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違う話しをしよう

室内には雨音だけが響いている。

私は深呼吸して周りを探る。

うん。大丈夫だ。落ち着くんだ。

まだだ、まだ彼女達に気付かれてはいない。大丈夫だ。


ふう。と一つ息を吐く。

危なかった。駄目なのだ、姉さま達の話題をしてしまうのは。

使徒とは神の代行たる故に使徒なのだ。


「それで、東区の冒険者ギルドに異世界人でも来たんですか?」

私は話題を戻す。異世界人関連の話題を広げたくはないが、こればっかりは仕方ない。先ほどの話題は駄目なのだ。

そんな私の心を知ってか知らずか、ゴリラは続きを語る。

「あ、あぁ。厳密に異世界人かはわからんらしいのだが、冒険者登録でSにしろって言ってきたヤツがいるらしい。まぁ初登録の冒険者が絶対に弱い訳ではないので、ランク評価の為に登録試験があるんだが、1番強いヤツ出せって煩いらしくてな、まぁそれで、噂の異世界人じゃないかってなったらしいんだ。」

ほう。確かに強いヤツが冒険者登録しているとは限らない。そんな人がFランクの猫探しとかはやってられないから、登録試験である程度のランクに振り分けられる。そんな中にSランク登録でとは馬鹿か異世界人かどちらかだ。そもそも高ランク冒険者、それと同等の強さの人物は顔見しりが多い。いきなりぽっと出の高ランクなどいないものだ。


「まだ登録試験はしていないので?」

「あぁ、東区冒険者ギルドとしても、そこまで言うならSランクは無理でもAランク冒険者を試験官にって事で、今日の昼からやるらしい。」

「それはまた…。しかし試験官がAランクなら問題ないのでは?ボコボコにされておしまいでしょ?」

「いやぁ、それはそうなんだか東区冒険者ギルドも使徒様との繋がりは欲しいらしくてな、異世界人が来た時の対応とか全然わからないらしい。」

「まぁ私も東区冒険者ギルドでの活動はありませんから、必要といえば必要ですが…」

いやー、でもなー、雨降ってるんだよねー。

濡れたくないしなー。ローブに雨びちゃってなるの嫌なんだよなー。


「だろっ?だから西区の冒険者ギルドから繋いでくれって俺が出て来たんだよ。馬車も用意してあるし、行こうぜ旦那。」

えー。でもなー、雨降ってるしなー、水たまりに靴びしゃってなって靴下ぐちょぐちょになるの嫌なんだよねー。

「かえりに東区の果物通りのタルト奢るからよ。頼むよ旦那。」

何だとっ!それは行かねばっ!

「リファ。すぐ出る。用意を頼む。」

私のキリっとした顔と言葉にリファは「かしこまりましたぁ。」と気の抜ける返事をしながら退出していく。うん。あの子はいつもマイペースだ。


リファから用意が出来ましたぁと声を掛けられ、私は玄関ホールへとむかう。

ゴリラは馬車を回してくるようでここにはいない。

外はまだ雨が降っているので雨用のローブを着せてもらう。


使徒の着る服は形式的に決まっている訳ではないが白に金の刺繍がベースだ。刺繍の模様や丈の長さなどは人それぞれで、主神様の印、ネックレスがあれば使徒としての力は行使出来る。私は刺繍の入った白のポンチョの様な服に、コレまた刺繍の入った白いローブを羽織る事が多い。あまり派手派手しくはないが、緻密な刺繍は芸術品とも言われるような出来の品だ。

白と金の刺繍が主神様の使徒たる姿と言われるのだ。

それこそ天地創造以来、神の使徒たる者達は純白の布に金の刺繍を施し、神の代行として秩序を守ってきたのである。

使徒以外に白い布と金の刺繍はタブーとされる。

法律とかでは無いが、風習、習慣、慣例、畏怖、尊敬といったやつだ。


何故私が長々と白と金の刺繍に対して話しているかというと、リファから渡された雨用ローブがおかしいのだ。

私は渡されたローブをチラりと見る。さっきから視界に入っていたがおかしいのだ。


緑なのだ。


いや、中に着ている服は白のポンチョに金の刺繍で使徒様の威厳たっぷりなのだが、着せられたローブが緑なのだ。しかも割りと鮮やかな緑、いや黄緑。


「リファ。これ合ってる?」

「使徒様ぁ似合ってて可愛いですよぉ。」

可愛いとかではなくて、使徒として合ってるか聞いたんだけど。

「フードにはカエルさんの目と耳付きですぅ。」

話し聞いてたかな?使徒として間違ってないか聞いてんだけど。

え?コレで外出するの?フードに目と耳付いたカエルさんで?

え?雨だから?雨仕様のカエルさんなの?

「ミリー様から雨用はコレだと伺ってますぅ。」

ミリーか。もうヤツに抵抗しても仕方ない。勝てないんだ悪魔憑きには。


タイミング良くやってきた馬車の中からゴリラの爆笑が聞こえる。

私は諦めてトボトボと馬車へと向かう。


おいっ!ゴリラ歯ぁ食いしばれっ!グーでいってやるっ!左頬をグーでいってやるからなっ!

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