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断罪された最強の女騎士、傭兵少女と地の底から逆襲を開始する 〜冤罪で国を追われた騎士団長は、王国を守るために牙を剥く〜  作者: 十目 イチ


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第23話 欺瞞と忠誠

 時計塔の天辺に立ち、『夜帷』の切っ先を王宮のルーバス公爵に向けるアルテアの姿は、さながら民衆を導く戦乙女のように見えた。

 広場の群衆の視線が集まる中、アルテアの言葉が続く。


 「王都の民よ! ルーバスの嘘に耳を貸してはならない! エリオス王子は死んでいない! 王子は今も存命で、このおぞましい魔装鎧の動力源として囚われているのだ! ルーバス公爵はその事実をひた隠し、王室を、この王国を我が物にしようとしているのだ!」


 アルテアのその凛とした、強い声は眼下の中央広場だけでなく、王都中に届いていた。

 それは時計塔の麓にいるミーナの風魔術の力によるものだった。

 微弱だが、アルテアの声を乗せた微風は、時計塔を中心に王都全体へと波及していた。 


 そして柔らかい風に舞い散る白の花弁が、まるで雪のように時計塔を包み込んだ。


 中央広場の群衆にどよめきと、動揺が広がる。それは広場を取り囲む騎士団や公爵私兵団も動揺だった。

 現に彼らは誰一人として、アルテアを捕らえる為に足を動かす者はいなかった。


 だがそのアルテアに剣を向けられた当人……ルーバス公爵は嘲笑を伴って、彼女の言葉に応える。


「……なるほど。死にぞこないの亡霊が、随分と面白い御伽噺おとぎばなしを携えて戻ってきたものだ」


 混乱する群衆とは対照的に、ルーバス公爵はゆったりと眼下の広場を見回し、鼻で笑った。

 その表情には焦りなど微塵もなく、むしろ手中の獲物を眺めるような、薄気味悪い余裕が漂っている。


「エリオス殿下が生きている? その命が魔装鎧の動力源だと? ……ふむ、大罪人アルテア。貴公の妄想は、もはや治癒師の手にも負えぬレベルに達しているようだな。哀れなことだ」


 ルーバスは優雅に手を挙げ、その手を広場を囲む騎士団と私兵団へ向けた。


「この反逆者を始末せよ! 平和の守護者たちが、エリオス王子殿下の無念を晴らし、貴公の虚言を永遠に封じてくれるだろう!」



 その合図と共に、数体の魔装鎧が異様な駆動音を立てて突進を開始した。

 

 ウィィィィン!!

 

 耳を突き刺す高周波の音と共に、鋼鉄の甲冑が弾丸のような速さで群衆を掻き分ける。

 逃げ遅れた市民を路石ごと跳ね飛ばし、広場に敷き詰められた白い花を泥と油で汚し、魔装鎧たちが、アルテアのいる時計塔を目指す。


「ぐっ……なんて出力だ……!」


 群衆から飛び出したザックスが、魔装鎧の鉄の腕から繰り出される一撃を、大剣で受け止めるが、その腕は激しく震え、足元の石畳が圧力で砕ける。

 ロイの斧も、カレンの投げナイフも、魔装鎧の分厚い装甲に火花を散らすだけで決定打には至らない。

 魔装鎧はもはや「兵器」ですらなかった。それは一切の慈悲を持たず、ただ目標を抹殺するためだけに動く、鋼鉄の暴力そのものだった。


「ひるむな!……アルテアに近付けさせるなっ!」


 ザックスが咆哮するが、その周囲では、命令と真実の間で揺れる王国騎士たちが、剣を握る手を震わせて立ち尽くしていた。


「我らは、誰を斬ればいいんだ……?」

「アルテア団長は、本当に裏切り者なのか……?」


 戸惑いと動揺で、動けない騎士たちの中心へ、一人の男が踏み出した。

 

 王国騎士団、副団長ゼノス。

 彼は自らの盾を力強く叩き、雷鳴のごとき声を轟かせた。


「貴公ら、それでも王国騎士か!!」


 その一喝に、騎士たちの肩が跳ねる。

 ゼノスは側にいたルーバスの私兵を、力任せに突き飛ばし、かつての主であるアルテアを仰ぎ見た。


「剣を見ろ! その紋章は何のためにある! 公爵の私欲を肥やすためか? 否! 我らが命を賭すべきは、王国の為! そしてその血を継ぐエリオス王子殿下のはずだ!」


 ゼノスは剣を高く掲げ、全騎士に突きつけた。


「アルテア団長を信じろ! エリオス王子殿下を救い、この腐った茶番を終わらせるのだ! 今こそ王国騎士団の真の忠誠を示せ!!」


 

 一瞬の静寂。

 そして、動けなかった騎士たちの瞳に、かつての誇りが灯った。

 

「おおおおおっ!!」

 

 地を揺らすほどの喊声。

 ゼノスに続くように、王国騎士たちが一斉に反旗を翻した。

 彼らは私兵団の包囲を食い止め、荒れ狂う魔装鎧の前へ果敢に突っ込んでいく。




「アルテア! 今よ! 風の道を!」


 ミーナが両手を広げ、アルテアの周囲に凄まじい上昇気流を発生させる。

 時計塔から翼を広げたように飛び降りたアルテアは、混乱の渦中へと着地した。


「よし! 行くぞ!」

「応っ!」

「了解……」


 アルテアの呼び掛けに、バルトとサギリが応える。二人は紛れていた群衆の中からアルテアと合流すると、アルテアの後を追う。


 向かう先は旧王宮。

 その行く手を公爵私兵団が立ちはだかるが、バルトが大剣を振るい、サギリが流麗な剣技で並みいる私兵団を蹴散らし、道を切り拓く。

 

 背後の中央広場では、ゼノス率いる騎士団とザックスたちが、魔装鎧と私兵団の猛攻を必死に繋ぎ止めていた。


「必ず、殿下を……!」


 アルテアは一度も振り返ることなく、ミーナの手を引いて駆けていく。


 やがて走る四人の目の前に、エリオス王子が幽閉されている旧王宮が見えて来た。

 四人は追手を引き連れて旧王宮の中へと滑り込んで行った。



 ルーバス公爵は、アルテアたちが旧王宮の方へ駆けて行くのを見送った後、バルコニーから振り返り、王宮の部屋へと戻った。

 その部屋には恐怖で顔を引きつらせた王妃と、エリオス王子の妹君である王女がいたが、ルーバス公爵は二人を冷ややかに一瞥すると、部屋の入口で控えていたベルガに声をかける。


「ベルガ。イゾルデとヴェールは向こうか?」

「はい。ラボにて強化型の最終試験を行っています」

「うむ」


 ルーバス公爵は少し思案した後、ベルガに告げる。


「ベルガ。ここは良い。お前はアルテアを討つのだ」

「……よろしいのですか?」

「構わん。確実にアルテアを仕留めてくるのだ」

「はっ」


 ベルガはそう答えると、踵を返し、部屋を後にした。

 そしてルーバスは忌々しそうにバルコニーを一瞥すると、自身もその部屋を後にするのだった。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 凄く励みになりますので、面白いとか、続きが気になるとか思った方はぜひブックマーク、★評価をお願いします。

 

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