98年生アイシャ・イスマイロヴァ
- はじめに -
本作および本作の宣伝物において言及・描写されている人名、人物、企業、団体、地名、国名、事件、製品、その他すべての固有名詞は、すべて実際のものとは一切関係のない架空のものです。したがって、万が一実在のものと一致する点があったとしても、それは偶然によるものです。
この小説には、陰謀論や独自の妄想が含まれています。
記者:中学校の教室。生徒2人が同じクラスの友人に絡んでいます。
学生1:おい!休み時間に勉強かよ?優等生ぶるな!
記者:いじめの強さがエスカレートすると、被害生徒が止まるように声を上げます。
学生2:やめろ!
記者:叫び声を聞いた同じクラスの生徒もみんなで叫んで、
学生3:やめろ!
みんなで:やめろ!
記者: 校内でいじめの発生が知られると、直ちに教師との相談が行われます。いじめを予防するために導入された「やめろ!プログラム」です。
‐ KBS, いじめ「やめろ!」導入後半減中
玉蓮女子高等学校1年4組13番。
それがアイシャ・イスマイロヴァであり、金志英の学籍番号だった。
生徒金志英は、ほとんどが夏服の姿に一部が春秋服の姿である他の学生のように正門に入った。
刑務所として使われているような建物に、ある場所には白と黄色などの塗料を塗って、それでも明るく見せようと努力した学校の建物の中に入った。
他の生徒たちと一人で石材の階段を上って後ろの扉を開けると、開けるたびにいつも気持ち悪い騷音が響くドアが傷つく鉄製ロッカーと、落書き「一浪はない!」と書かれたものに「ある!」と「ない!」が喧嘩するように交互になぞられた教卓、LCD TVテレビや苔のように青い黒板、木の机が彼女の目に入った。
学生たちは座って問題集を解いたり、携帯を見たり、お互いに会話を交わしたり、ロッカーでしゃがんで本やファイルなどを取りまとめていた。いつものように遅くはなかった。
は前から3番目のうち、教師の時点で最も目立つ席に座ってバッグをかけ、ラヤナが使ったテープではんだ付けしたピンクのプラスチック筆筒を取り出し、ロッカーから教科書を取り出した。
キルギスタンを1月に去り、3月にここに入学した時のように新たに始めようという感じはなかった。
ただ生きているだけだった。それが自分の最善だとは思えなかった。ただ生きていた日常だけで、それ以上や以下の意味は彼女は感じることができなかった。
朝礼になった。
声が甲高い女の教師が来て、級長が携帯の収集袋を取り出すと、皆携帯電話を出し始めた。
まあ、一部は推測したら代用品を隠しておいたかもしれなかったけど。
以後残る時間は非公式の休み時間だった。学友たちはあれこれと話題を交わしながら、互いに声を立てて笑ったり、にやにやしたりしていた。しかし、彼女にはそれができなかった。
キム・ジヨンは、それが彼らに「よそ者」として差別されたからというよりは、そもそも他の学生たちと世界観が異なっていたからだと考えていた。
ここに来た当初は、他の学生たちと会話を交わす機会も比較的多かった。しかし、その時の会話の多くは、自分がキルギスから来た高麗人であるという事実に関連するものであり、それ以降は、まともに言葉を交わすことはなくなった。
ハニーバターチップが売り切れただとか、Apinkだとか、スポーティズムだとか、他の学生たちが話題にするようなことには、普段から関心すらなかった。
ただ目の前にある数学、英語、国語の問題集を解いたり、一人で机に向かい続けて絵を描いたりしていた。
ここはまるでフリップブックのように、目まぐるしく変わっていくように思えた。いや、変わるのがあまりに遅いのは、自分の方なのかもしれなかった。
妹のラヤナなら、そんなアイシャを見て、「なんでそんなに流行についていけないの」と小言を言われるだろうな、と思った。
あいつは2歳の頃からここで暮らしているからこそそうなのだった。ここに来てまだ1年も経っていない自分にとって、最新の流行など知ろうとする気にもなれなかった。いっそ幾何学の公式を暗記するほうが、まだやる気が湧くというものだった。
数日前、やっと覚えた学生会長の名前、キム・ダインもずっと覚えていないので薄暗くなった。
おふくろが結んだ契約により、1998年に生まれ、魔法少女の容貌的、身体的資格が満たされたが、10歳で魔法少女になると決まったことからここにくるまでの語を出せば、それでも自分をさらに遠くするだろうと思った。
