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それでも彼らはやってくる


「いやレベル99は初心者冒険者だから。」


私は雨上がりの午後、東区にある冒険者ギルドでシャチ族の青年にそう告げる。

毎回毎回奴らはなぜ学ばないのか。

「何処のどの神に会ったのかは存じませんが、この世界のレベルは4桁だと考えられてます。まぁレベル9 9 9 9まで到達した種族がいないので憶測ですが。」


私の言葉にシャチは口を大きく開け愕然としている。

なんなの?歯医者なの?歯並び良いね君ら。


今日は雨が降っていた。

朝食を終え、書類仕事をダラダラとこなしているとノックの音が聞こえる。

部屋付きメイドのリファが扉まで向かい何やらやり取りをしている。

「使徒様ぁ。ディラン様がお見えだそうですぅ。」

そんなリファの言葉に私は仕事の手を止め椅子の背もたれへと身体を預ける。


「……ディラン。」

私が呟いた言葉は雨音しか聞こえない室内でも何故か良く通った。

私の呟きの意味を理解したのか、はたまた自分が仕える主人を熟知したゆえか、リファはすぐに私の欲しかった言葉をくれる。


「西区冒険者ギルドのディラン様ですぅ。」

あー。ゴリラね。なんかそんな勇者みたいな名前だったな。

すっかり忘れてたわ。

「動物園から逃げ出して何の用だ。」

私の独り言にリファはまたしても答えをくれる。

「東区の冒険者ギルドからぁ使徒様にご相談だそぅですぅ。」


東区?あぁ東区の冒険者ギルドは海関係だからあまり関わりがなかったかな。

書類仕事も飽きてきたし、話しを聞いてあげようではないか。


多少の暇つぶしにはなるかと私は応接室へと向かう。

リファが開けてくれた扉の先には野生のゴリラが紅茶を飲みながら待っていた。

「バナナあげるから森へお帰り。」

「随分な挨拶だな旦那。少しは背が伸びたかい?」

私の最上級のもてなしに対して皮肉で返してくるとは、なんてゴリラだ。バナナあげないぞ。


「冗談はさておき、先日は世話になった。月下の騎士の連中もちゃんと返済しながら冒険者やってるよ。」

「はて?月下の騎士?」

「随分と薄情だな旦那。ハヤト、サキ、アカネの異世界人達さ。」

あぁっ!あの幼なじみハーレム糞野郎かっ!あまりにもテンプレ過ぎて忘れるトコだった。

「それは良かった。で、今日は何用で?」

「あぁ、実は東区の冒険者ギルドから使徒様に質問があるらしくてよ。東区の冒険者ギルドは海運関係が多くてあんまり使徒様と関わりが無いからこっちに話がきてよ。」

ふむ。確かに東区の冒険者ギルドとはあまり関わりがない。

全く無いわけではないが、西区冒険者ギルドと比べると雲泥の差だろう。

これは王都の地理による。王都は東に海、西に森、南に平原、北は山と大雑把に言えばこんな立地である。

テンプレなのか何なのか、異世界人は西の森か、南の平原からやってくる。

必然的に西区、南区の冒険者ギルドには異世界ヒャッホー達が集まる、東区は海の為か異世界人があまりこない。全くではないが、異世界あるあるで無人島から脱出はメジャーではないのだろう。

因みに商業ギルドだと西も東も北も南も関係なく異世界ヒャッホーは現れる。強いて言えば流通の面で商業が活性化している東区の商業ギルドが若干多いくらいか。マヨネーズ量産野郎が良い例だ。


「確かに東区の冒険者ギルドとはあまり関わりがありませんね。」

「だろ?だからこっちに話がきてよ、東区のヤツが聞きたいのは海の神様も異世界召喚したりしますか?って事らしいんだが…」

ゴリラの言葉に私は難しい顔をする。

「それは何とも言えないですね。神にも力の強弱はあります。我が主神たる神を頂点に様々な神が存在します。我が主神、それと5大神様は異世界召喚など行いませんが、全ての神の行動が監視されている訳ではありませんので。信仰心により生まれた神も我が主神たる神も等しく神であるのです。」

うん。神神言ってたら神がわかんなくなるわ。


「じゃあ海の神様でも異世界召喚する可能性はゼロではないのか。」

「まぁそうですね。ゼロでは無いですね。」

「異世界召喚は神なら誰でも出来るもんなのか?」

「いえ、それは先ほども言った力の強弱によります。しいて言えば格とでもいいますか、ある程度の力がないと理に干渉する事はできません。」

「異世界召喚できる神はある程度格が上の神様って事か。」

いや、まぁ格にもピンからキリまであるもんで。そりゃある程度の力はあるけどって話だけれど、例えが見つからない。まぁ面倒くさいので黙っていよう。

「因みに旦那達使徒様はどれくらいの格なんで?」

ゴリラはニヤッとしながら挑発してくる。凍ったバナナで殴ってやろうか。

「我々使徒には厳密に神と比較出来るような格というのはありません。」

これは本当である。神は神なのだ。

「しかしながら、敢えて力の強弱で判断するならば…。」

「するならば?」

「我が主神を第一位とした場合、その下に5大神様がた、その下が我々使徒。その下に神々といった具合でしょうか?」


……

私の言葉にゴリラはびっくりした顔をしている。

きっと脳内が思ってたんと違うっ!となっているんだろう。

残念でしたっ!バーカっ!バーカっ!こちとら主神様の使徒ぞっ!使徒様舐めとるんか我っ!

滅するぞっ!お前らゴリラ教なんて小指でピンっ!じゃいっ!


「…そ、そんなに力が上なのか旦那は。」

「いや、そりゃそうでしょ。主神様の使徒ですよ?合ってるかわかりませんが、主神様が国王、5大神様が公爵、我々使徒が王子、王女、異世界召喚出来る神が貴族、出来ない神が民。権力で言えばこんな感じですよ。」

いや、合ってるかわからんけど。権力構造的には間違ってはいないだろう。

「そんな小さいのに……」

おいゴリラ表出ろ。今日は特別にチョキで相手してやる。パーとグーを通り越したチョキで目をドゥーンしてやる。

「でも旦那は第4使徒なんだよな?じゃあ旦那の上に3人……」

「やめろっ!!!」

思ったより大きな声がでてしまった。私の怒鳴り声にゴリラもびっくりしている。


「だめだ、その話題はしてはならない。」

私の真剣な声にゴリラもゴクリと喉を鳴らす。

そうだ。姉さま達の話をしてはならないのだ。


「世の中には触れてはならない事があるのです。」

私の声は雨音に消える事もなく、確かにハッキリと部屋に響いた。

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