとカリューは急いで店を出ていった。
「お、おい!」
フローリエもすぐに追いかけようとするが店の人に止められる。
「こらこら!ちゃんとお代払って!!」
「今はそれどころじゃねぇんだよ!!」
リオは店から飛び出て周りを見る。
悪魔化した人物らしき人はいない。
皆気づいていないので平然と歩いている。
「主人!この店の裏だ!」
カリューが気配の感じた方向を教えてくれる。
リオはすぐさま『ウィンダムフライ』を唱え店の裏を見る。
そこには一番最悪の状況が目に入った。
父親だろうか?男の人がもがき苦しんでいた。
隣には息子と思われる少年が男の人に向かって声をかけている。
「お父さん!ねえ!!」
子供の声が聞こえる。
やはり悪魔化を起こしているのは父親だった。
しかし、なぜ魔力が尽きるまで使ったのだろう?
そんな疑問が脳裏を過るが、今はどうでもいい。
「そこの子!早くお父さんから離れろ!!」
大声で言ったが遅かった。
悪魔化した男は完全に魔力に体を乗っ取られてしまった。
そして、男はすぐに無差別に破壊を始めた。
男は拳一発でレンガで作られた壁に大きな穴を開ける。
「おとう....さん.....?」
少年は男の前に立ったままだ!このままでは危ない!
リオは即座に魔法を無詠唱で展開する。
無詠唱で展開すれば、威力は減るがきちんと魔法は展開される。
炎の矢『フラムプファイル』リオの得意な魔法だ、得意な魔法なら威力はあまり減らない。
リオの唱えた炎の矢は男の顔に当たる。
男は少し怯んだ。
「今だ!早く逃げろ!!!」
少年はすぐに泣きながらリオ背後へ隠れる。
「主人の魔法じゃ、悪魔化した人間には少ししか効かないぞ!!」
そう、リオの覚えている魔法の属性は火と風の魔法のみだ。
悪魔化した人間には光属性が効くのだが、リオは光属性の魔法を覚えていない。
最も光属性の魔法を使える者はこの世に数千人程しかいない。
「私を使え!主人!物理攻撃の方が魔法よりダメージを与えられる!」
そう言って、カリューは剣の中へと戻る。
「ああ、よろしく頼む!」
リオは鞘から剣を抜く。
男が体制を立て直した、そしてリオへと殴りかかってくる。
リオは次々と弾丸のように飛んでくる拳を剣で捌く。
剣で捌いても男の腕には傷一つついていない。
悪魔化した人間は身体能力がとんでもなく向上する。
そして体が魔法で強化され、鋼のように硬くなる。
だから傷一つつかないのだ。
男の拳の連擊は止まらない。
「主人!反撃しないと殺られるぞ!」
「分かってる!だけど.......」
リオは後ろを見やる。
少年は怯えて、リオの後ろから動くことができない。
この状況じゃ、反撃なんてできないだろ!!
リオは拳を捌くが、男の予想外の威力の攻撃に少し仰け反ってしまう。
男はその隙を見逃さなかった。
すぐにリオの脇腹めがけ蹴りを入れる。
「っ!?」
リオは捌ききれずに腹部へ男の足がはいる。
「主人!!」
即座に防護魔法を唱え衝撃に備える。
そしてそのままレンガでできた建物へと飛ばされてしまう。
ドォォォォォォォォン.......
と大きな音を立てぶつかる。
起き上がろうとするが瓦礫に足を挟まれてリオは動けない。
どうやら少年は逃げてくれたようだ。何処にも見当たらない。
よかった......
