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断罪された最強の女騎士、傭兵少女と地の底から逆襲を開始する 〜冤罪で国を追われた騎士団長は、王国を守るために牙を剥く〜  作者: 十目 イチ


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第17話 包囲網への突破口

 廃墟の二階、朝の柔らかな光が埃の舞う室内を照らしていた。

 寝台の上で、ミーナがゆっくりと瞼を持ち上げる。

 視界に映るのは、見慣れぬ剥落した天井と、心配そうに自分を覗き込むアルテアとサギリの顔だった。


「……アルテア、サギリ姉ちゃん……。私、生きてるんだ」

「ミーナ! よかった……本当によかった」

 

 アルテアがミーナの小さな手を握りしめる。

 サギリも無言で安堵の溜息をつき、愛刀の柄からようやく手を離した。

 ミーナが周りを見回しながら、口を開く。


「ここは……?」

「下層街の空家だよ。あまり無理をしないで。傷はほとんど癒えているけど、まだ体力は戻っていないからね」

 

 階下から階段を上がってきた、聞き慣れぬ男の声がミーナのその問いに答える。

 湯気の立つ鍋とパンを抱えたテオだった。

 彼はミーナと目が合うと、途端に耳まで真っ赤にして視線を泳がせた。


「あ……ええと、お粥を作ってきたんだ。買い出しのついでに、滋養のつく薬草も手に入ったから……。その、……気分はどうかな?」


 昨夜は泥だらけで死に体だったミーナが、顔を洗い、朝日の中で少しだけ微笑む姿を見て、テオは彼女が「同年代の、驚くほど整った容姿の少女」であることを強烈に意識してしまったのだ。


「ありがとう……君が助けてくれたんだね」

「い、いや! 僕は、当然のことをしたまでで……。はい、これ、ゆっくり食べて」

 

 差し出された粥を受け取る際、指先が触れ合うだけでテオは跳ね上がるように動揺し、アルテアとサギリは顔を見合わせて苦笑を浮かべた。


 ◇◇


 全員が簡単な食事を終え、食後の穏やかな時間、テオはアルテアに改めて尋ねた。

 

「あの、アルテア団長、ちょっと気になっていたのですが……サギリさんとミーナさんとは、一体どのような関係なのですか? その、アルテア団長の……侍女、とか?」

「いや。彼女たちは私の命の恩人であり、頼もしい戦友だ。二人とも一流の傭兵だ」

「えっ……よ、傭兵!? サギリさんとミーナさんが!?」

 

 テオは素っ頓狂な声を上げた。

 王都育ちの魔術師である彼にとって、傭兵とは筋骨隆々の荒くれ者のイメージだったのだ。

 目の前の小柄で可憐な少女と、無口で細身の女性剣士が「戦いのプロ」だという事実は、彼の常識を根底から覆した。


「なんだ、不服か? 」

 

 サギリが冷たく視線を飛ばすと、テオは「いえ、滅相もありません!」と首を激しく横に振った。


 

 談笑も束の間、話題は今後の行動についてに移される。

 アルテアの表情が、騎士団長のそれへ変わり、ぐっと引き締まる。


「昨夜の潜入失敗で、ベルガは確実に旧王宮の警備を強化してくるだろう。……だが、テオの話では殿下の状態は未だ極めて不安定らしい。あの巨大な装置を動かすリスクを考えれば、殿下を別の場所へ移す可能性は低い」


 テオは王宮から出る前にエリオス王子に関する情報を密かに、独自に集めていた。

 その情報の中で彼は、王子が旧王宮の地下に幽閉されていると予測しており、更に高度な魔力探知を行い、王子の生死を確認していたと言う。

 

「だとしても、今の三人……いえ、テオ君を合わせて四人では、騎士団と公爵私兵団の旧王宮の警備を突破するのはかなり困難だわ」

 

 冷静に分析するミーナが更に続ける。

 

「態勢を立て直す必要があるよ。……一度、王都を出て、ザックスさんたちと合流しよう。もし彼らがバルト兄ちゃんを見つけてくれていれば、最高の戦力になる」

「確かにそうだな……」

 

 アルテアが頷くが、その表情は冴えない。そして問題はそこからだった。

 テオが重苦しい表情で王都の地図を広げた。


「ですが、今、王都を脱出するのは容易ではありません。今、街中には『逆賊アルテア』の人相書きが出回っています。そしてすべての門には騎士団と公爵私兵団が配置され、蟻の這い出る隙もありません。特に騎士団は、血眼になって街中を探し回っています」


 沈黙が流れる。

 今や、『王子暗殺の逆賊アルテア』に対する包囲網が王都中に敷かれている状態だ。

 全員が口を閉ざす中、テオがもう一度口を開いた。


「……ですが、王都を出る伝手なら、一つだけ……確実ではないですが、心当たりがあります」

 

 テオが意を決したように顔を上げた。


「伝手? 王宮の人間であるお前に、そんな裏の道があるのか?」

 

 サギリが疑り深く尋ねると、テオは少し気恥ずかしそうに頷いた。


「王宮へ薬草を納めている卸商のギルドです。彼らの中には、検問を避けたい『訳ありの品』を運ぶための、古い地下運河のルートを知っている者がいるそうです。以前、卸商の一人から聞いた事があるんです。そのルートならば包囲網を抜けて王都の外に出られるはずです」

「地下運河か……。よし、一度その男に会ってみよう」

「その人とは僕が交渉します。皆さんはここで身を隠していてください。ここなら簡単には見つからないはずですから」

「だがテオ、それでは君が危険ではないか?」


 アルテアの心配の声に、テオは笑顔で応える。


「僕が一番安全ですよ。騎士団に顔を割れてない、どころかアルテア団長とこうやって一緒に行動している事も彼らは知らないですから。逆に堂々と王都を歩き回れます」

「確かにそうだな」

「ええ。なので皆さんはしっかり体を休めておいてください」


 テオのその言葉に、ミーナが応える。


「ありがと。テオ君。でもくれぐれも気を付けてね」

「う、うん。き、気を付けるよ」


 向けられた笑顔に、テオは顔を赤くしながら応えた。

 アルテアがテオに向かって右手を差し出す。


「テオ。すまないが、よろしく頼む」

「ええ。任せてください」


 テオは力強く、アルテアの右手を握り返した。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 凄く励みになりますので、面白いとか、続きが気になるとか思った方はぜひブックマーク、★評価をお願いします。

 

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