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ユーチューブに動画を上げると言った、三井君の言葉は十中八九、嘘だろう。
念のため検索してみる。
グーグルで『ユーチューバー 三井潤』と打ち込むと、いくつか動画は出てきたが、該当する人物はいない。
ホッとした。が、本名でユーチューバーをする人はまずいないだろう。
三井君がハンドルネームを使って、動画を投稿している可能性はある。
『銭湯 ユーチューブ』で検索する。それらしい動画はヒットしない。
ユーチューブでは、コミュニティガイドラインに沿っていない不適切なコンテンツは掲載されないし、万が一上がったとしても削除されるはずだ。
だから、もし本当に銭湯で女性の裸を撮っていたとしても、動画が上がってくる可能性はほとんどない。
――それが、かえって怖かった。
「戸波君はユーチューブ見る?」
「見ますね。ゲーム実況とか」
休日明けの火曜日、出勤してきた戸波君に声をかけると、そう教えてくれた。
「今どきの子って、テレビ全然見ないもんね。私も見ないけど。ずっとユーチューブかインスタか、あとTiktok」
と言いながら、私は三井君がゲーム好きであることや、付中出身のユーチューバーについて語っていたことを思い出した。
私はいまいちユーチューバーには詳しくないけど、篠っちだったら知っているかもしれない。
今度聞いてみよう。
「そういや、警察官の試験はどう?勉強進んでる?」
「はい。来週面接なんで頑張ります」
「えー、そうなの?!そんな大事なときにバイト入れて大丈夫?」
「問題ないです。あ、いらっしゃいませ」
戸波君の視線を追って、私は反射的に入口を見た。
暖簾の向こうから姿を現したのは、見慣れたはずの顔だった。
けれど、その表情はまるで別人だった。
三井君のおじいちゃん、常連の三井さんだ。
「いらっしゃいませ」
笑顔で言った私のもとに、ずんずん大股で近づいてきて、三井さんは直角に頭を下げた。
「このたびは孫が大変ご迷惑をおかけして、申し訳なかった!」
そして、どんと重い音を立てて、番台の上に風呂敷に包まれた何かを置いた。
自然と風呂敷がほどけて、私は目を見開いた。三キロの米袋だ。
「三井さん、え、え、これは」
「お気遣い無用。せがれと孫の潤から全部聞いたよ。
潤が松の湯でいたずらをしでかして、若女将は叱らずにかばってくれたって。悪かったねえ」
あちゃー。お父さん、やっぱり疑って、三井のおじいちゃんに話しちゃったのね。
私は額に手を当てた。
「店長。俺、番台代わりますよ」
戸波君が気をきかせて言ってくれたが、「いや!私はこれで」と言って、さっさと三井のおじいちゃんは帰っていく。
今日はお風呂に入る気もないらしい。
「待ってください」
私は入口を出たところで、ようやく追いついて声をかけた。
三井のおじいちゃんは振り返ると、ばつの悪そうな顔で頭を下げた。
「本当に申し訳ない。確認したところ、潤の携帯には変な動画も画像も残ってなかったらしいんで、そこは安心してくれるかい。私からも、きつく叱っておいたんでね」
「違うんです。迷惑とか、そういうことでは全くなくて。少し、潤君が心配で」
話を切り上げられたくなくて、私は必死で言った。
「お母様、亡くなられたんですよね」
「ああ……そうなんやわ」
三井のおじいちゃんは遠い目になる。




