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「今日は、おじいちゃんと一緒に来たの?」
「一人で来た」
ゲーム画面で男性が倒れ、画面が赤暗くなった。
どうやら、三井少年のキャラは死んでしまったようだ。
「何であんなことしたの?」
そこで、ようやく三井少年は顔を上げた。
凛々しい眉をかすかに動かし、変声期らしいかすれ気味の声で言う。
「警察呼んでもいいよ」
なるべく動揺した様子を見せないほうがいい気がして、私は平静を装った。
「じゃあ、やっぱり撮ろうとしたの?女湯を」
三井少年はこくりと頷いた。
うーん……困った。私は頭の中で両手を挙げていた。
これがいわゆる、思春期の性の芽生えってやつだろうか。
男の子のことだし、どこまで踏み込んでいいやらよく分からない。
それに、目の前の三井少年は興奮しているどころか、やけに落ちついていて、女性の裸が見たくてたまらない!というエロい感じも全くしなかった。
あのとき、彼はふらふらと吸い寄せられるようにして、女湯のほうに歩いていったように見えた。
あの行動は、通常の(って言葉がおかしいけど)覗き行為や盗撮とは何か違う気がする。
「本当に撮りたかったの?」
重ねて聞くと、三井少年は鼻白んだ。
「何が聞きたいの」
「三井君、さっき様子が変だったから。ちょっと気になって」
三井少年は、じっと私を見た。
見透かすような視線に思わず息が詰まる。
「本当は、何がしたかっ」
「ユーチューブにアップしようと思っただけ」
声のトーンは変わらず淡々としていて、まるで天気を伝えるみたいだった。
私は目をぱちぱちさせた。
「ユーチューブ?」
「そう」
唐突すぎる単語に頭がついていかない。
目の前の三井少年は、平然とした表情で言葉をつむぐ。
「付中出身の有名なユーチューバーがいて、その人が動画で言ってたんだ。
有名ユーチューバーになって、何百万再生っていう動画をばんばん上げれば、学校にも会社にも行かずに動画の収入で食べていけるんだって」
まさに人を食ったような態度とは、このことだろう。
どこから突っ込んでいいか分からず途方に暮れていると、後ろから声がした。
「店長。そろそろいいですか」
戸波君だ。
「三井君、こっち来て」
私は彼を促し、玄関までやってくると、戸波君に引き渡した。
「ごめん、遅くなって。悪いけど、三井君を家まで送ってあげて」
「いいよ、要らない」
と三井少年は首を振ったが、私は譲らなかった。
「駄目。今日のことは誰にも言わない。その代わり、ちゃんと戸波君と一緒に帰って」
戸波君は色黒で、がたいのいい大学生である。
剣道をしているので姿勢もよく、それなりに威圧感がある。
そのせいか、三井君も逆らうのは得策ではないと判断したようだった。
「……分かった」
私はにっこりすると、三井少年の目を見てつけ加えた。
「また遊びに来てね。何か話したいことがあったら、いつでも聞くからね」
三井少年はふいっと目を逸らし、何も言わずに玄関を出ていった。




