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「ごめん、おばあちゃん。ちょっとの間、番台お願いできる?」
掃除と見回りをしていた戸波君が戻ってきたのを捕まえると、私は手早く事情を説明した。
ちょうど、おばあちゃんと同時に話せて手間が省けた。
「俺が行きますよ」
しとしとと雨の降る窓外を見て、戸波君は言った。
「大丈夫。まだ暗くなってないし」
「心当たりあるんか」
尋ねたのはおばあちゃんだった。
その横から、にゅっと篠っちの首が伸びてくる。
「もう、さっきから何なの?篠っち」
「いや、電話口で警察とか聞こえたからさ。麻生がいなくなったんだろ?」
「そうだよ。忙しいから邪魔しないで」
「俺も捜す」
と言って、篠っちは立てた親指を自分の顔に向けた。
無言の圧が走った。
おばあちゃんの目が細くなり、戸波君もじっと視線を投げる。
見えない空気に押されて、篠っちはむずがゆそうに頭をかいた。
「……お前はともかく、ばあさんとバイト君までここ離れるわけにはいかないだろ。俺だったら車も出せるし」
「ありがたいけど、車は要らないよ。結実理は多分免許持ってないし、行動範囲そんなに広くないと思う」
本人から聞いたわけではないが、お嬢様の結実理が自分で車を運転するとは思えない。
「俺みたいに同級生ならともかく、バイト君は無関係だろ。余計な仕事させるなよ」
「それは、そうだけど……」
「ほな、お言葉に甘えてそうさしてもらい。二人とも気ぃつけて行くんやで」
おばあちゃんは呟くと、さっさと私たちに背を向けて番台に入った。
「ありがとう。ごめん戸波君、すぐ戻るね」
私は頷くと、スニーカーに履きかえて店を出る。
慌てて追いかけてくる篠っちの気配を背後に感じながら、傘を開いて大通りまでの道を走り出した。




