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「もし来たら、普通のお客さんとして扱うから、戸波君もそうしてね。で、脱衣所で服を脱いでるとき、体に傷とかないか、さりげなく注意して見てあげて」
「ひどい暴力は受けていないと思いますよ。少なくとも、今の時点では」
「どうして?」
「どこか痛めてたら、体の動かし方で分かるんで」
戸波君は事もなげに言った。
「そっか……剣道やってるし、怪我も見慣れてるもんね。戸波君から見て、三井君ってどう?いじめられてるように見える?」
「いや、そんなふうには見えませんでしたね。ただ」
「ただ?」
戸波君は口元に手を当ててしばらく考え込んでいたかと思うと、顔を上げて言った。
「俺も店長と同じで、あいつが自分の意志で女湯を撮ろうとしたようには見えませんでした。
だとすると、誰かに命令されたのかもしれないとは思います」
「罰ゲームみたいな感じ?」
「はい」
嫌そうに戸波君は頷いた。
「なるほどね……」
いじめだとすると、我らが母校である付中とも連携が必要になる。
もちろん、私が軽率に動いて、三井君に迷惑をかけるわけにはいかないけれど。
どこかのタイミングで、三井のおじいちゃんに話を聞いてみるのもいいかもしれない。
「店長」
「え、ごめん何?聞いてなかった」
「店長は、何でそんなにあの子どもが気になるんですか」
言い方に棘はなかったけれど、子どもという単語に必要以上に強いアクセントがついている気がした。
「……今はまだ、ただの勘なんだけど」
「勘、ですか」
戸波君の瞳に、一瞬だけ影が差した。
「ごめんね、うまく言えなくて。大ごとにしたいわけじゃないんだ。
ただ、三井君が子どもだからって甘く見てるわけじゃないし、盗撮未遂ぐらい放っておこうとも思ってない。必要なら警察にも届けるよ。
松の湯の女将として、私はお店に来ている人たちを守る義務があるから」
私の言葉をじっと聞いた後、戸波君はゆっくりと頷いた。
「……分かりました。店長を信じます」
日付が変わるころ、私は篠っちのLINEにメッセージを送った。
【こんばんは。今度うちに来て、中学生ぐらいの子が男湯にいたら、ちょっと注意して見てあげてくれる?】
いつもなら三秒で既読、一分以内に返信が来るのに、翌朝になっても未読のまま。
まさかの『未読スルー』だった。
めちゃくちゃまめな篠っちにしては珍しい。よほど仕事が忙しいのだろうか。
「……ま、いっか」
私は白い袖がふわっとしたブラウスにデニム、スニーカーという格好で家を出た。