男は動けないリオに構わず拳を入れようとする。
そのとき、
「暗き狭間に潜む者よ、今こそかの者に破滅を齎さん!」
闇属性の高位魔法『ウェルト・ラズルシェード』が炸裂する。
男はあまり効いていないものの少し怯んだ。
「ファミエ!大丈夫か!」
「おい!カリュー!なにやられてんだ!」
フローリエ先生とニールが、すぐに駆けつけてくれた。
「フ、フローリエ先生....すいません....僕が未熟なために.....」
リオは痛みを堪えて言う。
「話すな!そんなこと今はどうでもいい!お前!全身血だらけじゃないか!」
リオは即座に防護魔法を展開したもののあの威力はさすがに防ぎきれなかったようだ。
全身から血が流れている。内蔵もいくつか破裂し、直接拳を食らった腹は肋骨が3本程折られてしまっていた。
「ここは私に任せろ!カリュー!リオをよろしく頼む!」
「了解だ!主人!ほら、しっかりするんだ!」
剣の中からカリューが出てきた。
カリューはリオへ肩を貸して路地裏へと隠れる。
男はリオを追おうとする。しかし
「どこ向いてんだよ!私の生徒をよくもまあここまで!」
フローリエが男の前に立ち塞がる。
「グワァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
男が吠える。
それはもう人間ではなく飢えた野獣のようだった。
「ほう、威勢はいいんだな!行くぞニール!」
「はいよ!主人!」
ニールが剣の中へと戻る。
戦闘が始まる中、路地裏ではリオとカリューが回復に専念している。
「主人!すまない、私のミスだ!私が.....私が....守れなかったから!」
カリューは泣きながらリオに抱きつく。
「大丈夫だカリュー、こんなんじゃ死なねぇ。回復魔法も唱えてるんだし、数分後には治るよ。それにお前が悪いんじゃなくて剣を使っている俺の方が悪いんだ、だから泣くな、な?」
リオは回復魔法『クーラティー』を唱えている。少しずつ痛みは和らいでいるが、数分は動けなさそうだ。
だか、リオは完全に癒えていないのに戦闘に向かおうとする。
「主人、無理は良くないぞ!ここはあいつらに任せておけばいい!」
カリューはリオを心配して止める。
「カリュー、今、目の前には闘ってる人がいるんだ。俺は昔そんな人を前にしていても一緒に闘えずにその人を失ってしまった。だから、もう二度と失いたくない!闘ってる人を目の前にして自分は何もしないなんてことはしたくない!だからカリューもう一回出るぞ!」
リオは回復が終わったのか急に立ち上がって戦闘へ向かう。
「しょうがないな....主人は私が守ってみせる!だから主人は存分に力を発揮しろ!」
そう言いカリューは剣の中へ戻る。
「ああ!カリュー、よろしくな!」
路地裏から出ると、フローリエ先生とニールが男と闘っている。
さすがに闇属性が得意な先生も押されているようだ。
「先生!下がってください!」
リオの合図でフローリエは下がる。
「よし!カリュー、俺はお前を信じてる!行くぞ!」
「おお!主人!私も主人を信じてる!だから、私も本気を出すとしよう!」
そう言うとカリューの剣からとんでもない膨大な魔力が溢れ出す。どんな闇でも照らし出す。そんな明るい光だった。それはカリューと初めてあった時と感じた安心する光と同じだった。
「これが....カリューの本気.....」
リオは暫く見惚れてしまう。
「あまりジロジロみるな!ほら!さっさと片付けるぞ!主人!」
カリューが気合いを入れる。
「おお!カリュー!」
そう言うとリオは足を一気に踏み込み男の背後へと目にも止まらぬ速さで回り込む。
「はぁ!!!」
そして、一本、二本とどんどん男の背中に大きな傷を残す。
悪魔化した男は先程とは違う攻撃に驚いたのかすぐさま拳を背後に回し、リオに攻撃する。
だか、それも虚しく空振りになる。
リオは攻撃を上へかわしたあと、男の脳へと狙いを定める。
「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
そのままリオは急降下。男の脳へと一閃!!
剣は男の体を綺麗に串刺しにし、男は動かなくなった。
「うっ.....」
リオは激痛を堪えるのが限界になった。
やはりまだ回復はしていなかったのだ。
「主人?し...じん!.....しっか.....しろ......!」
最後にそんな声が聞こえた。
リオはそこから意識が途絶えた。
やっとのことで十話です。
僕がここまで書けるとは思っていませんでした!
ここまで読んでくださってありがとうございました!
また、これからもよろしくお願いします!




