ガム噛みすぎた
ドヤ顔和装は私達が驚きのあまり声も出ないと思ったのか、聞いてもいないのに詳しく語りだす。
「妾とカナメには神より与えられし使命があるのじゃ、此度はその為の準備をしておる。魔力ポーションを集めておった所そなたの店に行き着いたという訳じゃ。勇者が使うポーションを納品出来るのじゃ、利益、名誉共に充分な対価となると思うがのぉ。」
ドヤ顔和装はエルファさんに光栄な事なのだから優遇しろと暗に伝えている。
なんかムカついてきた。ドヤ顔といい、頷く無口といい、グーで殴りたい。
「与えられし使命とはどの様なことで?」
私はイライラゲージを溜めながらも極めて冷静に話す。
「童よ、先ほどから少し大人の話しに口を挟み過ぎじゃのぉ。妾は気が長いとは言えぬのじゃ。あまり無礼が目に余るとそなたなど消してしまいかねんぞぇ。」
この言葉にリファさんは怒気をスッと引っ込めた。
あっ。コレ駄目なヤツだ。怒りすぎて冷静にどう殺るか思考している段階だ。
私はリファさんを見て首を横に振る。
駄目ですよー。殺ったら楽だけど、元凶がいるんだからそっちも〆ないとねー。
「では使命を与えられた神の名など伺えますか?」
「貴様っ!童と思うて優しくしておれば調子に乗りおってっ!妾達を誰と心得ておるのじゃっ!貴様達下々の者達が神の名を知るなど不遜であるっ!死を持って償うが良いっ!」
和装は此方に手を向け魔力を構築している。
リファさんは直ぐに反応し何処からか短剣を取り出し両手に構えている。
どっから出たのその短剣。持って無かったよね?太もも?太ももなの?
短剣は気になるが、リファさんがプチっと殺っちゃいそうなので止めに入る。
「だまれ駄犬が。大人しくお座りしてろ。」
私は威圧をちょっと加えて相手の動きを抑え込む。思ったより弱かったらしい和装と勇者は膝を付き苦しそうだ。
「ぐっ、貴様っ!このニンニル様の眷属である妾に対してそのような無礼許されぬぞっ!」
うるさいなー。ちょっと威圧したら膝付いて動けないんだから黙っときなよ。
あとニンニルね。さらっと神の名教えてんじゃねぇよ。もっと一貫性を持てよ。
私はキャンキャン吠える駄犬を放置し、ネックレスを握り魔力を構築する。
ネックレスを離し手を開いてみるとそこには1枚の白い羽根が現れる。その羽根に更に魔力を流し、息をフッと吹きかければ、その羽根は少し浮かびフッと消えた。
これでいいかな。
駄犬はまだキャンキャン吠えてるかなとチラッと見ると、まだ膝を付いたままワーワー言っている。
「貴様必ず後悔させてやるっ!唯一の眷属フェンリルの名に掛けて貴様を必ず妾の前に跪かせてやるっ!」
うるさいなー。まんま悪役じゃん。殺られるヤツがいうやつじゃん。
黙ってお座りしてろ。あとうちの駄馬は何であんな遠くにいるの?逃げ足早ない?
うちの駄馬へのお仕置きを考えていると、いまいち状況が理解出来ていないエルファさんが私に尋ねてくる。
「あのー。使徒様?コレって大丈夫ですか?」
「あぁ大丈夫です。大丈夫です。今、上の人呼んでますから。ちょっと離れてましょうねー。」
そう話していると、少し遠くに神力が構成され始める、神力は無駄に高威力なので周囲にさらっと結界を張るのも忘れない。
高濃度まで濃縮された神力はやがて人型をつくる。
神の顕現だ。生命あるものならば贖う事の出来ない絶大な威力だ。
まぁ結界でバリアしてるんだが。
人型はやがて女性へと形作られ、そこにはとても神々しく美しい女性が現れる。
「私は風の神ニンニル。人の子に伝えます。神を顕現させるなど許されません。そのような禁忌を起こした人間は速やかに名乗り出なさい。」
まるで脳に直接話しかけられる様な言葉が聞こえる。神の力を持ってすれば囁きですら王都全域の生命に対して語る事など造作もない事だ。
まぁバリアしてるんですが。
「ニンニル様っ!唯一の眷属フェンリルで御座いますっ!そこの童が神の使命の邪魔をしようとしていますっ!どうか偉大なる神のお力で神罰をっ!」
親玉の登場に駄犬は尻尾ぶんぶん丸だ。虎の威借りまくってんな。狐なの?犬じゃなくて狐なの?
