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シャチ

シャチ。

海のギャング。

イルカかな?と思って並走なんかしたらガブッといかれるやつ。

黒と白が可愛い。


今まで数多くの転移、転生を扱ってきたがシャチは初だわ。

シャチ。なんでシャチ!?いや、もっとこう選択肢とか無かったの??人魚とか、海竜とか無かったの?

いや、シャチがどうとかでは無いだけど。


私の混乱を察したのかルッカさんも「やっぱり今まで無いですよね。シャチ。」と不安顔だ。

とにかく見て見ようと登録試験が行われる訓練場へと移動する。

因みに試験官はネフィアである。流石脳筋宣教師だ。チラッと「頑張ってね。」と伝えるとその場に跪き「ボコボコにして使徒様に捧げます。」と祈りを捧げていた。何を捧げる気なのだろう。こわい。


訓練場には多くのギャラリーが待ち受けていた。ざわざわと、あれが使徒様、あんなチビがと多種多様な感想が飛び交っている。困惑5割、好意3割、侮り、侮蔑2割といった所か。ネフィアは2割に「顔覚えたからな。」とメンチ切っていた。

そんな訓練の中央には真っ黒なツヤツヤした肌の人物が1人立っていた。

顔はまんまシャチ。胴体も尾ビレまであって確かにシャチだ。ただ胸ビレが人間の腕のようになっていて、胸ビレから尾ビレの間に足が生えている。2足歩行のシャチだ。

シャチはルッカさんを見つけるとニヤッと笑い「俺の対戦相手は見つかったか?」と傲慢な態度でそう告げた。


「本日の登録試験はマサキ様のご希望によりAランク冒険者を招集させていただきました。」

そう告げられネフィアが1歩前へ出る。

「おいおい、女が相手で大丈夫かよ。俺様は力加減なんて出来ないぜ。」

「問題ありません。彼女はAランク上位の実力者だと冒険者ギルドが保証いたします。」

「間違って殺してしまっても問題は無いんだよな。」

そう告げるシャチにルッカさんは口籠ってしまう。


「シャチは海へ帰れ。」

散々煽られて怒り心頭だったのかネフィアは殺気を滲ませ声でハッキリと告げた。

「おいおい。随分と威勢のイイお嬢さんだな。俺は加護持ちだぞ。泣き見る前に謝ったほうが身のためだぜ。加護持ちの意味がわからねぇ訳じゃないだろ。」

「黙れシャチ。黒光りして気持ち悪いんだよお前。」

ド直球である。強さ云々ではなく、外見を攻撃しやがった。いや……まぁね。わからんでもないけど。


煽られ返されたシャチもご立腹である。

「てめぇ、死んだぞ。レベルカンストの力見せてやるよ。」

シャチはトライデントを地面に突き刺すと臨戦態勢だ。レベルカンストとという言葉に周囲の冒険者たちも驚きを隠せない。そんなに強いのか、あり得ない、そう口々に語っている。


コレは駄目だ。死んじゃう。場の空気はピリつき、いつ戦闘開始になるか分かったもんじゃない。

やりたくないが仕方ない。だって使徒様なのだから。黄緑だけど。


私は右手をビッ!っと真っ直ぐ伸ばし手を挙げる。

「はいっ!!質問ですっ!」

そんな私の大声は訓練場に良く響いた。

「なんだぁ、ガキがなんの用だ」

私をガキと呼んだ事でリファの殺気がまた1段階上がったが気にしてはいけない。まて。まてだよリファ。


「シャチのお兄さんは強いみたいですが、レベルいくつなんですか?」

そんな私の言葉に周囲は邪魔してんじゃねぇといった雰囲気だ。カンストはカンストだろうがといった空気だ。

「おぃおぃ。ガキがそんな事も知らないのか、カンストってのはレベル最大って事だよ。俺は転生する時に神から加護とレベルカンストを貰ったのさ。」

「だから俺は、」

「レベル99だ。」

……


シャチのドヤ顔が周囲を無音にする。


「…あのぉ。レベルカンストですよね?」

「だからそうだって言ってるだろ?神もこの世にレベルカンストはいないって言ってたぜ。」

「……それで、レベルはおいくつで?」

「だから99だって言ってるだろうがっ!」


「いやレベル99は初心者冒険者だから」

「えっ?」

いや、えっ?ではなくて。


「何処のどの神に会ったのかは存じませんが、この世界のレベルは4桁だと考えられてます。まぁレベル9 9 9 9まで到達した種族がいないので憶測ですが。」

私の言葉にシャチは口を大きく開け愕然としている。


なんなの?歯医者なの?歯並び良いね君ら。


「えっ?」

いや、まだわかんないのかな?レベル99は初心者冒険者のレベルなの。

「あのぉ。貴方の前にいる女性。レベル1500超えてますよ?」

「先日1700になりました使徒様。」

私の言葉を丁寧に修正してくれる狂信者はそっとしといて、未だに愕然としているシャチは再起動する様子は無い。

「レベル1700にレベル99はちょっと無理があるかと。」

ちょっとどころじゃないけどなっ!下手したデコピンで爆散するわ。使徒様は死人は出したくない派なのだ。やるときゃやるけど今じゃない。


「何だよ初心者レベルかよ。」「時間無駄にしちまったな。」「使徒様のローブ何処で買えるのかな?」

カンスト発言からレベル99発言まで黙って見ていた周囲の冒険者が悪態をつきながら訓練場を後にする。

最後の君。使徒様のカエルローブは非売品です。

あと口だけシャチかよって言ったやつ、言いたい事はわかるけど、なんか口の形状がシャチな感じとごっちゃになるから違う言い方しなさい。


ぞろぞろと冒険者達が退出した訓練場で居た堪れなくなった私はシャチに声をかける。


「えっと…海帰ります?」


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