月曜日の1時限目の授業が韓国史だったことは、アイシャにとってせめてもの救いだった。
ポメラニアンのように活発な性格の女性教師が教室に入ってくると、生徒たちは一斉に、それぞれ教師に挨拶をした。
やがて授業が進んだ。
「さて、前回は辛未洋擾までやったよね? 今回の授業内容は、それと非常に関わりのあるものだよ。韓国が日本によって開港し、その後、興宣大院君の政策や開化期の……」
アイシャはその教科書のページをめくった。前回の授業で丙寅洋擾と辛未洋擾について学んだのに続き、その次には江華島条約に関する記述と共に、雲揚号の写真や江華島条約の想像図も掲載されていた。
「江華島、仁川にある江華島を知っているよね?だから『江華島条約』なんだ。江華島条約!すごく重要なところだよ。みんな、ちゃんと線を引いたかな?よし。別名『朝日修好条規』とも言うから、これも覚えておかないとね。永宗島――国際空港があるあの辺り――に船で乗りつけて、『門を開けろ!』と日本が迫った、それが江華島条約なのだ。」
江華島条約……。教科書に書かれていた裏話によれば、これは最初の近代的条約であり、かつ不平等条約でもあった。そしてこれによって、ここ仁川や釜山、元山が開港することになったのだといった。
「日本……日本の話はやっぱり避けては通れないね。日帝強占期(韓国で日本統治時代を呼ぶ名称の一種)までずっと日本のことが出てくるはずだけど、そもそも日本は明治維新を経験しているじゃない。その前にアメリカが――ペリー提督が軍艦を率いて『門を開けろ!』と脅し、無理やり開国させた、あの出来事をそのまま使ったんだよ。面白いよね?」
そういえば、普段は仁川に住んでいながら、この辺りをじっくり見て回ったことはあまりなかった。せいぜい玉蓮洞や、唯一の親友と一緒に行った九月洞、富平くらいのものだった。今回の授業で訪れる江華島には、行ったことすらなかった。
「みんなアヘン戦争覚えてる?」
「はい」と答えるのはアイシャ一つだけだった。残りは頭をうなずいたり、まったく答えがなかった。
「それだけ当時はどんな時代だったのか?帝。国。主。義。帝国主義の時代だったわ。以後、中国が第二次アヘン戦争、これも覚えているの?」
2時限目は数学だった。
くたびれた印象の中年男性教師が担当するその授業では、この日は関数と一次関数のグラフがテーマだった。
彼女は数学が好きではあったものの、成績は3、4等級を行き来する程度だった。教科書の下にこっそりと問題集を忍ばせ、教師が問題を解くよう指示している間に、それを少しずつ解き進めていた。まあ、解いていたのも結局は数学の問題だったから、特に罪悪感はなかった。
3時限目の国語と4時限目の体育が終わり、昼休みになる前の3時限目の休み時間に、アイシャは献立表を見た。
9月1日(月)
白ご飯
イカの湯引き、ブロッコリー
白菜キムチ
カルビチム
ウゴジ(干し菜)の味噌汁
デザートにリンゴさえない日であり、何よりも彼女の月曜日をいっそう陰鬱なものにする「イカの湯引き」が出る日だった。
列に並んで、食べかすのついたままのトレイとカトラリー(途中で唐辛子がこびりついたスプーンがあり、別のものに取り替えた)を手に取り、栄養士に挨拶をして給食を受け取ったアイシャは、それを見て、何と言えばいいのか全く思いつかなかった。
イカは、それが生であれ、茹でたものであれ、揚げたものであれ、どうしても受け入れがたい「怪生物の死骸」だった。ゴムのように白い上に紫色の部分まであって、動物の死骸を調理したものだとは到底思えなかった。
その食感は、口の中や食道を汚染するかのように気味が悪く、異様だった。
まだ胴体はよかった。問題は足だった。足の吸盤が舌に触れた瞬間、吐き気を必死にこらえた。毒があってゴツゴツした熱帯地域の虫を噛んでいるような感触だった。せめてもの救いであるカルビチムを食べて、ようやく少しは落ち着くことができた。
ウゴジ(干し菜)の味噌汁がこぼれたままの床を横切り、イカや骨の破片、手つかずのご飯、キムチ、ウゴジ、カルビチムのニンジンなどが混ざり合った残飯処理場の前を通り過ぎて、返却口に食器を戻してから教室へ向かった。