駄犬の言葉に神は初めてこちらに視線をやると、私と目が合った瞬間に硬直した。
「る、ルカ様?」
そうです私がみんなの人気ものルカ様です。頭が高いぞ下級神よ。
私の存在を認識した下級神はもの凄い勢いでダッシュしてきてスライディング土下座してきた。
「風の貴婦人ニンニルここに。」
「いやー、ごめんね。ちょと聞きたい事あって。」
「いえいえ、全然大丈夫ですっ!凄い暇してたんでっ!ルカ様の神力でしたか。何か見たことある羽根だなーって思ってたんですよっ!」
手のひらくるんくるんである。神とはいえ下級神じゃあね。階級社会だから神界も。
ニンニルのスライディング土下座に目が点になった駄犬と黒髪は「えっ!?ニンニル様?」と呟いている。君達はまだお座りしてなさい。ちょっとこっちに話し聞くから。
「それで、あっちの駄犬と黒髪が何やら君のお知り合いみたいだけど?因みに黒髪は勇者らしいよ?」
私の言葉にニンニルは自分の眷属であるフェンリルと加護を与えた黒髪を見る。
すると顔面を青ざめさせダラダラと汗を流し始めた。
「そ、その一応知り合いではあります…」
彼女の言葉に駄犬と黒髪はショックを受けている。かたや唯一の眷属として存在してきた駄犬、かたや異世界召喚されて加護やら何やら貰った相手なのにちょっと知り合いですくらいの感覚だと言われてしまう黒髪。ずっ友だと言い合っていたのに、急に知ってるのは知ってますみたいな対応されたら立ち直れないよね。
「知り合いねぇ。眷属はともかく、ニンニルには勇者の知り合いがいるんだー。へー。初めて知ったなぁ」
「そ、その異世界召喚しまして…」
「えっ!?我が主たる神が異世界召喚に御心を痛めていらっしゃるのに!?あっ!そうなんだ、君達下級神の中では我が主神はそんな感じの扱いして大丈夫なんだっ!」
「けっ、決してその様な事はっ!ごっ誤解で御座いますっ!我が主神様に対してその様な無礼は決してしておりませんっ!」
「えっ!?でも異世界召喚してるんだよね?」
「こ、今回は迷える魂を救う為に止むなく…」
下級神の言い訳に私は「はぁ」とため息をつく。まったくいつもいつもやりたい放題やりやがって。
お前らみたいなのがいっぱいいるから、異世界ヒャッホーが出てくるんだよ。
いい加減下級神の間で異世界流行らせるのやめろ。
「我が主神も決して全ての異世界召喚が悪だとは申しておりません。ただ、どれを見聞きしてもテンプレばかりなのに御心を痛めておいでです。」
私の言葉にニンニルはビクッとしている。もっとさぁ異世界召喚やるなら違うの出せよ。勇者、魔王、フェンリルに、俺やっちゃいました?、学園編に温泉回に海回、ハーレムパーティーに追放ざまぁ、マヨネーズとカレーとリバーシでもうガムの味しないんだよっ!
そりゃ主神様も飽きたって言うわ。
「主神様の使徒として、貴方達下級神にはもっと節度を求めます。」
私の言葉にニンニルはしょぼんとしている。反省なさいっ!
「さて、駄犬と黒髪。」
情緒不安定であろう2人に声をかける。
2人はビクッとしてこちらを恐る恐る見る。
「お前ら異世界っ!。異世界っ!うるせーんだよ。」




