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その知恵、世界の礎(いしずえ)につき ~現代知識で異世界を便利にしたら、女商人と共に世界の道理を書き換えていた~  作者: カミツキ
文明開化編

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第23話 その轟鳴、雷光の断罪につき

ヴァレー領の軍議場には、重苦しい沈黙が立ち込めていた。


領主が下したアラインカプスへの総攻撃命令に対し、最前線の将軍が静かに首を振った。


「兵は出せません。我々の糧食も民たちの農具や食料も、リール商会なしでは成り立ちません。あそこを撃てば、明日から我々は生きる術を失います」


「貴様ら……反逆か! 領主たる私に従えぬというのか!」


領主の怒声に、将軍は冷めた目で応えた。

「これは反逆ではありません。……生存のための選択です」


背を向け去っていく兵たち。


残されたのは、狂気と執念に囚われた領主と、その威光に縋る数名の狂信者だけだった。


領主は吐き捨てるように呟いた。


「いいだろう。軍など不要だ。……この『神の力』さえあれば、私一人ですべてを終わらせてみせる」


* * *


アラインカプスの新たな外壁。

夕日に照らされた鉄筋コンクリートの壁は、不自然なほど滑らかで、冷たい光を放っていた。


「これで……よし。ガトさん、調子はどう?」


ガトは顔の汗を拭い、自慢げに外壁を叩いた。


「最高ですよ、湊さん。この壁、俺の火球をまともに受けても傷一つ付かないんだ。俺たちの魔力が、こんなに頑丈な『街の守り』になるなんてな。……飯がうまいですよ」


「ははは。でも食べすぎないでね。今夜はリールさんが、完成祝いの宴会を開いてくれるそうだから」


湊は満足げに、眼下に広がる街を見渡した。


リール商会が整備した石畳の道、石造り建築、そして幸せそうに笑う領民たち。


自分の知識が、この世界の誰かを笑顔にしている。


リールが優雅に扇子を広げ、湊の隣に立った。


「湊、本当にお疲れ様。これでようやく、アラインカプスは安全だわ」


「はい!ここが終わったら次は領主さんの館ですね。」


「そうね……どちらが早いか……」


「えっ?」


その時。


南の空から一斉に鳥たちが飛び立ち、ナノが鋭い視線を空に向けた。


「――湊、伏せろ!!」


ナノの叫びが響いたのと、「壁」が爆発したのは、ほぼ同時だった。


 音はない。


ただ、視界の端で湊が信奉していたコンクリートの外壁が、粉々に砕け散り、巨大な土煙が天を突いた。


「え――?」


事態を脳が理解するよりも遅れて、衝撃がやってきた。



――ズ、ドォォォォォォォォン!!



鼓膜を叩き割り、内臓を震わせる凄まじい轟鳴。


空気を超音速で切り裂き、着弾した後に追いかけてきた「音」が、遅れてアラインカプスを襲ったのだ。


轟音と共に、湊の足元が激しく揺れる。


湊が「絶対」と信じていたコンクリートの壁。


それが、巨大な鉄塊の直撃を受けた瞬間、砂の城のように粉々に砕け散ったのだ。


「う、あああぁぁぁぁ!!」


隣にいたガトが、爆風で吹き飛ばされる。


湊が見たのは、穴が空いた壁ではない。


コンクリートが「蒸発」し、周囲が凄まじい衝撃波で粉砕され、頑丈な鉄筋がまるで飴細工のように無残に引き千切られた光景だった。


「嘘だ……そんなこと……」


湊は震える手で地面を掴んだ。


リールは膝をつき、手から滑り落ちた扇子が、瓦礫の粉塵に汚れながら地面を転がっていた。


「想定外だわ……」


* * *


アラインカプスの国境沿い。


突如として現れたそれは、兵器というより、巨大な処刑台のようだった。


地面へ長く伸びる二本の鋼鉄。


その中央には、雷を帯びた鉄塊が装填されている。


湊が考案した「一定出力を保つ術式」を、「限界まで溜め込み、一気に解き放つ装置」へと変えたもの。


そして装置の中心――魔力回復薬で満たされた巨大な木桶の中に、エレナが沈められていた。


「あ……がはっ……」


強制的に流し込まれる魔力回復薬が、強引に魔力を練り上げ、代わりに彼女の精神を焼き切るような苦痛を強いる。


エレナの雷が、巨大なレールへ流し込まれた。


次の瞬間、超高速で射出された鉄塊が、アラインカプスの壁を粉砕した。


領主は装置の最上部で、狂った笑みを浮かべてレバーを握った。


「見たか……! これだ……! 我らの『雷電』を!これなら、まだ終わっていない……!」


領主の狂った叫びが、静まり返った戦場に響く。


超音速で放たれた鉄塊が、アラインカプスの領内へ向けて空を切り裂く。


だが、突貫で作られた木の桶の土台は、発射時の強大な斥力に耐えきれず、レールの並行がわずかに狂った。


木の桶からは回路の過熱による煙が立ち上り、エレナの悲痛な呻きが漏れ聞こえる。


* * *


湊は、崩れ去った外壁の残骸を見つめながら、膝を震わせていた。

「なにが……何が起こった!?」

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