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技術とは

領収書の死闘から早3日、私は今日もやさぐれながら王都を徘徊する。

まだ間に合う宛名間違いの領収書を書き直してもらうためだ。

王都は広い。1日では周りきれないくらい広い。そんな中を領収書片手にぐるぐる移動する。

一昨日は西区、昨日は南区、今日は東区。

因みにゴリラは西区が生息地だ。バナナの植生が西区なのだろう。

今日も声を掛けてくる王都民たちににこやかに笑顔を振りまきながら進む。笑顔は大事だ。なんたって使徒様はみんなのアイドルなのだ。心では領収書の件で怒り狂っていてもスマイル100%なのだ。


「使徒様。」

またファンかやれやれ人気ものは困るな。と思いながら振りかえると、そこには金髪ロングを腰まで伸ばした和装の美女が従者に番傘を差され立っていた。

「げっ!」

「げっ。とはまた随分なご挨拶ですなぁ。使徒様。」

「イヤイヤ、レイコさんにこんな所でお会い出来るとは思ってもみなかったもので、無作法な装いのままで申し訳ないと思った次第。」

「まぁまぁ、私と使徒様の仲でございます。そんな事はこれっぽっちも気にする必要はございませんよ。」

「そう言って貰えるとありがたい。では、私は失礼して。」

「まぁまぁまぁ使徒様。久しぶりにお会いしたのになんて悲しい事を。」

「いえいえ、美しく聡明なレイコさんの貴重な時間をこれ以上私が独占する訳にはいきますまい。」

「まぁまぁまぁまぁ。嬉しい事を言ってくれますね。お礼にお茶でもいかがですか?サスケ、お茶の手配と私の午後の予定はキャンセルなさいな。」

「はっ!姫様。」

サスケと呼ばれた従者はさらにその後ろにいる者へと指示を出す。逃げ道が塞がれてしまった。相手に気づかなかったのが運の尽きだ。怒りで使徒様センサーが鈍くなっていたのか。


「使徒様。こちらへ。」

近くのカフェのテラスへと案内される。席に座っていた人達は従者が何やら小袋を渡して移動してもらっていた。賄賂だ。まごう事なく金の力だ。恐ろしい。

席につくと注文していないのに紅茶が出てくる。

「そういえば、東区の冒険者ギルドで何やらゴタゴタがあったとか。」

目ざとい。いや耳ざといか、東区と西区は結構な距離がある。口伝が基本のこの世界、噂が流れてくるのに1週間しかも冒険者ギルド内のゴタゴタなど知っている人は知っている、そんなレベルの話しだ。

「随分と情報が早いですね。流石はレイコさんだ。」

「商人は情報が命でございますから。それに…」

彼女は紅茶を口にして一息いれる。

「週間使徒様に書いてありました。」

……

あのど腐れストーカーがっ!

「そ、そうですか。」

「えぇ、いつも楽しく拝見させていただいております。」

おのれストーカーめ。いつか必ず見つけだしてやる。

「それにしても異世界人も増えてまいりました。我が商業ギルドにもちらほらと。幸い特許、簿記等の知識が浸透した商業ギルドでは使徒様の手を煩わせる事が少なくなってまいりましたが。」

「流石は商業ギルドですね。そういった異世界人に説明、納得させれる職員を育成されているのは素晴らしい。冒険者ギルドにも見習ってもらいたいものです。奴らはゴリラを職員にするくらい脳筋なので困ったものです。」

「先日も商業ギルドへとマヨネーズの量産について進言してきた者がおりました。卵を大量に入手し、大規模工場によって生産販売すると。」


またおバカな異世界人が現れたらしい。マヨネーズは量産出来る訳がない。まず卵の大量入手が不可能だ、どんだけでかい養鶏場が大量に必要だと思っているんだ。そしてどうやって温度管理、長期保存、流通を可能にするというのか。そして奴らは口を開けばこういうのだ、異世界だから魔法で何とか…と、馬鹿か。

密封する技術もない。卵も大量入手が不可、殺菌技術体系も万全ではない、そんな世界で何故量産出来ると思うのか。各家庭に1つマヨネーズというのは高度な技術、衛生管理を元に成されているのだ。


「商業ギルドとしましても現在は各お店単位、もしくは複数の店舗共同で各商会に注文する具合です。マヨネーズ類の普及は大変魅力的なのですが、彼らからの提案には具体性や懸念事項への解決策などはなく、フワッとした感じで魔法でどうにかならないのかと…、職員も困っておりました。」

マヨネーズは鮮度が大切だ。そりゃそうだ密封してないんだから常温とはいかない。

今は個人的にマヨネーズ作る人。

店舗用に自分で卵を確保してマヨネーズ作って出す人。

販売用にマヨネーズを作って卸す人。

この人達が余剰分を計算しつつ在庫が出ないように調整しているのだ。

パン屋と同じだ、朝から必要量を作る。人力なのだ。

マヨネーズ工房はシャカシャカ通りと呼ばれるくらい毎日朝からシャカシャカしているのだ。


まったく嘆かわしい。異世界!異世界!言っているからそうなるのだ。

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