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がんばる

メイドのミリーに見つかり屋敷までドナドナされた私は溜まった書類にサインをしていた。

おやつはもちろん無しだ。

帰り道で背後から「お目当ての呪いの魔導書は見つかりましたか?」などと言われてしまっては、とてもじゃないがおやつ食べたいなど言えるわけがない。

私は地雷を避けれる使徒様なのだ。

決してビビった訳ではない。


退屈な書類に目を通しながら、明日は何処へランチに行こうか考える。

今日はお肉だったから明日は魚の気分だ。王都は海に面しているので魚、肉と新鮮なものが多い。やはり母なる海は偉大なのだ。これがもし山奥に王都なんか作った日には毎日肉と野菜しかない。干し肉なんか毎日毎日食べ過ぎて顎で石を砕けるようになるかもしれない。


現実逃避しながらも書類仕事を進めるとふと気になるものを見つける。

当社比50%増で真剣に書類に目を通す。これは由々しき事態である。もしココに書かれている事が本当であるならば、早急に対応しないとまずい。

私は取り得る手段を脳内で構築しつつも最良の解決策を探る。

一先ずこの書類が正式なものなのかの、各担当者の印が間違いなく押されているかを確認していく。

間違いであって欲しかったがどうやら正式な回答書のようだ。

「あのぉ、ご主人様ぁ、どうかなさいましたかぁ?」


私が一つの書類をじっと見つめ微動だにしない事を不安に思ったのか部屋付きメイドが聞いてくる。

「あぁ、リファ。少しこの書類に問題があってね、詳しい話しを聞きたいから担当者を至急呼んでくれるかな。」

そう言うとリファは「かしこまりましたぁ。」と頭を下げて退室する。

少し冷めた紅茶を飲みながらどうしたものかと思案する。

情報が足りないなと気分転換に窓の外を眺めていると、扉をノックする音が聞こえたので入室をうながす。


入って来た文官の男性職員はお呼びと伺いましたが。と私の執務机の前で直立する。

「コレはどういう事だ。」

私はその職員の前へ書類を軽く投げる。勢いのついた書類は職員の前まで進み止まる。

「拝見します。」

そう言うと職員は書類を手にとり読み進めていく。室内にパラパラと書類をめくる音が響く。

私は両手を顔の前で組み彼の目をじっと見つめる。

「こちらの書類は上司に相談した結果、不可案件となり決裁されております。」

「何故だ。裁量の範囲だろう。」

「範囲の問題では無いのです。形式としてという判断です。いろいろと比較参照しましたかが、こちらの件に関しては前例がなく、尚且つコレを可としてしまうと以後問題が生じてしまいます。」

「君達の意見はわかった。しかしコレを不可とした場合に起こりうる被害額を考えた事があるのか?どれだけの民が被害に合うのだ?」

私の言葉に担当者は少し淀んだ。

「被害額の予想は前年度の30%だと予想しております。」

「30%だとっ!」

私は声を荒げ担当者を睨む

「し、しかしこの予想はこのまま推移した場合の予測でして。」

「それでどれだけ困る人が出ると思っているんだっ!」

私はダンっと思わず机を叩いてしまう。こんなの冷静になれる訳がない。民に被害が及ぶのは許されない。

「わ、私達も何とか力を尽くしたのですが…」

「力を尽くした結果が不可だから受け入れろというのかっ!」

声を荒げ反論する。私が、私が声を上げなくては。

30%の被害額などあってはならない。


ガチャと扉が開く音が聞こえた。

スーと室内に入ってきたのはリファではなくミリーだった。

「ノックに返答がありませんでしたが。廊下にまで聞こえる声を出してどうかされましたか?」


ミリーの顔をみた職員はほっとした様子でミリーに事の次第を伝える。

ミリーはふむふむと頷きながら書類をパラパラめくり内容を確認している。


「不可です。」

私の顔をまっすぐ見つめ彼女は断言する。

「何故だっ!どれだけの被害が出ると思っているのだっ!」

「被害も何も、そもそも宛名を間違った領収書は経費として受理出来ませんというだけです。」

私は負けないっ!

「ちょこっと間違えただけだろっ!」

「ちょこっとも何も宛名が使徒様じゃなくて人様とかになってますので。」

「わかるだろ使徒様って!」

「第三者からみてわからないから法律があるのです。」

「被害額が大きすぎるだろっ!」

「領収書落ちない分は使徒様の実費となりますね。」

「誰だよ人様って書いたヤツっ!」

私は誰が書いた思い出せない人様宛名の領収書を握り潰す。

「民が困るだろうがっ!」

「それは書き直した場合はお手間をかけたかもしれませんね。」

「ん?かけたかも?」

「はい。もう決算書として提出してますので変更は不可です。」


あぁぁぁぁぁあああぁぁあっ!!


領収書はちゃんと確認しようと心にきめた。

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