その後、トイレでアイシャは、あちこち傷んで毛先が抜け始めたプラスチックの歯ブラシに、残り少なくなった歯磨き粉を絞り出し、歯を磨いた。口をゆすぎ、歯ブラシと歯磨き粉を手に取って振り返ったその時、誰かと「コツン」とぶつかったのだった。
「え、ごめん…」
キム・ジヨンはぶつかった相手に謝ったが、ぶつかった相手は「チッ」と蒸し風呂のように苛立ちを露わにし、睨みつけてくるだけだった。
パン・ソンミだった。魔法少女名では「ショートヘア」と呼ばれていた人物だった。
小学生の時に髪の一部を薄紫色に染めていた女子生徒といえば、パン・ソンミしかいなかった。
松島からこの学校に通った彼女は、満10歳、つまり11歳の小学5年生の時に魔法少女としての活動を始め、その力で松島の魔法少女たちの頂点に立つと同時に、この学校の不良グループのリーダーでもあった。
教師も生徒も皆、彼女が魔法少女であることも、その界隈のトップであることも知っていた。普段は他の生徒に対して愛想よく笑いかけることもあり、教師とのトラブルもほとんどない彼女だったが、なぜか自分に対してだけは、ひどく攻撃的で意地悪な態度をとった。
また始まったか――。込み上げてくる殺意をアイシャは必死に抑え込み、ソン・ミの視線を避けるようにしてその場を立ち去った。
本音を言えば拳を叩き込みたかったが、せっかくの新しい人生だった。今さらロシアの先輩たちのように、むやみに変身して拳を振るうわけにはいかなかった。
やがて5時間目、6時間目が過ぎた。休み時間、彼女は数少ない民間人の友人であった趙倫正と「ハニーバターチップ」の話をしながら、最近の世の中の動きについて語り合っていた。
「ねえ、あのハニーバターチップって、なんであんなに人気のか?」
そばかすがあり、黒髪のボブヘアに丸眼鏡をかけたユンジョンがジヨンに言った。
「それがさ、フェイスブックとかツイッターを見てみてよ。あれ、マジで超絶美味しいらしいよ!」
「どんな味なの? ポテトチップスに塩の代わりに蜂蜜を加えたような感じではない?」
その時、裏口が開いて、金色(#FFD700)のツートンカラーのボブヘアをした白由羅がキム・ジヨンを呼んだ。
「ショートヘアが、学校が終わったら花屋の近くで会おうって言ってたよ」
キム・ジヨンは頷いた。ペク・ユナが立ち去るまでその姿を目で追っていたチョ・ユンジョンは、彼女を心配そうに見つめた。キム・ジヨンがどうしたのかと尋ねると、
「ああ、昼休みに歯を磨いてたら、うっかりあの子にぶつかってしまって」
チョ・ユンジョンは、ついにジヨンまでもが「あの女」に目をつけられてしまったことを悟り、事態がおしまいになったと直感した。
担任に助けを求めることさえできなかった。
女子校において人脈というのは極めて重要なものであり、もし担任に助けを求めれば、かえってそれが人脈にとって大きな損失となりかねなかったからだった。
「止まれ!」と腕を突き出したところで、どうにかなるような問題では全くなかった。悪の帝国の兵士や魔物の姿も見られなくなって久しく、魔法少女を管理する魔法王国も消滅した仁川では、まさにそういう状況だったのだ。
放課後、キム・ジヨンは黄色いリボンが描かれ、「セウォル号」の生徒たちを追悼する横断幕が掲げられた裏門から外に出ると、大通りに沿って松島駅の方へ向かい、遠回りをして帰宅しようとした。
しかし、大通りでついに、花屋の隣にいたパン・ソンミの一味と鉢合わせしてしまった。魔法少女たちは全員変身した状態で、その取り巻きである一般人(あるいは民間人やマグール)の連中もいた。
「おい、キム・ジヨン! こっち来いよ!」
仕方なく、彼女たちと対峙することになった。
「そう、ごめん。ミスだった」
キム・ジヨンは道の向こう側から叫んだ。
「貴様、私に10万ウォン(日本円で約1万円)弁償しなさいよ、このクズがッ! てめえのせいで気分台無しなんだから、弁償しろッ!!」
呆気にとられた。
「たかがそんなことで……?」
やがてパン・ソンミは「ったく、クソが」と吐き捨て、変身した姿のまま、まだ赤信号の横断歩道へと向かった。
「Сука Блять……(クソッ、畜生……)」
アイシャはネックレスを握りしめた。
本来、魔法少女というものは、自身の肉体が、思考や意識といった脳の機能を移した宝石――「生命石」、あるいは「ナマジュ」――とつながっているため、変身しようと決意さえすれば、掛け声や動作なしでも変身が可能だった。
彼女の生命石が光り始めた。




